ブランドで店舗をシェア
こんにちは、コーイチです。
従来の実店舗での販売モデルが苦戦を強いられている中、ブランドが定額料金を支払い、店舗からの収益を分配するという価値観を重視したアメリカ、Bulletin社のサブスクリプションビジネスが盛り上がりを見せています。
「ネット企業のためのWeWorkを作って販売している。」と言われるフェミニストのスタートアップ企業「Bulletin」を見ていき、このような業態が日本でも成功しそうか考えていきたいと思います。
1.Bulletinとは
(出典:Inc. youtubeより)
アリ・クリーグスマンとラナ・ブランストンは、コンテンツマーケティングのスタートアップ企業である「Contently」で働いていた2015年にBulletinを始めました。
当初Bulletinは、読者が買い物をすることができるオンラインマガジンとして始まり、そこから本格的なフリーマーケットへと発展し、2016年の5月から10月までの毎週末、ブルックリンの「放射能汚染された沼地の駐車場」と呼ぶ場所で自ら運営していました。
それは現在のモデルと同様に、中小企業ブランドのオーナーが彼女たちにお金を払って、一律の料金で商品を販売するというものでした。
彼女たちは、中小企業ブランドのオーナーが抱える真の問題を発見して、そのモデルを作りだしました。
大規模なフリーマーケットに参加するには、前もってかなりの投資が必要で、しかも毎週末、数カ月にわたって参加しなければならず、自分たちの商品がそのような環境で売れるかどうかもわからないため、なかなかそんな余裕はありません。
それらの中小企業の問題を考えて、Bulletin社は小規模な企業やメーカーに、実店舗での販売の機会を提供し始めました。
このモデルのおかげで、彼女らの収益は毎月2倍になり、参加を希望する小さなブランドも数え切れないほどになりました。
しかし、二人は毎週末に14時間労働を強いられており、このペースを維持することはできませんでした。
その問題を解決するために、2017年5月にブルックリンのウィリアムズバーグに初の常設店をオープンしました。
フリーマーケットと同じモデルで、Bulletinが店舗のデザインとスタッフを担当し、ブランドは同社に月会費を払って商品を販売することができます。
この店を若い女性たちに来てもらうために、2017年初めにシリコンバレーの権威あるインキュベータープログラムに参加し、「Y Combinator*」を経た2人は、ジュエリーやアクセサリー、アパレルを制作する女性経営のビジネスに全面的に注力し、すべての女性が手に入れられる価格のアイテムをキュレーションすることにしました。
*Y Combinator(YC ):毎年2回のバッチ(イベント)を開催しており、そのバッチに採択されると YC はもちろん、その卒業生や多くのサポーターによる支援が受けられるため、毎年、世界中のスタートアップがこぞって応募しています。
Bulletin社は2人の女性によって設立され、チームはすべて女性で構成されており、女性が率いる企業の製品のみを取り扱っています。
また、店舗では女性中心のイベントを開催し、収益の10%をニューヨーク家族計画に寄付しています。
ミレニアル世代の女性が関心を寄せることに焦点を当てることで、同じ種類の製品に関心を持つ人々や買い物客のコミュニティを構築しました。
これらにより、Bulletinは店舗の一部であると同時に、マーケティングパワーの一部にもなりました。
Bulletin社の購読者の中には、主にこの新興企業の視聴者へのアクセスを得るために、Bulletin社で販売する人もいるようです。
Bulletinは、ニューヨークを拠点とするオンライン卸売市場であり、ブランドと小売業者を結び付けています。
2.Bulletinの店舗とは
(出典:fashionnetwork.comより)
Bulltinは期間限定で店舗(ポップアップストア)となる場所をつくり、さまざまなサイズのセクションに区切ることで、ブランドに販売スペースを提供しており、ブランドは気に入ったセクションを1ヶ月単位で借りられるようになっています。
来店客は、小規模で独立したさまざまなブランドの商品を、ひとつの店舗でまとめて見ることができ、店を訪れる度に違った商品や雰囲気を味わうこともできます。
しかも通常の小売店と違い、ブランド側は「大きなスペースにある各ブランドの店舗」と各セクションを、自分たちの好きなように形作ることができます。
具体的には、どの商品がどこに陳列されるかや商品の価格もブランドが決められるほか、陳列されていない商品をiPadでお客さんに見せたり、メールアドレスなどの顧客情報を集めたりと、ブランドがやりたいことを何でもできるようになっています。
(店内の販売員はBulletinのスタッフですが、各ブランドは販売員を教育する場として利用することも可能となっています)
ブランドの中には、Bulletinのサービスを小売販売モデルのテストに使うところもあれば、新商品のローンチ時に1、2ヶ月だけスペースを借りるところもあるようです。
解約の1ヶ月前に連絡さえすれば、ブランドは好きなタイミングで好きなようにBulletinのスペースを使えます。
また、女性が経営する企業を支援し、政治的な話題をインスタグラムで発信したいと考えている先進的なミレニアム世代の女性に直接アピールすることもできる場所にもなっています。
3.新しいタイプのフラッグシップストア
(出典:archilovers.comより)
ニューヨークのユニオン・スクエアの旗艦店は、他の店舗がすでに単独で利益を上げているBulletin社にとって、大きな前進となりました。
それまでの店舗は、Ikeaの棚を購入しピンク色に塗るなど、自分たちでわずか数週間で作っていました。
しかし、旗艦店は他の店の3倍の広さがあり、はるかに洗練された立地のため、きちんと作り上げるために、女性だけのデザインスタジオ「Built Interest」、女性だけの建築スタジオ「Alda Ly」、女性だけの施工業者「Aerial Design and Build」を採用しました。
ピンクとイエローを基調とした他の店舗と同じような雰囲気ですが、DIYのようなキッチュさはなく、洗練されたデザインになっています。
この店舗のデザインは、完全にモジュール化されており、新しいブランドや新製品が加わっても、それに合わせてスペースをアレンジすることができるようにしています。
またフラッグシップスペースは、インタラクティブ性も考慮して設計されており、出店メンバーが店舗を使ってイベントを開催することを許可しています。
棚の一部はキャスター付きで、壁から離すとベンチになり、店舗正面のベンチは、パネリストが座る場所になっています。奥にはスリムなバーがあり、食べ物や飲み物を用意することもできます。
また、スターバーストやラフィータフィーなどのピンク色のキャンディーが入った昔ながらのチューブが設置されており、持ち帰りたい顧客は、5ドル/1袋で購入できます。
これらのアイデアは、クリーグスマンたちが90年代にショッピングを楽しんでいたことからのアイデアで、「ショッピングは取引だけではないことを人々に思い出させるため」に考えたということです。
また、家族計画連盟(Planned Parenthood)のコーナーもあります。 Bulletin社は四半期ごとに売上の10%を女性の健康を守る非営利団体に寄付しており、店内にはPlanned Parenthood専用のコーナーが設けられ、ボランティア登録用紙、ステッカー、ピン、そして「ディップ・ジャー」と呼ばれる、来店者がクレジットカードをかざすと自動的に5ドルが寄付される仕組みもあります。
4.プラットフォームの構築
(出典:Inc. youtubeより)
クリーグスマンは、「私たちは、より女性的な小売企業を目指していますが、同時に不動産企業でもあり、今ではテクノロジー企業でもあります。」と言います。
CEOのブランストンは、待機中の約2,000社の中からどのブランドと組むか、どの商品を仕入れるか、そしてどのように販売するかといったすべての物流を効率化するデジタルプラットフォームの開発に取り組んできました。
その結果、Bulletinで販売する各企業は、ShopifyのようなEコマースプラットフォームに似たリアルタイムの売上ダッシュボードにアクセスできるようになりました。
また最新の機能では、店舗スタッフが顧客の声を入力することができるようになったとのことです。
例えば、「あるサイズは大きい」「ある色の財布について15人から問い合わせがあった」など、顧客の声を入力することで、各企業はそれに応じて商品を調整することが出来るようになったということです。
同社では、過去の類似商品の販売データ、現在のトレンド、ブランドのInstagramやポートフォリオ、類似商品のソーシャルメディアでのパフォーマンスなど、さまざまな要素を考慮して、販売するスモールブランドを選んでいます。
有名なブランドであればサンプルを要求しませんが、画像で誤魔化すことができる商品の場合は、必ずサンプルを要求し、候補となるすべての商品を数日間試してから仕入れるかどうかを決めるようです。
そしてこれらの新店舗のブランドの約70%は、他にフルタイムの仕事を持っている女性の副業によるものということです。
但し、Bulletin社の美的感覚があまりにも独特なため、すべてのブランドがうまく売れるわけではありません。
地域によって異なる300ドル~750ドルの月会費を数日以内に回収できず、さらに良好な利益も得られない場合は、パートナーシップを友好的に解消することが多いといいます。
しかし、それは1店舗につき4カ月に1企業程度しか起こらないそうで、オンラインビジネスの多くは複数のBulletinの店舗で展開されることになるそうです。
また、旗艦店がオープンしてから、ウェブサイトを実店舗のようにしっかりとしたものにしようと変化させています。
但し、電子商取引を目的としたものではなく、Amazonに対抗しようとしているわけでもなく、彼女たち自身が経験した自然なニーズから生まれたものにしたいとのことです。
Bulletinの大きな特徴は、「すべての人にとって」の体験ではなく、小売業者のために厳選された購入体験を作り出すこととなります。
4.最後に
Y Combinatorが支援するこのスタートアップは、2017年春に220万ドルのシードラウンドを調達し、ビジネスを拡大するプロセスを開始しました。 今後は全米に店舗を設置し始める予定ということです。
また、将来的には、ウェルネス・コンセプトの店舗や、ベビー&マザー・コンセプトの店舗なども展開していきたいと考えているようです。
店舗のシェアビジネス(コリテール)は、コワーキングスペースのWe Companyが運営するWeMRKT やMade by We、以前紹介したNeighborhood Goodsなどもあり、新しいリテイルとして増えてきています。
コリテールを通した販売方法は、ミッションが明確でスピード感のあるビジネス拡大を狙ったブランドにとって非常に有効であると考えられます。 出来るだけ低リスクで素早く展開し、質の良いフィードバックを得て商品開発に役立てながらファンとの関係を築くことが期待できる。
日本でもこのようなコリテールがもうすぐ出てくるかと思います。
今回も最後まで見ていただき、ありがとうございました。 よろしければスキ、フォロー、サポートのほどよろしくお願いいたします。