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14歳の栞

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『14歳の栞』という映画の試写会にいってきた。映画の制作会社から招待をされたからだ。映画の内容が良かったら宣伝をお願いします、といったいわゆるインフルエンサーのようなお仕事だ。

ぼくに宣伝効果があるのか疑問だけど、こういう依頼がちょくちょくとくる。映画だけでなく、新商品やキャンペーンについて宣伝してくださいといったものだ。

つまりこれはPR記事だ、もちろんタダではやっていない。とても生々しいことを書いてしまうと、高校生が1ヶ月にアルバイトをしたぐらいのギャラを頂いている。映画をみてスマホのメモ帳にレビューを書いたりするのが趣味だったりもするので、趣味と実益をかねてみたかったのだ。

ぼくは写真家なので撮影を依頼してもらったほうが費用対効果は高いような気もするし、PRは本業ではないので基本的にはこういったPRのお仕事はお断りしている。でも、この映画はそういうことを全部抜きにして、ただ見たかったのだ。

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15年か20年ぐらい前に、あるドキュメンタリー番組にとても感動して、テレビに釘づけになったことをよく覚えてる。番組名もどこの放送局だったかも忘れてしまったけど、北海道の高校生を密着した番組だった。

生徒だけに密着するのではなく、先生が行きつけの美容室の美容師さんと結婚をしたり、東京にいる先生のご両親にまで取材をしていたのが印象的だった。段田安則さんがナレーションを務め、エンディングは北海道の北風ですこし歪に曲がった5月の桜の木で終わる。(これ、誰か知ってる人いないですかね?なんとかしてまた見たいんですよ。)

14歳の栞のコンセプトも北海道の高校生を密着したものに近くて、どうしても見たかったのだ。結論をいえばみて正解だった。じゃなかったらそもそもこれを書いていない。

14歳の栞では中学2年生の35人、クラス全員を密着している。

学校がテロリストに占拠されて中学生が奮闘するわけでも、世界の中心で愛を叫ぶような大恋愛がはじまるわけでも、他校の不良と大乱闘になるわけでも、残り時間1秒でスリーポイントシュートが決まるような映画でもない。

中学2年生がするような妄想を大人が映像化したものでなく、普通の中学生が一人一人短い時間で淡々と自分の将来や今のことについて語っている映画だ。ひとことで感想をいうなら、自分の中学生の頃を鮮明に思い出す映画だ。

クラスのみんなが仲良しで、絆に結ばれているというわけでもない。クラスがたのしいという生徒もいれば、集合写真に一緒にうつれないような子もいる。ズッ友やBFF的なBEST FRIEND FOREVERというわけでもなく、いましかない刹那的な関係性が描かれている。

部活で県の選抜に選ばれるような生徒もいれば、帰宅部でお菓子を作るのが好きな生徒もいる。スクールカーストの上下もあり、体育の授業ではモロに反映される。バカにされる生徒や“イジリ”もあって、普通なら不都合な真実として隠しそうだけど、とてもリアルに描かれている。(ちなみにこのバカにされる生徒は、大人の視点なら間違いなく一目置かれる秀才だ)

いろんな生徒がいて多様性があるけど、誰もがその場にいることを否定されておらず肯定されている感があって、誰かが排除されてるという印象はない。多様性があるが故に、いい意味で不干渉という印象がある。バカにされる生徒すら自分をバカにする生徒を、バカはほっときゃいいんですよと言い切る。

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14歳っていちばん勘違いをしてしまう年齢なのかもしれない、スマホのおかげで大人の社会を知ることができる。でも社会経験はない。大人に憧れもするけど、幻滅もする。

「チャラくてダサい大人になりたくない」「社畜にはなりたくない」「大人になって遠くに行きたい」「公務員になって、結婚して子どもは二人、休日は友達とサッカーしたい」

どんな大人になりたいか?そう質問されて、14歳の彼らはこう答えていた。

社会にはチャラくてダサい大人はいるし、社畜もいる。自由に遠くに行けない大人もいれば、就職や結婚をしたくてもできない人もいる。そして大人は休日にサッカーしたら翌日に死ぬ。

14歳から見たらかっこよくない大人でも、生きていけるぐらい社会は寛容だ。14歳の勘違いを大人なら笑ってしまったり、現実はそんなに甘くないよと小言をいったりと反応はまちまちだろう。

映画を見ていると、いつの間にか隣にいる14歳の自分が、大人になった自分をみてどう感じるだろうか。映画の中学2年生を通じて、中学2年生だった自分と向き合うことになる。卒業アルバムの集合写真とおなじで、おもわず自分から目をそらしてしまいそうにもなる。

14歳の彼らにしたまちまちの反応は、きっと14歳の自分にする反応とおなじだ。

冒頭に“高校生が1ヶ月にアルバイトをしたぐらいのギャラ”と生々しく書いたのは、そういう世界があるということを彼らに教えたくて書いたことだ。

14歳の栞のなかの中学生たちは今年の春で高校生になるか、もしくはすでに高校生になっているはずだ。もしかしたらこのnoteを読むかもしれない。

バラさなくていい大人の事情を、ぼくはついつい彼らに教えたくなってしまったのだ。きっと14歳の自分へもおなじことをするのだろう。14歳の栞は自分がどんな大人になったのか、それを教えてくれる映画でもある。

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この note は映画『14 歳の栞』の公開を記念してご依頼いただき、執筆したものです。#私が14歳だった頃 で、エピソードを募集しております。ぜひご参加ください。


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