はたらくFUND 2021 Impact Report (4)

7.本ファンドにおけるインパクト測定・マネジメント(IMM)の実践

(1)本ファンドのToCの実現に向けた進捗
本年度は、本ファンドのToC実現に向け、新たに3社への投資を実行した。また投資後においては、既存投資先を含む6社に対して各社のIMMをサポートする非財務的な支援を行った。
新規投資先となったCureapp社、Linc社、Compass社を含む、本ファンドの投資先の、本ファンドのToCにおける位置付けは、下図の通りである。
このうちCureapp社は、スマートフォンによる生活習慣病の治療アプリの開発を通じ、働く世代の心身の健康の保持増進および生活習慣改善に取り組んでいる。この活動は、医療の領域から本ファンドが目指す「多様な働き方・生き方の創造」の実現に貢献することが期待される。
続いて投資を行ったLinc社は、高度外国人材に対する支援を行うインフラ構築により、国籍問わず多様な個人が主役になる多文化共生社会の実現を目指している。 こうした当社の活動は、同じく「多様な働き方・生き方の創造」に資する可能性が高いと判断した。
最後に、3社目となったCompass社は、日本国内において拡大する所得格差の解決を目指して、自治体と連携したオンラインサービスを開発し、低所得状態にある層に適職への就業機会を提供している。この事業は行政によるセーフティネットのデジタル化とともに、「個人の自分らしい働き方」と「多様な働き方を醸成する文化や仕組み」の実現に繋がると想定し、投資を実行した。

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(2)各投資先のIMM進捗報告のフレームワーク
当ファンドでは、以下の様式を用いて、各投資先分ごとに、IMPの「インパクト5ディメンション」フレームワークを活用し整理した内容をLP投資家向けレポートに掲載している。本一般公開版レポートにおいては、各社情報につき公開可能な範囲にてP.23以降の「(3)各投資先のIMMの進捗報告」の章に記載した。
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(3)各投資先のIMM進捗報告

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8.新規投資先からの声

本年度の新規出資先である株式会社Linc、株式会社Compass、株式会社CureAppから、当ファンドからの出資を受けた感想を頂いた。

株式会社Linc 代表取締役仲思遥様 CSO娄飛様

はたらくFUNDの投資検討プロセスにより、いつかやりたいと思いながら進んでいなかった事業の社会性の可視化を、ロジックモデルという形に落とし込むことができました。自分たちで最初からロジックモデルを作るとなると知見もないため負担が大きいと思っていましたが、ドラフトの作成を含めはたらくFUNDのサポートが手厚く、ここまでやってもらえるのかと驚くほどでした。事業ごとにミッションに繋がる短期、中期、長期のアウトカムを整理することで、今まで言語ができていなかったことが言語化できた実感があります。はたらくFUNDとの議論を通じて、経営メンバーでの議論も深まり考えが整理されたのですが、投資検討プロセスでそのような体験をしたのは初めてでした。
また、初期の面談時から、質問の緻密さや対応の速さ、提示した情報をファンドメンバー内できちんと共有された上での多様な意見のフィードバック等、終始敬意をもって対応して頂いていることが伝わりました。検討のスピード感もスタートアップと同様であり、はたらくFUNDは非常にプロフェッショナルなファンドであると感じましたし、これから一緒にやっていきたいと思いました。ファンドがベンチャー企業を選ぶように、ベンチャー企業も株主を選ぶようになっている中、このファンドにはぜひ良い成果を上げてもらいたく、いいベンチャー企業があればこちらからもぜひご紹介したいと考えています。(尚、㈱助太刀を紹介頂き、2022年2月末に投資実行済)
株式会社Compass
代表取締役社長兼CEO大津愛様 COO兼CFO権基哲様 CTO渡辺祥太郎様

はたらくFUNDからの投資検討を通じて、私たちには社会を変える可能性があるという確信が深まりました。ロジックモデル作成は初めての体験でしたが、今後はトレンドになっていく可能性があると感じました。成果指標の策定方法にも気付きがある等、投資検討段階から支援を受けた感触があり、たとえ調達が決まらなくても、はたらくFUNDとの社会性の議論自体にメリットがあると思いました。同時にVCとして、ビジネスの成長ポテンシャルについても検討チームからの期待を感じました。このように投資家から事業性と社会性の両面についてデューデリジェンスを受けるのは初めての経験で、新鮮に感じました。
また、検討プロセスのオペレーションは全体として質が高いと思いました。代表以外の経営メンバーに対しても幅広くヒアリングを受けましたが、質問には重複がなく、無駄なく議論を積み上げることができました。地方のスタートアップとして東京の投資家との対話には課題を感じていましたが、コロナ禍の中、はたらくFUNDとはオンラインでも信頼関係を深めることができました。
私たちはまだアーリーステージにあり現段階のロジックモデルは仮説ですが、はたらくFUNDの支援を受けながら今後の事業拡大に応じて柔軟に改訂していき、Compassだけが持っているものを作っていきたいと思っています。
株式会社CureApp 代表取締役社長佐竹晃太様 取締役CFO久納裕治様

■2021年3月増資後に、IMMとして、何を行いましたか?

はたらくファンド様からのご出資後、様々な形でインパクトについて取組みを推進しています。経営陣で、インパクト創出に関するディスカッションを行い、IMM・サステナビリティに関する会社としての理解度を高める取組みを行いました。 具体的には、インパクト・ロジックの策定(取組む社会課題、提供価値、その発現経路、SDGsとの関係整理)、またESG観点からのマテリアリティ初期評価等を行いました。これらの検討を踏まえて2021年8月にはHP上で、サステナビリティに関する取組みの発信を始めました。またIR等での開示資料において、インパクトに関する記載を行うように変更をしております。
現在、更なる取組みの強化として、サステナビリティ&IMMプロジェクトを新設し、予算に代表される財務KPIと同様に経営上の管理指標とすることを念頭に、事業ステージに応じたインパクトKPI、サステナブルKPIの定義、活用の更なる具体化に向けて議論を行っております。

■IMMを具体的に実施してみて、どのような感想をもちましたか?

当社はインパクトと事業の内容についての親和性の高い事業だと認識しており、出来る限り、ビジネス上の指標と共通化することが事業管理との関係で有用と理解して検討を進めております。それでもインパクト関連の指標をKPIとして設定し、事業において具体的に管理していくには前提やインパクト測定のロジックの詰め等で、相応の検討事項が発生することが分かり、しっかりと進めていくためには一定の体制が求められることを理解し、取組みの姿勢を強化する判断をすることが出来ました。
他方で、関与する従業員には導入の意義や工数負担に対する目には見えづらいリターンの説明に時間を割く必要があるだろうと想定していたものの、意義や取組みへの賛同は想定よりも相当程度早く得られたと感じています。当社の従業員も、インパクトに関する取組みをより明示的に進めることを求めていたというようにも感じられ、勇気づけられました。

■インパクトの可視化や計測、開示、IMMの実践を通じて、よかったと思うこと(メリット)はどのようなことでしょうか?

当社は設立当初より社会的インパクト志向の企業・事業であったと自負をしております。ただしその具体的な成果の計測、経営指標としての活用といった意識は長期のビジネスサイクルもあり必ずしも実施できてはおりませんでした。はたらくファンド様に出資いただく過程でIMM、インパクトという概念を理解することができ、 その過程で自らの目指す社会的インパクトに関する解像度を高めていくことが出来たことは大きなメリットです。
パーパスやミッション、ESGは抽象的な概念であるため、ロジックモデルやマテリアリティの検討を通じて自社の考えを明確にすることで経営判断における土台、従業員との共通認識、投資家等との共通言語として今後活用していく素地が出来たと認識をしています。

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