はたらくFUND 2022 Impact Report (2)

第二部 本ファンドにおけるIMMの実践

4.ファンドの概要

(1)設立経緯
2017年1月、SBI新生銀行グループ単独にて、邦銀系初のインパクト投資ファンドとなる「日本インパクト投資1号投資事業有限責任組合」を設立した。2019年6月、SBI新生銀行の100%子会社の新生企業投資の連結子会社である新生インパクト投資及びSIIFを共同運営者とし、みずほ銀行を運営者のアドバイザーに迎え、更に外部LP投資家を招聘する形で、「日本インパクト投資2号投資事業有限責任組合(本ファンド)」の運営を開始した。

(2)目的
社会課題の解決:本ファンドは、少子高齢化、労働人口不足といった喫緊の社会課題に着目し、「働く人」を中心に据え、子育てや介護等の様々なライフイベントを経ながらも「働き続けられる」環境作りと人材創出につき、投資の面からサポートしていく。
日本におけるインパクト投資のエコシステム構築への貢献:同時に本ファンドは、日本ではまだ事例の少ない多様な外部投資家が参加する本格的なインパクト投資ファンドとして、インパクト戦略および目標の設定、評価・モニタリング及びエンゲージメントの実施、レポーティング、エグジットを含む一連のインパクト・メジャメント&マネジメントの実践を通じ、インパクト投資の先行事例となることを目指す。

(3)ファンドのプリンシプル
・LP投資家の選定基準:本ファンドのLP投資家は、以下基準に合致する投資家を招聘した。

  • ポジティブ要件の確認:

    • 本ファンドが目指すインパクトの創出及びインパクト投資エコシステム構築への貢献に賛同すること

    • 日本におけるインパクト投資の将来の牽引者となり得ること

    • 投資先事業の成長支援に資すること

  • ネガティブチェック:

    • 重大なESGリスクが顕在化していないこと

    • 反社会的勢力でないこと

 ・投資先の選定基準:本ファンドの投資先は、以下基準に合致する先を検討する。

  • 投資による経済性に関するリスク・リターンのバランスがとれること(個別投資先の目標をIRR15~25%とする)

  • 投資による社会性に関するリスク・リターンが、後述の本ファンドの「インパクト面の投資方針」に合致していること

  • 投資先事業の経済性と社会性がトレードオフでなく、正の相関関係が見込めること

(4)ファンド概要

(5)スキーム

5.本ファンドが目指すインパクト(社会課題・ToC)

(1)本ファンドが取組む社会課題
日本では、人口減少及び少子高齢化が今後更に進むことにより、特に20代~60代の働く世代が大幅に減少する局面にあり、労働人口減少の深刻化が避けられない状況下、働く世代において多くの課題がある。
具体的には、働く世代が働き続ける意志があるにもかかわらず、出産・子育てや介護等により仕事との両立が難しくなる状況が挙げられる。働く当人が、疾病や障害により働けない環境も多く存在する。また、年功序列・長時間労働といった従来の日本型雇用を構造的に改革する必要がある中で、将来の働く世代が自立し決断・行動できる人材となるよう次世代人材教育を行うことも重要である。
このような日本において、働く世代が良質な労働力を提供できるような環境を整えるため、新しいソリューションを提供する必要がある。
以上のように、本ファンドでは、①高齢化/労働人口の減少、②子育てと仕事の両立困難、③介護と仕事の両立困難、④従来の日本型雇用の課題/働き方改革の必要性、⑤次世代型教育の必要性、といった社会課題に対する新しい価値創造に貢献する投資活動を推進する。
 
(2)本ファンドのセオリーオブチェンジ(ToC)
上述のように、世界に先駆けて日本が直面する①高齢化とそれに伴う労働人口の減少問題を受けて、本ファンドが長期的に創出を目指す社会的な変化(インパクト)を「多様な働き方・生き方の創造」と定めた。更に、その実現に向け、投資先を通じ、②③子育てや介護等のケアの領域と④働き方や⑤次世代人材育成等のワークの領域において、個人の負担軽減や多様性促進だけでなく、社会における仕組みの充実化を目指す。右図、本ファンドが社会的変化を起こすための理論を示したものである。

(3)本ファンドによるSDGsへの貢献
本ファンドは、ファンドの活動(インプット)を通じ、直接的な結果(アウトプット)、中期的に受益者や関係者にもたらす効果(アウトカム)、長期的に社会に与える影響(インパクト)を実現することで、主に「SDGs3 健康と福祉」、「SDGs4 教育」、「SDGs5 ジェンダー」、「SDGs8 働きがい」の達成に貢献し得る。 

各投資先についても、各社のロジックモデル作成を通じて、各社が創出を目指すアウトカムやインパクトを設定し、それらが貢献し得るSDGsのターゲットを特定する。本年度の進捗は以下の通り。

【投資先の事業活動が貢献し得るSDGsターゲット】

【各SDGsに貢献し得る投資先の数】

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