『金浦空港』が『銀浦空港』に!?
韓国・ソウルのの金浦空港をご存じでしょうか。
日本では「キンポ空港」と呼んでます。
首都ソウルにある空港で、かつては韓国の空の玄関でした。
仁川(インチョン)空港ができてからは国内線が中心の運用となりましたが、現在も東京・羽田空港などと結ぶ近距離国際線が発着しています。
「金」は韓国・北朝鮮の人の姓としてもよく使われる文字で、その場合は「キム」(김)、姓以外だとだいたい「クム」(금)と読まれます。
「キム」は金大中(キム・デジュン)、金日成(キム・イルソン)など政治家にも多いですよね。
でも、現在、金浦空港はアルファベットで表記するときは"Gimpo Airport"となっています。
これだと「キンポ空港」ではなく「ギンポ空港」ですね。
日本人にとっては「金浦空港」ならぬ「銀浦空港」みたいです。
下記の画像は、金浦空港のオフィシャルサイトのトップページです。
3レターコードは「GMP」。
「3レターコード」とは世界の空港に付けられたアルファベット3文字の「略称」で、羽田空港=「HND」、成田空港=「NRT」、関西空港=「KIX」といった具合です。
金浦空港の3レターコードは、ソウル(Seoul)から取った"SEL"が使われていましたが、軍用空港などと区別する必要があるときは"KMP"も使われていました。
余談ですが、この"KMP"は現在、アフリカ南西部の国、ナミビアにある "Keetmanshoop" (キートマンスホープ)という空港に使われているようです。
では、なぜ「キンポ空港」が「ギンポ空港」になったのか?
その説明はなかなか難しいんですが、韓国語には「語頭」(単語の最初)と「語中」で発音が変わる(変わっているように聞こえる)文字があります。
日本で大人気を博した「宮廷女官チャングムの誓い」という韓国の時代劇ドラマ(韓国では2003〜2004年放送)があります。
イ・ヨンエ演じる主人公は「チャングム」という名前で、漢字で書くと「長今」です。
フルネームは「徐長今」ですが、読みは「ソ・ジャングム」。
つまり「長」という文字が、語頭だと「チャン」、語中だと「ジャン」と読まれるわけです。
実は、韓国語には日本語で言う「清音と濁音」つまり「濁点の付かない文字(で表される発音)」と「濁点の付いた文字(で表される発音)」の区別はありません。
その代わりでもないのでしょうが、「平音」「濃音」「激音」という区別があります。
そして、「平音」の多くは、(日本人の耳には)「語頭では濁らない音=清音」「語中では濁った音=濁音」のように聞こえます。
実は日本語にもよく似た現象があります。
それは「連濁」のこと。
連濁も「語頭では清音」「語中では濁音」になる現象ですね。
例えば「傘」という言葉は、日本人は「かさ」だと覚えていますが、「がさ」になります。
「雨傘」「日傘」「相合傘」・・・みんな「〜がさ」ですね。
そして、韓国語では「キム」(김)は語頭だと「キム」、語中だと「ギム」となるわけです。
そして、韓国語では近年、このように「語頭と語中で濁ったり濁らなかったりする」音について、「単語のどの位置にあろうが濁った発音でアルファベット表記する」というルールが主流になっています。
このルールは「文化観光部2000年式」と呼ばれます。
(韓国や中国の「〜部」は日本の「〜省」にあたる政府の中央官庁の名前なので、「文化観光部」は「文化観光省」つまり日本の文部科学省と観光庁を合わせたような役所です。)
日本語で言えば、「『かさ』の場合も『〜がさ』の場合も、『がさ』で統一しましょう」となっているわけです。
日本のローマ字に「ヘボン式」や「訓令式」などがあるように、韓国語のアルファベット表記にもいくつかの方式があって、現在この「文化観光部2000年式」を使う場合も多い、ということになります。
でも、苗字の「金」(キム)さんは、"Gim"ではなく"Kim"が多いようですが…。
(説明すればするほど分かりにくくなったように気がするので、今回はこの辺で終わりにします。)