今だからこそ改めて「ワークフローはハンコシステムじゃない」と言わせてもらう
大学を卒業してまもなくの頃、僕はとあるグループウェアベンダーでセールスを担当していました。(※サイボウズさんではありません。)
その頃はちょうど「ワークフローをうちでも作ろう!」と開発プロジェクトが始まった時期で、しばらくして完成したピカピカの製品を触らせてもらった最初の印象は、正直なところ「へえーこんな感じなんだ」くらいのものだったと思います。
僕がワークフローを強く意識するようになるのは、それをお客さんに提案し、現場課題に触れるようになってからです。
ワークフローはノーコード開発の走り
「ワークフローシステム」と呼ばれるソフトウェアのほとんどは、プログラムを書かずに画面操作だけでフォームを生成し、「経路」を設計する事で申請書が誰の手を渡って決裁されるかまでを制御できるようになっています。
そしてWebグループウェアが広まった2000年以降は、Webブラウザーだけで動作が完結するものもたくさん出てきていました。
つまりワークフロー界隈では、今で言う「ノーコード開発ツール」に非常に似た概念が、15年以上前に存在していた訳です。
なのでワークフローのデモをすると、勘の良いユーザーはノーコード開発の可能性に目覚めた時のように目を輝かせ「これなら自分達でも作れそう!」「こうすればこの業務にも使えるよね?」と夢を語ってくれるようになります。
そんなこんなで次第にワークフロー販売は楽しいものとなり、ユーザーの現場フィットを支援したり製品提携の話に関わったりする中で、僕はワークフローに大きな可能性を感じるようになりました。
理想のワークフローとは?
ただ、その時の製品は良いものではあったものの、ユーザーが求める業務課題をカスタマイズ無しで実現するのは困難でした。
例えば購入業務であれば、ハンコを押す(購入の正当性をチェックする)仕事の他に、購入手配、納品チェック、他システムへのデータ入力といったたくさんの「仕事」が発生しますが、その製品でできる事は、どうしてもハンコ周りの仕事だけになってしまう。
応えることのできない業務要求を何度もヒアリングしながら、僕の中には「自分の理想のワークフロー像」が広がっていきました。
それは、現場業務をよく知るユーザーが自分自身で理想の業務を作ることができるツール。ハンコの代わりになるだけでなく他のシステムとも連携しながら、社内や社外の仕事と仕事をつないでいくツール。
その時はまだ、こんなちゃんとした言葉になってはいませんでしたが、漠然とした想いに突き動かされた僕は、セールスから開発にジョブチェンジし、自分の理想のワークフローを創る事に邁進する事になります。
何年も前から、セミナーなどで人前に立つ度に繰り返してきた「ワークフローは仕事と仕事をつなぐもの」という言葉は、その頃から今まで変わらない、僕がずっと理想としているワークフローの姿なのです。
ワークフローはハンコシステムじゃない!
コロナ禍によって、ワークフローは「脱ハンコ」の文脈で語られる事が多くなりました。
もちろん、ワークフローシステムの導入はハンコ出社を無くすためのとても良い選択肢であり、ワークフローシステムを提供する私たちにとって、脱ハンコに必要なノウハウや情報の提供は、社会的な使命であるとすら思っています。
ただ、ワークフローが脱ハンコの文脈でどれだけ語られたとしても、その本質は単なるハンコの代わりではありません。ハンコの代わりとなる業務を卒なくこなしながらも、ハンコ業務を超えて仕事と仕事をつないでいくツール。ハンコ業務を入り口として、みんなの仕事をもっと気持ちよくするツール。私たちにとっては、これこそがワークフローです。
コラボフローも、我々が理想とするワークフローにはまだまだ遠いというのが実情ですが、日々の地道な改善で一歩づつ、着実に理想に近づいて来ています。
世の中が変わり、ワークフローに対するイメージが変わっても、我々が提供すべき根本の価値は見失わないよう、成長を続けていきたいと思っています。