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できない自分を直視することを人は本能的に避ける

「深淵をのぞくとき、深淵もまたこちらをのぞいている」
かのニーチェの残したこの言葉
深淵というワードのかっこよさと、リズムの良さと、なんだか頭のよさそうなことを言えている感が相まってよく耳にする
だけど今思うのは、本当に深淵をのぞく人なんてほとんどいないということ

なぜそんなことを思ったのかというと、しらスタさんの次の動画に登場する「聴覚フィードバック」を見たときに、全然違う文脈で近しいことをしていた経験を思い出したことがきっかけ

聴覚フィードバックとは、自分の声を聴いて音程を修正することで、近いなと思ったのは、就活の際にほぼ全ての面接を録音して聞き直していたこと

人の会話を録音して聞いたことあります?自分の会話でも他人の会話でも。いかに人間の会話が断続的で、脈略が無くて、聞き取りづらいのか驚きます。面接という事前準備あり&聞いてもらう意識ありの会話ですら、これほどまでに聞き取りづらいのかと驚く
それに、本当に何を言っているか分からない。面接官もびっくり

これから面接に臨む人はぜひ一度、録音したご自身の声を聞き直してみてもらいたいんですけど、個人的には録音することも聴き直すことも言葉にならないほどに心理的抵抗感が強かった
やった方が良いのは間違いないので、そんな抵抗感を乗り越えて録音しては聞き直してまた録音してを繰り返していたけど、それはそれは精神的な疲労とかストレスとかが尋常じゃない

録音して聞き直さなくても面接の日はやってくるし、いくつも受けていればどこかには引っかかるはず
でも、努力すれば成功率を高められる。しかしそれはできていない自分を認識すること、自分への幻想を取り払うこと、更なる努力の必要性を生じさせることになる。つまり、もっと頑張れと自分を追い込むことに他ならない

気付かないふりをすればやり過ごせる。なにせ気付いていないのだから
けれど、一度自身で確認したが最後、そこには聴くに堪えない音声が録音されており、自分の問題点を浮き彫りにする。そして、今の自分を変えたくないという自己保存の性質がとんでもないストレスを生み出し始める

振り返ってみて思うのは、きっと多くの人はこのストレスを受け入れて向き合うのではなく、回避するのではないかということ
本能的には自分を変えたくないのに、変えなくていい位には自分に問題がないと思いたいのに、向き合えば自分の問題点を突き付けられ、信じられないストレスが降りかかってきてしまう。なら、向き合う必要なんてない

特に最近は直視せずに済むツールが増えてきた。それは加工アプリのように覆い隠すものもあれば、痩せ薬のように特効薬かのように働くものもある
深淵なんてのぞかなくていいよと、あらゆるサービスが耳元で囁く。そしてそれを咎める人もいない。むしろ、深淵をのぞかないことを良しとする同調圧力が働くことさえある

それでも、もし本当に変化を望むなら、まずは自分自身を直視しないと始まらない。想像以上の深さ・暗さに足が竦むかもしれないし、一度は見なかったことにしてしまうかもしれない
でも何度もそれを繰り返して、耐性を付けて、少しずつ向き合っていく
そうすることで、実体の伴わない幻想がいつしか実体となって現れるし、今まで持ち合わせていなかった自信まで湧いてくる

急がば回れじゃないけど、コツコツ積み重ねた人間はマジで強い
要は、甘えんな、ということです

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