記者会見に「どこまで記者を入れるか」問題

鹿児島県知事記者会見では、現在も「フリーランス記者」が差別されている。フリーランス記者の有村眞由美さんの奮闘により、数年前からようやく「出席」は認められるようになった。しかし、「挙手」「質問」ができないという異常事態は今もなお続いている。

考えてみてほしい。記者にとって「挙手」「質問」ができないことがどれほど辛いことなのかを。

私がこの問題についてFacebookで書いたところ、「それでは、あなたは参加する記者の線引きをどうすればいいと考えているのか」「どこまで記者を入れるべきなのか」という質問が寄せられた。

そこで2009年から「記者会見のオープン化」を求め、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)という書籍も書いた私の考えを述べたいと思う。

私の答えは極めてシンプルだ。

「報道を目的とする者であれば誰でも入っていい」

「誰が記者会見に入っても大丈夫」

私がそう考えるのは前例があるからだ。

金融庁では2009年の亀井静香大臣時代、記者クラブ主催の記者会見と大臣主催の「オープン会見」という2つの大臣記者会見が行われていた。

なぜ同じ日に2つの大臣会見が毎週開かれていたかといえば、記者クラブ主催の大臣会見にフリーランス記者が参加することをクラブ側が頑なに拒んだからだ。

フリーランス記者たちが「これはおかしい」と声をあげたことで、大臣主催の「第二会見」が大臣室で開かれるようになった。

亀井大臣は「この場には誰でも来ていい。渋谷でシンナー吸ってウロウロしているような若者でも構わない」と言っていた。

第二会見に資格審査はなかった。事前に参加を申し込むだけで誰でも自由に参加できた。ブロガーや生配信をする人も参加した。それでも記者会見が混乱するようなことはなかった。

他にも取材する記者がいる中で、無駄な時間を費やすことに耐えられる人はめったにいない。仮にいたとしても「ここは取材の場」という共通認識があるため、他の記者が「早く質問を」と促す。

そこでなされる質問の質がよいかわるいかは他人がとやかく言う問題ではない。もちろんウケ狙いの言動は通用しない。読者もついてこない。一度や二度はまぐれ当たりがあるかも知れないが、そういう人は長続きしない。自然淘汰されていく。

また、政治家は誰のどのような質問にも答えなければならない立場にある。事前に「この質問はしてもいい」「この質問はだめ」と規制することも望ましくない。

くだらない質問をした記者の上司であれば、「そんな質問をしていてはダメだ」と言えるかも知れないが、それぞれの記者は独立した存在である。おかしな質問をした記者は、当然、その責任を負い続けることになる。

私は万に一つあるかないかの可能性のために、新興メディアや新規参入する記者の可能性を潰してはいけないと考えている。自分だけが入れればいいのか、という思いもある。だから「報道を目的とする」という一点をクリアできれば、すべての記者を入れるべきだと考える。

亀井大臣時代には、私を含むフリーランスの記者が中心になって、「誰でも入れる亀井大臣の会見」を主催したこともあった。自分たちでカンパを出し合って会場を借り、記者ではない人たちも広く募って開催した。もちろん、混乱なく無事に開催できた。

そもそも、組織に所属する記者かフリーランス記者かという「属性」によって質問を受け付けないとする政治家は「公職に就くもの」としてふさわしくない。

また、公的な施設の中に家賃無料で記者室を独占的に提供されている記者クラブのメンバーは「公益性を担保する」義務を持つ。だから取材を希望する「記者」がいれば、当然参加を認めるべきだ。実際に東京都庁記者クラブの運用はそのようになっている。

記者クラブが特権的に記者室を無料で使用していいという法的根拠はどこにもない。「記者が庁舎内に常駐することが世のため人のためになる」から、納税者が「記者は無料でそこにいてもいいよ」と認めていると考えるべきだ。記者クラブが記者室を独占的に使うのは当然と考えるのは傲慢だ。

記者室を使っていいのは「新聞社、テレビ局の記者に限る」とはどこにも書かれていない。新聞、テレビの記者が勝手に居座り、ネットメディアやフリーランスを排除している。

家賃を払っている私有地であれば制限を加えるのもまだ理解できる。しかし、公的な空間で開かれる公人の記者会見に、記者クラブ以外の記者が参加することを邪魔してはいけない。会見を主催するのは記者クラブかもしれないが、参加する記者を限定するのであれば、記者クラブが独自に家賃を払っているスペースで行うべきである。

また、政治家は特別職の公務員=全体の奉仕者だ。相手の属性によって態度を変えることは許されない。誰からの質問にも答えなければならない。政治家の安全を確保するためのSPが税金で雇われているのはそのためだ。

鹿児島県政記者クラブ(青潮会)は、すぐにでも庁舎内で行われる知事会見をすべての記者にオープン化すべきだろう。

次の取材につなげたいと思います。よろしくお願いいたします。