体験して買えるホテル
こんにちは、コーイチです。
今回は、館内の家具、備品などを体験し、購入もできる国内と国外の事例を見ていき、今後もこのようなホテルが出来ていくのか、また他の業種でも同様のことが展開できるのかを考えていきたいと思います。
1.THE AUDO
(出典:Dezeen youtubeより)
2019年、「The Audo」は、コペンハーゲンの港やクルーズドックがある工業地帯Nordhavnにある1918年築の建物で、オリジナルの建築要素を備えたネオバロック様式の邸宅を利用して作られました。
立地は、カフェやショップが立ち並ぶ地区からすぐのところにあり、ホテル名は、ラテン語の「ab uno disce omnes(直訳で「一人から、すべてを学ぶ」)」の頭文字をとったもので、このホテルの多機能なスペースにちなんだものとなっています。
「The Audo」は、デンマークのデザインブランド「Menu」が建築スタジオNorm Architectsと設計したコペンハーゲンの10室のホテルで、同ブランドの本社とフラッグシップショールームを兼ねています。
2019年のAHEADヨーロッパのホスピタリティアワードで「ニューコンセプト・オブ・ザ・イヤー」のタイトルを受賞しています。
「Menu」の家具、照明、ホームアクセサリーは、他のブランドの商品と一緒に館内の至る所で紹介されており、購入することができます。
床から天井、家具に至るまで、目にしたものすべてを実際に購入することができるようになっています。
「The Audo」をショールームとして利用しているブランドは20社にのぼり、購入する前に中に入って製品を体験できることが最大の特徴となります。
「The Audo」は、客室のほかに、ライブラリー、レストラン、デザインショップなど、さまざまなアクティビティに組み替えられるフレキシブルなパブリックスペースも備えており、さまざまなイベントやアクティビティに対応できるよう設計されています
これらのスペースは、ゲストと訪問者の自発的な交流を促進するように設計されており、人々が共用スペースに来て、お互いに出会うことを望んでいるとのことです。
「The Audo」の家具や備品は、ゲストにユニークな体験を提供するために定期的に変更され、「Menu」や他の注目ブランドの新製品を紹介しており、「ホテルの部屋に関するアイデアは、人々が異なる経験を得られるように、常に改装してやり直す」ということです。
「Menu」がこのホテルを作ったのは、オープンさ、知識の共有、コラボレーションを通じて、デザインビジネスを運営するための新しいアプローチを取りたかったからと説明しています。
2.HOTEL THE KNOT YOKOHAMA
(出典:横浜ホテルレポート「はまほて」 youtubeより)
いちご株式会社が手掛けるライフスタイルホテル「THE KNOT」は、地方創生、日本を豊かにすることを事業目的の一つとして、日本地図に多くの「結び目(KNOT)」をつくっていきたいという想いから、地域に根付き、地域の魅力発信を軸とするホテルとして展開しています。
現在は、新宿、広島、札幌にも展開しています。
2017年12月、「横浜国際ホテル」がリニューアルし、ライフスタイルショップの「アクメ ファニチャー」が家具の設計、製作を手掛けた「HOTEL THE KNOT YOKOHAMA」が、オープンしました。
日本初の「客室で家具を体験し、実際に購入できるホテル」として、当時話題になりました。
ホテル内の各客室や共用スペースの、家具・アメニティなど、プロダクトの設計および製作を「ACME Furniture」が担当し、全客室147部屋のインテリアデザインは、トータルデザインを手掛ける「ランドロー」のデザイナー橋本氏が担当しました。
コンセプトは、『旅と街、街と人を「結ぶ」ホテル』で、港町である横浜という立地から客船のキャビンをイメージした客室は、ネイビー、グレー、ブラウンを基調とした配色でインダストリアルな空間を演出しており、そこに「ACME Furniture」のソファを中心としたオリジナル家具に加え、深みある木の色味が印象的なベッドやデスク、ランプなどを特注で製作しています。
家具以外にも「HOTEL THE KNOT YOKOHAMA」とのコラボレーションアイテムとして、アメニティーなどの備品や各種グッズも製作、セレクト、販売しています。
また、ホテル内の共用スペースやレストラン「PANWOK」にはショッピングバッグのデザインやコラボアイテムの製作など、「ACME Furniture」と縁の深い、イラストレーター花井祐介氏によるアートワークが描かれています。
気に入った家具があれば、そのこだわりの家具をご自宅でも使うことができる。
体験だけでなく、思い出もモノという形で一緒に持ち帰ることができる新しいスタイルのホテルです。
※現在は、販売していなさそうです。
3. MUJI HOTEL GINZA
(出典:建築家二人暮らし youtubeより)
「MUJI HOTEL GINZA」は、中国の深圳、北京に次いで3つ目となる『無印良品』のホテルで、2019年4月にオープンしました。
日本初上陸の地は東京・銀座で、1階〜5階は世界旗艦店となる『無印良品 銀座』があり、その上層階となる6階〜10階に「MUJI HOTEL GINZA」, 地下1階には「MUJI Diner」が入っています。
「アンチゴージャス、アンチチープ」をコンセプトに、旅先において体と心を整える空間と、宿泊客と土地をつなげるサービスを用意し、無印良品の店舗と連携することで、タオルの手触り、レストランのメニューや空間などを通して、無印良品の思想を体感できるホテルを目指しています。
レセプションの背景に積まれた石は、100年以上前に東京の街を走っていた路面電車の敷石を使用しており、その他にも土、木、石、布などさまざまな天然素材を使用しています。
そこには「時間が作り出す風合いの豊かさを感じてもらいたい」という思いがあり、時間と共に変化していくホテルとなっています。
客室は細長い空間のものが多くコンパクトな作りながらも“心地よさ”へのこだわりがたくさん詰まっており、一番コンパクトなセミダブルから、52㎡という贅沢な空間でのんびり過ごせるツインルームまで9タイプ79室が用意されています。
客室にあるテーブルや椅子、ベッドなどのほか、フロアライトや壁掛けBluetoothスピーカー、時計、アロマディフューザー、ドライヤー、水回りの備品などはショップで購入可能となっており、実際に試し購入できます。
また、「MUJI HOTEL GINZA」のロビー階でもある6階には、ホテルのレストラン「WA Japanese Restaurant」と、ホテルとゆるやかに繋がった空間に広がる「ATELIER MUJI GINZA」に併設されたバーラウンジのSalonもあります。
4. 最後に
(出典:MENU SPACE youtubeより)
3つのホテルの事例を見ていきましたが、いずれも自社もしくは、コラボレーションしたブランドの商品を体験できるショールームとしての機能を併せ持っています。
宿泊により実際に過ごしてみることで、その商品の良さを十分に理解してから購入できるということは、消費者にとってもメリットしかありません。
メーカー側にとっても、商品の膨大な展示スペースが必要なく、顧客に自然な形で使ってもらえます。
また、ホテルとしての収益だけでなく、家具や雑貨などの収益も見込めることはメリットではないでしょうか。
今後もこのようなインテリア業界が開発するホテルやレストランなどは、増加していくものと思われますが、施設を自社において開発をするだけに関わらず、商品を展示品として施設などに納品し、そこでオンラインで購入できるようにすれば、出店したい場所に、比較的簡単にショールームを作ることも可能ではないかと思います。
メーカー側は出店コストがかからず、施設側も家具などのコストが削減出来、お互いにメリットとなるかと思います。
不特定多数の人が多く来る施設で、比較的長時間滞在し、そこで普通に使う、もしくはあれば試したくなるようなものがあれば、成立するかと思います。
もちろん、メーカー側と施設側のコンセプト、グレード感(客層)が相通じることが必要で、メーカー側が宣伝効果が高いと判断される場合のみ成立するかとは思いますが。
インテリア業界だけでなく、その他の業界でも、組み合わせさえ間違わなければ、その考え方は流用できるのではないでしょうか。
ショールーミング店舗が増加する中、このような手法も一つの方法ではないかと思います。
メーカーの皆様、ご興味があれば、一緒にやってみませんか。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
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