見出し画像

D4V/IDEO主催LT書き起こし「医師のメンタルモデルを最速で紐解くデザインのアプローチ」

これは 2020/10/21 に実施された D4V/IDEO 主催ウェビナーでの LT の書き起こしです。

自己紹介

Ubie のはたけです。
Ubie に携わり始めてから光の速さで2.5年ほど経ち、かつて数人だったメンバーも70-80人と大きく増えました。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_03

会社のミッションは変わらず「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」です。
この実現に向けて日々あれやこれやデザインしています。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_04

「Ubie は医療機関向けに業務効率化やってる会社でしょ?」って思われがちでしたが、先日のリブランディングの通り、やりたいのは分断された医療をつなぐことです。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_05

今日の LT は Ubie のデザインパートナーである D4V/IDEO さんにお声がけいただいたのですが、

・インド進出時の現地でのエスノグラフィー調査
・With コロナ時代の生活者の価値観・行動変容調査
・先日のコーポレートのリブランディング

などなど、D4V/IDEO さんには創業以来さまざまな形で伴走いただいています。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_06

医師のメンタルモデルをいかに最速で紐解くか

本題に入ります。
今日は「医師のメンタルモデルをいかに最速で紐解くか」を、Ubie での実際の取り組みを交えて話そうと思います。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_07

メンタルモデルについて私たちが普段の生活で意識することはほぼないはずです。
クーパーが言っているように、映画を見ているときに映画の仕組みについていちいち考えないと思います。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_08

医療についてのメンタルモデルでいうと、たとえば

・一晩寝てたら、いつもの偏頭痛はおさまるよね
・病院に行ったら、薬を処方されるよね
・胸痛を訴える患者がきたら、とりあえず心電図とレントゲンとるよね

といったものがあるでしょう。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_09

これらのメンタルモデルについては Google の People + AI GuidebookApple の Human Interface Guidelines の機械学習の章の両方で触れられていて、AIプロダクトを開発する上で欠かせない要素です。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_10

Ubie においては医師がユーザーでもあるので、彼らが日常の診療の中でどう世界を捉えているのかを理解するのは、言うまでもなく重要です。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_11

大事なのはわかったと。じゃあどうやってやるのか?

D4V-LT_20201021hatake_ページ_12

2年くらい前に悩んでいたこと

D4V-LT_20201021hatake_ページ_13

ちょっと考えてみてください。

次のどちらのアプローチが、よりユーザーに価値ある製品を、より早くつくれるでしょうか?

A) デザイナーである自分が、医師や医学のことをわかる
B) 医師がデザインのことをわかる

D4V-LT_20201021hatake_ページ_14

Ubie に入ってから2年半ほどいろいろ試してきましたが、最近になってようやく確信を持って言えるのは、「チームとしてはどっちもやるがベスト」ということです。でも最初はとりあえずAばかりやっていました。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_15

医療のドメイン知識なるものはまさに広く深い海です。

医学的知見は医師国家試験に始まり、初期研修、後期研修、診療科ごとの専門医制度など途方もなく奥が深く、かつ医学も日進月歩でアップデートされます。

日本の場合は国民皆保険とフリーアクセスに代表されるように国が法・政策を持ってグラウンドルールを決めています。

そしてこれらが病院やクリニックの経営に大きく左右します。

医療機関は当然のことながら医師だけで成り立っているわけではなく、医師・看護師・受付・システム課・院外の開発ベンダー・製薬企業のMRなどなど多様なステークホルダーで形作られる一つの社会で、現場には独自の慣習があります。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_16

「デザイナーである自分が医師や医学のことをわかる」といっても、この海を泳ごうと思ったらぶっちゃけ何年あっても時間が足りません。
一人のデザイナーとして、こうした現実とどのように向き合っていいか悩むことがかつてはありました。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_17

転機

1年ほど前に、本当に偶然ながら2つの転機がありました。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_18

1つは当時とある農業スタートアップのエンジニアの方とこのテーマについて話していたときのことです。

彼はお酒を飲みながら「特に専門性の高い部分の開発は、まず獣医や営業のメンバーにプロトタイプをつくってもらって思考の棚卸しをした上でコミュニケーションとった方スムーズなんだよ」という話をしていました。

その話を聞きながら、「同じ要領で、うちの医師とやってみるとなんかいいかんじになるのでは...?」とも素朴に考えはじめました。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_19

ほぼ同じ頃、一人の循環器内科医が入社しました。

彼は自分でアプリ開発を試みるなどしていたようですが、デザインについては未経験、デザイナーと働くのも初めてのようでした。

ただ、入社初日からいつの間にか figma をインストールして勝手に使い倒していて、もしかしたら上で紹介した他社のような取り組みも、もっと積極的にできるのでは?と感じ始めました。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_20

医師にとっては「普段の日常」でも、他の職種からは見えづらいものです。
ありがたいことに Ubie には内科・麻酔科・循環器内科・産婦人科・精神科の医師らが在籍して、それぞれのスクラムチームでプロダクト開発に携わっています。

新規立ち上げの案件で医師体験の解像度が高くない場合には、「普段どうしてる?」「どう考える?」「これとこれってどう違うの?」「現場だといろいろ制約あるけど本当はどうしたいの?」など社内医師にカジュアルインタビューする中で初期の課題仮説を立てます。

また、非常に専門性の高い領域について医師自身に何らかのアイディアがある場合には、「今の Ubie ならこんなことできるんじゃない?」というプロトタイプを最初につくって、思考の棚卸しをしてくれたりもします。

プロダクト開発で生活者 (一般患者) とのコミュニケーションについて悩んだ時にも、「xxさんだったら、この状況で普段どうやって患者さんに話します?」といった相談がよく飛び交います。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_21

医師のメンバーと日常的にコミュニケーションをとる中で、医師体験や患者体験の関心もいっそう高まってきたようで、最近では Google PAIR が出している Human-AI Interaction に関する論文の輪読会を医師やMLエンジニアたちと行い、Ubie に適用できそうな知見についてあれこれ話したりもしました。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_22

まとめと予告

D4V-LT_20201021hatake_ページ_23

最初の方に触れた問いに戻ります。

デザイナーである自分が医師や医学のことをわかるのと、医師がデザインのことをわかるのと、どちらがベターか。

2年いろいろ試行錯誤しての結論としてはどっちもやるがベストです(結論ずるくてすみません)。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_24

2年半 Ubie に携わってきていますが、「現場で血の通った患者と向き合っている医師にしかわからない感覚、彼らにしか見えていないビジョンが確実にある」ということを痛感しています。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_25

それらをうまく掬い上げて、形にし、適切に伝えること。あるいはそれらを自らできるように支援することが、ドメインエキスパートと協業するデザイナーの役割と思うようになってからは、迷いがなくなりました。

今後もこのワクワクする事業と組織で、行けるとこまで行ってみたいなーと考えてます。

D4V-LT_20201021hatake_ページ_26

Ubie には未来の医療を背負う医学部生のデザイナーが1人います。
彼も創業間もない頃から事業と組織の成長をつくってきたメンバーで、そんな彼にしか見えていない視点などを今週末にデザインカンファレンスの Designship で話すようです。
乞うご期待ください!

D4V-LT_20201021hatake_ページ_27

We are hiring!

歴史に残るようなAIプロダクトを一緒に発明しましょう。

Dev チームでは医師ソフトウェアエンジニアQAエンジニアCEO開発(戦略秘書)事業開発PMMを、
Scale チームではカスタマーサクセスフィールドセールスなどを、超積極採用中です。

採用の最新情報はコーポレートサイトからご確認ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?