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学校探訪記②|ヒミツキチ森学園:徹底的な振り返りが学びの鍵

神奈川県葉山にあるヒミツキチ森学園を訪れました。


1.ヒミツキチ森学園との初めての出会い

この学校のグループリーダーであるアオさんは、オンライン上で知り合ったお友達。
私がnoteを始めるきっかけやライティングのイロハを教えてくれた恩人でもあります。

彼は、もともと公立小学校の教員であったのですが、ヒミツキチ立ち上げにかかわり、カリキュラムを創り上げ、そして、教員をやめて、そのままヒミツキチスタッフとして活躍されています。

昨年末に、初めてお会いして、その時の迷いだったり、辛さだったり、楽しさだったりのお話を聞かせていただいて、とっても共感を得たのを覚えています。
そして、彼の情熱的な教育論には前から興味を抱いていました。

その時に交わした「ヒミツキチ、遊びに行かせてください!」の約束を果たしすために、葉山まで、文字通り飛んでいったのです。

2.ヒミツキチ感満載の学びの場

京急電鉄逗子・葉山駅からバスで10分ほど。住宅街を歩いていくと、一軒の古民家を見つけることができました。写真で建物の外観は知っていましたから、すぐに見つけることができました。
ヒミツキチのネーミングから、勝手に森の中、山の中をイメージしていましたが、隣近所は、普通のお家。まさに住宅街のど真ん中にある平屋の、ちょっと雰囲気の出ている古民家。
おしゃれな家が立ち並ぶ街の中にたたずむ、周りのそれとはちょっと違った雰囲気の味のあるお家。
ヒミツキチという名にふさわしい、そんな感じの校舎でした。

子どもたちを写さないようにしたので、シャッターチャンスがあまりなかったのですが、上の部屋は全体ミーティングや低学年の海クラスが使用していた広間。
文字通りアットホームな雰囲気で、子どもたちはのびのびと生活していました。
部屋のあちらこちらに、子どもたちのお手製のものが置いてあったり、子どもたちのかいた絵やメッセージが随所に飾ってあったりして、見ているだけで楽しくなっちゃう。

そして、ヒミツキチでの大切にしたい学び方や考え方が部屋のあちらこちらの壁に掲示されています。
こういうことを子どもたちと創り上げながら、今日まで過ごしてきたんだろうなぁと思うと、これから始まる発表会がいっそう楽しみになりました。

部屋の壁のあちらこちらに貼ってある
部屋の壁のあちこちに貼ってあって、みんなが確認できる

3.発表会は楽しくて、あったかな場

行くならこの日しかない!と決めて出かけて行った日が、なんとプロジェクト発表会当日でした。

4月から、3ヶ月間、プロジェクトアワーで学び続けてきた子どもたち一人一人の学びが表現される場。
保護者の方や協力してくれた外部の方なども含めて、広間がたくさんの人で埋め尽くされました。

司会進行はもちろん子ども。
この二人のMCがとってもすばらしい。場を盛り上げ方、うまく進まなかった時のフォローの仕方、会場の人への振り方…etc。とにかく居心地の良い発表会でした。

プロジェクトのスタートは、「釣り」がテーマだったそうです。
でも、低学年の森クラスは、子どもたちの「磯でとれる貝をたくさん食べたい!」との思いから「磯でとれる貝」に変えたそうです。
発表会では、子どもたちは、貝の種類や採り方、食べ方、気づきなどを話してくれました。

貝と岩の模型を粘土でつくり、「こうやってとります!」と実演してくれたのは、おもしろかったなぁ。
「松葉貝はこうやって食べるとおいしいよ」
「ヒダラ貝は、恐竜みたいな形だけど、味はおいしいよ」
「ドライバーをこうやって使いましょう」
実際に体験したからこそわかる、気づきや学びが、自分らしい言葉で一生懸命話してくれました。

高学年の海クラスは、釣り協会の方をゲストに迎えて、釣りの仕方を教えてもらったそうです。
発表会では、道具やコツ、魚の種類や調理の方法について、さすが高学年らしく、スライドや実物の釣竿を使ってわかりやすく教えてくれました。
活きエサのイソメやゴカイが気持ち悪くてさわれなかったことや、なかなか釣れなかった時のことも、楽しそうに話してくれました。

「釣りは挑戦だ!」
「釣りは想像力が必要だ!」
「海の中がどうなっているのか、想像するのが楽しい」
など、こちらも実際に体験したからこそ感じたことを、自分の言葉にかえて、一生懸命語られていました。

下の写真は、ある女の子が発表してくれたフィリップ。
「どーぞ、写真にとってください」と言ってもらえたので、ありがたく撮影。
こうやって、自分の学びに自信を持っているところも、とっても素敵だと思いました。

写真を撮りやすいように、広げて見せてくれた

発表会を終えた子どもたちの表情は、達成感がいっぱいあふれて、こぼれていました。
参加していた保護者(親チーム)の方の中には、感動で涙している方あり、子どもたちと一緒に喜び合っている方あり…
本当にあったかな場になっていました。

4.深い深い振り返りの時間

ここからが、もっとすごい。
お昼をはさんで、午後からは、この発表会のリフレクション(振り返り)をしていました。
ただの振り返りではありません、徹底的な深い深い振り返りです。

これは単なる反省会や感想の共有とは一線を画すもので、子どもたちが自分自身の学びや体験を深く掘り下げ、自己理解を深めるための時間となっていました。

まず、一人一人が視点・観点に応じてふりかえり、スクールタクトという学習ツールに書き込んでいきました。
他の子どもが書き込んでいることもリアルタイムに見られるので、それに刺激を受けて、一人でも自分の気づきをどんどん深めていくことができて、とってもいいツールだなと思いました。

これだけではありません。
一人の振り返りにたっぷりと時間をかけたあと、さらに書いたことについて対話する時間があります。

他者との対話を通して、新しい発見や気づきを得ることができます。

例えば、
・リハーサルの時よりも本番の時の方がうまくいっていたのはなぜか?
・うまくいったのは、どんなことを意識していたから?
・発表する前に感じていた不安を、安心にかえるためにどんなことをしていたか?
・本番前日の夜に家で発表練習することまでがんばれたのは、何がそうさせたのか?
なんてことは、なかなか自分だけの振り返りでは、考えることはないでしょう。

質問され、回答を考え、ひねり出すことで、思考を言語化し、言語化されたことがメタ認知につながる。そうした徹底的な深い深い振り返りをたっぷり2時間もかけてやっていたのです。

どうして、こんなに振り返りを大切にするのか?
ヒミツキチ森学園の教育の特色として、3つの活動を大切にされています。

大切にしたい3つの活動「対話」「共創」「リフレクション」

教える人は”先生”だけとは限りません。常に問いを投げかけ、問いを引き出す役割をするのが「グループリーダー(先生)」です。
クラスは1〜3年生を森クラス、4〜6年生を海クラスとして異学年混合学級で行います。ここでは、”誰かが誰かよりも何かを知っていること”も、”誰かが誰かより何かを知らない”ということも当たり前の光景。大人の社会と同じように異年齢の人たちと共に学び、教える立場も教えてもらう立場もサイクルの中で経験していきます。

その中で、”分からないことや人に聞くことは恥ずかしいことではない”というメッセージを体感で理解し、それが当たり前の環境の中で、共創というものを言葉でなく肌で体感して理解することができます。

クラスの運営について話し合うとき、自分の意見を発表するとき、あらゆる場面において、円になってクラス全員の顔が見えるサークルになっての「対話」で共有をします。

自分の気持ちを皆に伝えるとき、自分の意見を押し付けるでもなく、何でも受容してしまうのでもなく、本当に意味のある話し合いをする力をここで身につけていきます。

さらに、自分のワクワクしていることをマイプロジェクトの時間で掘り下げたり、一週間のはじまりに自分で時間割を組み立てたりする中で大切なのは、その後に「リフレクション(振り返り)」をすること。

実際にやってみてうまくいったのか、いかなかったのか。
そこから何を感じたのか。
どうすれば次につながるのか。
その時の自分の感情はどんなものだったのか。

自分の心の声に耳を傾け、そこからまた次に向かうアクションを自分で確立してくことも、自分のどまんなかを見つける大切なステップです。

ヒミツキチ森学園webサイトより

何も今回この特別な発表会だからこんなに振り返っていたのではないのです。
普段から、毎日毎日振り返りを重ね続けてきたからこそ、こんな豊かなリフレクションの時間がもてているのだなぁと思いました。


いわゆる公立の普通の学校とは違う学校を訪れたのは、今回が2校目でした。
以前訪れた、まおい学びのさと小学校とカリキュラム的には通じるところはあるものの、今回訪れたヒミツキチ森学園は、また全然違ったことを私自身感じ取ることができました。

自分の中の価値観が、気持ちよく崩され、そして新しい価値観が生まれた瞬間でした。

アオさん、ヒミツキチ森学園スタッフのみなさん、かわいくて素敵な子どもたち、ありがとうございました!

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
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