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大勝軒修行物語 先輩

コレ!着て下さい!と、紺色のTシャツを渡してくれた先輩の名前は、栗原さんという人だった。若いのにしっかりした人で、まだ20代半ばだが、大勝軒の期待のエースという感じだ。山岸マスターも一目置く感じに見えた。
大勝軒に、4〜5年いるらしく、近所の安いアパートに暮らしている。無給といっても、マスターは、交通費と称して給料日には、3万円を茶封筒にいれて、渡してくれた。なんともありがたかった!3カ月過ぎると5千円多く入るようになった。
栗原さんは、大勝軒お墨付きの俗に甲子園と呼ばれているアパートに住み、通っていた。
建物がツタに覆われていたから、そう呼ばれていた。
地方から出てきて大勝軒で修行する者は、だいたいそこへ入る。家賃1万くらいの古い木造の会社の寮のような造りだ。
便所も夜は暗く、小便するのも怖いくらいだった。風呂はないから甲子園に住み、会費1万のスポーツジムに入会して、シャワーを浴びて毎日過ごす。
賄いがあるから、食べるのには、苦労はしない。近所の西友で、布団一式買って修行が始まる。3万円でも、何とかやっていける計算だ。

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