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古くて新しい場所

こんにちは、コーイチです。
今回は、上海で1920年代に建てられた欧風建築群をリノベーションした複合施設の「COLUMBIA CIRCLE」を見ていき、歴史的なものを利用することの大切さを考えていきたいと思います。

1. COLUMBIA CIRCLE(上生・新所)とは

                 (出典:iCUBE_ Group youtubeより)

 2018年5月に上海長寧区にオープンした、オフィス棟、文化財建築、展示施設、飲食店などが集まる複合施設です。
 戦前、上海に外国政府が管轄するエリア「租界」があった時代、この辺り一帯はアメリカ系の不動産開発会社によって宅地開発が進められました。
「コロンビア・カントリー・クラブ」は欧米人、主にアメリカ人向けの娯楽施設として1924年に開設され、ゆったりとした敷地にはダンス、テニス、ゴルフ、水泳が楽しめた他、バーベキューや乗馬もできたそうです。
 クラブの付近には「コロンビア・サークル」として、1928年に欧米人向けの超高級住宅街の宅地開発が行われ、広大な庭をもつ多くの洋館が建てられました。
 この住宅地は様々な国籍の住民に対応するために、スペイン、イギリスなど欧米各国の建築様式の建物が設計されました。
 実際にこちらの住宅の住民は、大使館大使、銀行家、医師、宣教師、商人など、上海のそうそうたる各界の名士たちだったということです。
今もこの街の周辺にはこの時期に建てられた多くの洋館が残されています。

 ちなみに「コロンビア」という名称の由来は、住宅街や娯楽施設がコロンビア・ロード(COLUMBIA ROAD)という名称の道の付近に立地していたためということです。
 コロンビア・ロードは旧租界当局によりつけられた名称で、租界がなくなった現在では広東省の地名よりつけられた、番禺路(パンユールー)という名前に改められています。

 上海の旧租界時代は1943年に終結し、1951年からは「コロンビア・カントリー・クラブ」の建物は主にワクチンを研究する研究所の施設「上海生物製品研究所」として利用されました。
 研究所は2016年に移転、その後は敷地内の歴史的建造物をいかしての開発が行われ、2018年に「COLUMBIA CIRCLE(上生・新所)」という名称でリニューアルオープンしました。
 現在「COLUMBIA CIRCLE(上生・新所)」には飲食店や各種店舗があり、その後建てられたビルにはオフィスなども入居しています。

2.散策、撮影、観光スポットとして

             (出典:阿为逛世界Wei's Travel youtubeより)

 「COLUMBIA CIRCLE」は、点在する歴史建築と新しく建てられたオフィスビルの計21棟が集まる散策スポットとして生まれ変わっており、中国語名の「上生・新所」や「哥倫比亜公園(コロンビア公園)」の名前で呼ばれることもあります。
 レトロでおしゃれな西洋建築が多いので、地元女子たちの間ではSNS映えスポットとしてオープン直後から話題になりました。
 のんびり散策するのにぴったりの雰囲気で、緑の多い公園のような敷地内は、約100年前の建物がそのまま残り、建物の細部を眺めていると、上海にいることを忘れてしまうほどヨーロッパ的な雰囲気となっています。

 若者に大人気の場所だけあって、フリマイベント、ポップアップストアの出店も多く、アート展なども定期的に開催されるそうので、来るたびに新しい楽しみ方が見いだせます。

 メイン建物の一つ「海軍倶楽部」では、様々な展示が開催されており、展示施設の奥には、1924年の竣工当時のままの状態が保たれているプールがあります。
 このプールは現在、遊泳はできず観賞用ですが、ここでしか見られない光景を求めてたくさんの人が訪れる有名スポットとなりました。
 プールサイドにはオープンテラスを設けたバーやカフェが立ち並んでおり、涼し気な風景を眺めながら食事やお茶を楽しむことができます。

 1931年に建てられた「孫科邸」は「コロンビア・カントリー・クラブ」に隣接する場所に建っています。
 孫科は中国革命の父と呼ばれる孫文の長男で、孫科がこの邸宅を上海の住まいとして所有していた時期、中華民国の行政委員長を務めていました。
 実はこの邸宅は元々、上海旧租界時代を代表する外国人建築家・、ヒューデックが自宅用に設計した邸宅だったのですが、プロジェクトでトラブルが発生し、ヒューデックは孫科に調整を依頼、見事解決した感謝の意味を込めて安価で売却したというエピソードがあります。

 孫科邸は1950年代、上海生物製品研究所の事務所として使用され、2018年に「COLUMBIA CIRCLE」としてリニューアルオープンした際は非公開でしたが、2020年末に一般公開の運びとなりました。
 一般公開では、コロンビア・カントリー・クラブから研究所を経て、「COLUMBIA CIRCLE」としてリニューアルオープンするまでの建築の歴史や修復の様子、一帯の歴史などを紹介する展示「理想之地ー上生・新所 都市更新と歴史文献展」が開催されていました。

3. その他の主な施設

            (出典:CHA CHA CHINA Channel youtubeより)

 2020年12月、「旧コロンビア・カントリー・クラブ」のメイン棟であった建物に、「蔦屋書店」がオープンしました。蔦屋書店の中国店舗としては杭州に続いて2店舗目、上海では初の店舗となります。
「蔦屋書店」のオープンにあたり、歴史的建築の趣を大事に修復・リフォームを施し、かつ高いセンスを兼ね備えた書店としても十分に鑑賞できる設計になっていることからオープン前から大きな話題になりました。
 現在新型コロナの影響もあり、完全予約制での入店なのですが、オープン直後は予約がとりづらい状況だったとのことです。
 「蔦屋書店」は2階建てで、閲読コーナーもあり、カフェやレストラン(夜間はバー)、も併設されています。珍しい書籍や日本の陶器、オリジナルの雑貨も展示販売されており、ゆったりと心地よく過ごせる空間になっています。

 また「COLUMBIA CIRCLE」内には、「上海一おしゃれな書店」のような謳い文句のセレクト書店で、書架の合間に、半個室のようなカフェ&読書スペースが配置されている「稲城書店」もあります。
 その他に海鮮丼の専門店「相撲猫」、ビアバー「Brew Bear」、スイーツ「Miss Sth」の他、上海でおなじみの人気カフェチェーン「SEESAW COFFEE」、ネットの口コミだと敷地内トップクラスの人気レストランバー「PARLOUR」、ゆったりおしゃれなテラス席が気になる「blackbird」、先ほどご紹介したプールの建物内にひっそり佇む隠れ家中華料理店「THE er」など人気のレストランもそろっています。

 また、フィットネスクラブや爽やかな雰囲気のインテリアショップ「E.BON」などもあり、オフィス棟には、2015年に上海で生まれたコワーキングスペース大手の裸心社(naked Hub)や世界トップのSFX製作会社デジタル・ドメイン(米国)、日本の“クレヨンしんちゃん”オンラインゲームを中国本土で手がけた炎竜集団(Blaze Loong Group)なども進出しています。

 まだ工事中の建物も多いので、今後も新しいお店が続々オープンしていきそうですね。
 今はまだ気軽に上海に行けませんが、コロナ禍後の状況を見に行きたいと思います。

4.最後に

 上海では、歴史上、古きヨーロッパの建物や昔の住宅などがまだ多く残されており、その建物を活かした開発が盛んです。
 外灘、新天地などが新旧が入り混じった開発として有名ですが、ここ「COLUMBIA CIRCLE」も素晴らしい開発かと思います。

 「温故知新(おんこちしん)」という孔子の言葉は、「古きを温(たず)ねて新しきを知る」と訓読みします。
 原文は「子曰、温故而知新、可以為師矣」となり、「温故知新」のあとに続く言葉があり、全体の書き下し文は、「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る、以って師と為るべし」となります。

 中国の歴史を振り返ると次々と国のかたちが変わり、その都度古いものは潰し、新しいものを作ってきたという歴史がありますが、ようやく、過去のいいものを活かしていくことの大切さを本当に考えるようになったのだなと思いました。

 日本でも京都や奈良、鎌倉など歴史的な建物を再生した開発が多くみられますが、高度成長期に建てられた多くの合理的な建物は、「質より量」が重視され、30年ほどで建替えや再開発がされています。
 今後の建物や街開発は、合理性だけでなく、未来にも価値のある建物や街を創っていくべきではないかと思います。

今回も最後まで見ていただき、ありがとうございました。        よろしければスキ、フォロー、サポートのほどよろしくお願いいたします。



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KOH
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