「分断」された医療をつなぎ直すデザイン
これは何?
2020年4月28日に行われた「ReDesigner Online Meetup 医療に携わるデザイナーができること」での登壇内容の書き起こしです。
はじめに
Ubieのデザイナーのはたけです。
Ubieでは、「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」というミッションのもと、国内外の医療機関向け(toB)・生活者向け(toC)両プロダクトのデザイン全般を担当しています。
医療分野のデザインや、AIを用いたデザインに興味があり、過去Designshipというカンファレンスで過去の活動を話していたりもします。
もしご興味ある方は、こちらもあわせてご覧ください。
Designship 2018 登壇
Designship 2019 登壇
今日お話ししたいこと
過去の登壇と同様に、今日も「医療分野でデザインすることの面白さ」をお話しできればと思います。特に、今日は「分断」された医療をつなぎ直すデザインというタイトルでお話しします。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、業界全体が、また生活者の価値観や行動が、大きく変化しています。現職にジョインしてから2年が経ちましたが、いまが一番の激動期といっても過言ではありません。
その中で医療のデザインに携わる意義や面白みの一端を、お伝えできると嬉しいです。
Chapter 01: Ubieについて
Ubieについて、書き起こしでは割愛します。詳しくは会社紹介スライドをご覧ください。
会社紹介スライド
Chapter 02: コロナ禍と、忍び寄る「分断」
本題のコロナの話をしようと思います。
医療機関が抱える不安
新型コロナウイルスが3月から4月にかけて急速に感染拡大する中、医療機関では院内感染によって外来診療を縮小したり、最悪の場合閉鎖せざるを余儀なくされるケースも出ています。
また、こうした院内感染を不安視しながらも、新型コロナウイルス感染症の感染管理の難しさから、患者受入そのものを拒否する動きも出てきており、報道等で問題視されるようになっています。
患者が抱える戸惑い
患者側はどうでしょうか。他の病気と比べた際、発症から重症化ペースがとにかく早い傾向にあります。一方で無症状・軽症も多いため、受診の判断が難しい、という特徴があります。
不安や戸惑いがもたらす「分断」
こうした不安や戸惑いの中で、特定の患者や、医療従事者、医療機関、行政の行為を責め立てる声もあります。
しかしそのような声・姿勢は社会の分断を引き起こし医療崩壊を助長させかねません。コロナという「見えない敵」だからこそ、問題の構造そのものに目を向ける必要があります。
Chapter 03: 適切な医療へとつなぐ事前問診
現状
そのような課題感を踏まえて、現状の受診行動を医療従事者と患者それぞれの視点からみてみましょう。
院内感染拡大を防止しつつ適切な処置・案内を受けられるようにするため、コロナ疑い症状があった患者には「いきなり受診しない。まずかかりつけ医や公的相談窓口に相談する」ことが推奨されています。
ただ、実際にはそうと知らずに事前相談や予約なしに医療機関を受診してしまったり、過度の受診控えで重症化してしまったりするケースが実際には多く起きてしまっています。
課題
実際に顧客等にお話を伺う中でも、医療機関側には
「本来コロナ疑い患者は受診前に検知し適切に案内したいが、「来ちゃった」という患者が多い」
というペインがあり、また、患者側には
「多くの医療機関や保健所や相談窓口がある中で、まずどこに相談すべきかわからない」
「STAY HOMEと言われる中、いつ受診すべきか判断がつかない」
というペインがあることがあらためて浮き彫りになりました。
これらは医療者・患者が一方的に悪いわけではありません。
お互いの状況が事前にわからない。見えない。そのような「分断(いわゆる情報の非対称性)」の構造自体が問題となっていることがわかります。
理想
そこで必要となるのはゼロ次受けの窓口です。
既存の公的受診相談窓口やかかりつけ医、救急を含む病院へと適切につなぎ、「分断」つまり情報の非対称性を解消する役目がいま必要とされています。
リリース
ちょうど今日の登壇と重なる形でのリリースだったのですが、生活者向け、いわゆるtoCのプロダクト「AI受診相談 ユビー」の公開・無償提供をはじめました。Webアプリなので、特にインストールも不要です
Ubieのミッションは「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」で、今回のプロダクトはそれを体現するものになります。
これまでUbieは医療機関で培ってきた問診AIの技術を、「病院の外でも」「いつでも」「誰でも」使えるようにしたいという想いから生まれました。
新型コロナウイルス感染症を含む内科全般の症状について、カンタンな20問題程度の質問にこたえるだけで、参考となる病気や対処法が調べられ、それを手がかりに地域の適切な窓口へとつながることができます。*
* 一般に、問診だけでは診断は行われません。あくまで適切な受診行動を支援することを目的としています。
提供価値
適切な医療のかかりかたを支援することは患者メリットはもちろん、医療従事者にとってもメリットがあります。
地域医療全体を支えるインフラとして、プロダクトが愛され成長していくことを、つくり手の一人として強く願っています。
Chapter 04: 適切な医療につなぐためのチーム
チームの話をします。
ここまで話してきた取り組みは、後述する通り、これまで経験してきた様々な事業の中でも特に難易度が高く、だからこそチームが大事となります。
「BTCM」「業界のプロ」2つの観点からお話しします。
BTCM
他所でも何度か話していますが、新しいことをやろうとした際にBTCは大事ですが、ドメインエキスパート(専門家)である医師等 Medical のメンバーが必要不可欠で、Ubieの場合はBTCMのチームづくりをしています。
BTCはBTCMよりコミュニケーションパスも多くチームづくりの難易度が高いです。だからこそ、BTCMすべて揃ったチーム自体が企業の強みになります。
Ubieはスクラムで開発をおこなっています。
スクラムにはたとえばデータサイエンティストや医師も参加して、一丸となってプロダクト開発に取り組んでいます。
データサイエンティストや医師も、彼らの専門性に立脚してデザインに参画してくれることは、デザイナーとしてもとてもやり甲斐があります。
業界のプロ
患者の適切な医療受診や医療従事者の働き方改革を支援し、地域医療の持続性を維持すること。これはまさにUbieのこれまでの活動に符号するものです。
こうした取り組みを加速させるため、スタートアップ1社としての取り組みを超え、業界を知り尽くしたプロたちとの有志団体を設立しました。
(STUDIOでちょうど良いフォントがあってよかった)
Chapter 05: 「分断」に抗い、医療をつなぎ直すデザイン
コロナはわたしたちの生活を激変させました。リモートワークに切り替えてからすでに1ヶ月以上経っている方も多いと思います。
果たして今後はどうなるのか。
WHOは長期化を見越して現実と向き合うことを、世界中に求めています。
「ほとんどの国では、まだ伝染病の初期段階にあります。そしてパンデミックの初期に影響を受けたいくつかの国では、現在症例の復活を見始めています。勘違いしないでください。私たちは長い道のりを歩んでいます。このウイルスは私たちと一緒にいます」
『ペスト』という小説があります。戦後まもない1947年にフランスのカミュが書いた小説で、アルジェリアのとある街を伝染病のペストが襲い、閉鎖された街の中で人々が助け合いながら伝染病と立ち向かいます。
絶望に慣れることは、絶望そのものよりさらに悪いのである
小説の一説です。
100年に一度のパンデミックという、ある種の不条理な出来事を私たちは経験しています。
そのような不条理に慣れることなく、自分や、自分の大切な人が希望を持って生きることができるように。
Ubieは「Ubieだからこそ可能なつなぎかた」で、コロナがもたらす医療の「分断」と戦っていきます。
そしてデザインの力で一緒に戦うメンバーを募集しています。
すぐの転職を考えていないという方も歓迎ですので、もしご興味ある方は、twitterなどで気軽に適宜お声がけください!
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