東京レインボープライドの前に知っておいて欲しいLGBTの事
今年はStonewallの蜂起から50周年の年で、東京レインボープライドでもそれを掲げ、また、6月のNYCプライドにもツアーを組んで、TRPのフロートを出してAnniversaryを祝うそうです。
Anniversaryを祝うことは良いことだと思うのですが、何を祝うのか判っているのか不安になることがあります。近年吹き荒れているアンチトランスの風に加えて、TRP界隈からまで『「T」は別だよね。』『何でTが一緒に一緒に居るの?』『ドラァグクイーンの女装とかヤメテ欲しい』こんな声まで聞こえてきます。
また逆に偉そうなアンチLGBTの人が「Tは性同一性障害という疾患だが、LGBは単なる性嗜好である」なんて比べて方をして…どちらにしても「Tは違うだろう」を強調する。こんな状況でStonewallのAnniversaryを祝おうなんて…いったいどこに「プライド」があるのだか?
・ゲイプライドのゲイはどこから来たの?
流石にゲイを使っている人でも知っているとは思いますが、元々「ゲイ」は同性愛者の意味ではありません。
元々の意味は辞書などでも説明されていますが、陽気な,快活な,楽しそうなとか、〈色彩・服装など〉派手な,華やかな,きらびやかなと言った意味合いを持っている言葉です。
これが現在の様に、主に男性同性愛者を指す(現在でもGAYはきほん、同性愛者という意味で、 GAY WOMANと表記すればレズビアンを指したりするわけです)ようになったのは1970年代以後の話、ではそれ以前はどうなっていたのか?1970年代に何があったのか?という部分が重要なポイントとなります。
一般的に当時の同性愛者は19世紀末に作られたホモセクシャルを使っていました。ちなみに、ホモセクシャルという言葉が作られる以前は、LGBTQすべてがQueer(性的に常軌を逸脱する)な存在であり、ソドミーと言う枠で語られることが多かったのです。
ゲイは前述したとおり元の意味は「陽気な」とか服装に関して「派手な」とかそういった意味合いの言葉で、この言葉は時代によって変遷してきました。18世紀の文献などではGAY MENと言うと「スケベな人」と言った意味合いをもち、それに対応して、GAY WOMANは「娼婦」という意味合いを持っていました。
この動画は1941年の「Gay Parisian」という映画です。見て判るようにちょっとチャライ感じの男性が中心にいますがこの人を「GAY」と称しているわけで…。
また、そのちょっと前1938年のこの作品では、ネグリジェを着た主人公が「何故そんな恰好をしているの?」と尋ねられた時の返答が「私は今ゲイになったから!」と答えていてこの辺りに日本のオカマ的な使われ方をしています。
そして、50年代からゲイという言葉がアメリカなどを中心に使われていくことになるのですが、最もこの言葉を使っていたのは「ドラァグクイーン」「トランスジェンダー」「ハスラー」といった人達で、あとはゲイバーの中の当事者コミュニケーションに於いて「ゲイ」という言葉が使われていくわけです。
・社会と対峙したグループが今に繋がる
早くにはドイツで戦前にLGBTQ+の人権活動がありましたが、ナチの登場によりこの流れは潰えてしまいます。それらの流れを受けて、アメリカの同性愛者人権団体マタシンソサエティが1950年に結成され、白人男性同性愛者などを中心にした人権活動を行っていきます。
アメリカは1948年に発行されたキンゼイレポートの影響でセックス革命が起こり、それまでアンダーグラウンドな場にいた同性愛者達が、隠れることを止める人達が登場、ハッキリと看板を上げるゲイバーなども登場していきます。
LGBTQ+の存在が目に付くようになったことで、アイゼンハワー大統領による「政府機関の同性愛者の雇用禁止(1953)」を始め、全米各州でLGBTQ+に対する法的な締め付けが厳しくなっていくのです。
とくに狙われたのが「ドラァグクイーン」と「トランスジェンダー」です。この時代のドラァグ、トランスなどの言葉の使われ方は病理化される前でもあったので、かなりいい加減で異性装をする人の意味でそれぞれが好き勝手にそれらの言葉を使っていた感じです。
もちろんドラァグクイーンやドラァグキングは19世紀から続く歴史がありますから、それらの意味も含んでいて、さらに1920年代からNYの地下で始まったドラァグボールなどの影響も受けていてそれなりに意味を持ってはいたのですが、それはたとえば、ドラァグの人も、また、そういう自認が無い人も「女装」という言葉を色々な形で使うように、性別を超えた存在の言葉がそれぞれの好みで使われていた時代なのです。
とにかく、全米の殆どので異性装を禁止する法律が作られ、目立つ異性装者が標的にされ、警察から暴力を受け、刑務所でレイプされるという最悪なパターンができあがっていった訳です。
前記したマタシンソサエティはそんな、社会から嫌われる異性装者を切り離そうとして、白人男性がスーツ姿で大人しくデモを行うスタイルを作り上げていき、彼らが「ゲイ」を名乗ることはまったく在りませんでした。
なので、Stonewallの蜂起に至るアメリカで幾度となくあった社会との衝突は、ドラァグ、トランスなどの異性装な者達がいたからであって、マタシンソサエティの活動はそれを「私達は、あのような変態じゃない!」と非難する立場だったわけです。
そして、歴史は皆さんが知っている通り、Stonewallで蜂起した人達が中心に本格的ムーブメントに発展するわけです。
・それから50年色々あったけど…
前述したとおり、現在の世界なムーブメントとなったプライドという活動は、ドラァグやトランスなどの異性装で、さらに路上で客引きをしていたセックスワーカー達が切っ掛けとなって始まったものです。
ゲイという言葉は力を持った白人男性同性愛者が乗っ取ってしまったけど、それでも今年Stonewallの蜂起を世界中で祝うわけです、もちろん東京レインボープライドも例外ではありません。「T」とLGBを分けて考えてしまったら、そもそもゲイプライドの否定となってしまうわけです。
これは昨年のプライド月間にFacebookで賞賛されたメッセージです。私達のプライドがどこから始まっているのか?忘れないで欲しいのです。
・そして今年の東京レインボープライド(告知1)
プライドの切っ掛けはトランスやドラァグのセックスワーカーからです。是非、今年のプライドパレード、セックスワーカーのシンボルである赤い傘をさして私達と一緒にあるいてみませんか?
また、セックスワーカーに関するメッセージを募集しています。メッセージが集まったら、パレード中にメッセージの読み上げを行う予定です。
・そして今年もやっちゃいます(告知2)
えっと、レインボーウィーク5月1日にこの記事で書いたアメリカの歴史をタップリと当時の資料などを見ながら振り返ってみたいと思います。わりと英語の情報としてはStonewallやそれに至るまでのドキュメンタリーとか沢山あるのですが、日本ではあまり語られてないので、なんで暴動がムーブメントに繋がるのか判りにくいと思います。かなり凄いドラマがそこにあるので、是非、現代のゲイリブの切っ掛けとなった話を多くの人に知って欲しいと思い、今年はこのプログラムにしました。興味がある方は是非、高円寺に遊びに来て下さい!! ※ご予約はこちら
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