GIGAスタートアップ-地方公立小の挑戦
「GIGAスクール構想」ってご存知ですか?
詳しくは、こちらをご覧ください。
2021年3月に児童・職員分150台のiPadがやってきてから1年。
ほんとは、もう少し先の話だったようですから、コロナ禍でなければ、ここまで急な変化はなかったのかなと思いましたが、結果オーライ!
子どもたちの学び方や私たち教員の仕事の仕方が、いい方向へ一気にコマを進めました。
今回の記事では、微力ながらGIGAの推進役・旗振り役として取り組んでみた2020・21年度の取り組みについて振り返って書いていきます。
1 最強アプリ「ロイロノート」
思い返せば、2020年度春、急に舞い降りてきたGIGAの話に、教育委員会が「なにほしい?」(←もちろんこんな聞き方じゃないけど)と学校現場に話を振ってくれたのがありがたかった。
まわりの自治体は、WindowsタブレットやGoogle Chromeをチョイスしていく中、うちの自治体ではiPadに決まりました。
立派なハコになり、肝心の中身についても進言し、これまたロイロノートを入れることを英断いただいた教育委員会には感謝しかありません。
2020年度末の3月下旬、新年度ギリギリに納入されたGIGA端末は、第8世代のiPad(無印)に、Logicoolのキーボード付きケース(低学年には衝撃吸収ケース)、iPad用ペン(Logicool crayon)。
そして、中身はiOS標準アプリの他、授業支援ソフトとして、ロイロノートschool、ラインズeライブラリアドバンスが入りました。
総額10万円なり。国からの補助金を大きく超えた予算を確保してくださった町長・町議会議員のみなさんにも感謝・感謝です。
中でも、ロイロノートは、私たち教員が触れたことのない類のアプリでした。3月の納品後すぐに行った職員研修では、学年末の忙しい中、自由参加にもかかわらず、全員が参加してのロイロ体験会を行うことができました。
ロイロノートは、一言で言うと、ノートアプリです。
その特徴としては、
などがあげられます。
体験会を複数回実施し、これらの機能を先生方と一緒に少しずつ体験していきました。
これまでの紙のノートと鉛筆では実現が難しいことばかりですので、体験してもらった先生たちの衝撃はいかばかりか。
「おもしろそう!」という直感が働き、ワクワクが隠し切れない先生。
「どうやってつかえばいいんだろう?」という不安な表情を浮かべる先生。
でも、誰一人として、「こんなものつかえるか!」と現実逃避する先生はおらず、つかい方をたずねたり、教え合ったり、どんなことにつかえるかなと話し合ったりするポジティブな先生たちばかり。
かくして、新年度間際の短い準備期間の中、自主研修が進み、迎えた2021年度4月の始業式の日には、1年生以外の全クラスがロイロノートを使った学級開きが行われていました。
最初の頃は、パワポづかいをして、授業の流れや説明をスライドで示す使い方が多かったように思います。子どもたちの端末にも画面を飛ばせますから、みんなでモニターを見なくても、手元で画面が見やすくなりました。
子どもたちが作ったカード(例えば、算数の問題の解き方など)を提出ボックスに出してもらって、それをみんなで見るという使い方もあっという間に各教室で見られるようになりました。
この使い方、これまでだと、隣の席の人とノートを見せ合いっこしたり、班で見せ合いっこしたりが一般的でしたが、ロイロノートを使うと、みんなの考えをいっぺんに見ることができます。
「ちょっとよく分からないなぁ」という子も先に提出されたカードをヒントに考えられるようになります。
こうした一斉に同時に閲覧できる機能は、これまでの授業においては、なかったことなのです。
かくして、ロイロノートはこの1年間でもっとも使われているアプリになりました。もう、ロイロのなかった授業には戻れないと思えるほどの最強アプリとなりました。
このあたりは、まだまだ書きたいことがあるので、別の機会に。
2 取得までに半年もかかった Googleアカウント
実は、GIGAがスタートする前にも、自治体独自にWindowsタブレットが導入されていました。当時の勤務校では、少し古い機種ではありましたが、2020年5月の休校期間中には、zoomで家庭と学校をつないでオンライン朝の会にも取り組んでいました。
オンライン学習を充実させるために、目をつけていたのがこのGoogle Workspace for Education(旧G suite for Education)。
ところが、登録手続き途中にあるドメインの証明(このドメインが小学校のものですよ、ということを証明する)がどうしてもできなくって、日本法人ではなく、アメリカ本社と英文でのメールのやりとりもしてがんばっていたのですが、断念せざるをえなかったのです。
そして2020年の年末、新たにコロナ補助金でついた予算で、学校のWebサイトを公式に作成することになりました。
そこで、正式にドメインed.jpを取得し、webサイト制作会社の力も借りて、あれだけつまづいていたドメインの証明があっという間にできてしまってたのです。
晴れて全児童・職員のアカウントをゲット!
この時の喜びようったら・・・・(^^/
というわけで、2021年度スタート時には、いつでもGoogle Workspace for Educationが標準搭載されていたのですが・・・・・。
前述のとおり、ロイロノートが最強すぎて、おもしろすぎて、Googleまで使いこなす余裕がなかったというのが正直なところです。
ところが、思わぬところで、Googleアカウント取得の効果が発揮されたのです。
それは、近隣の学校で新型コロナ陽性者が出始めて、予防的措置として2日間の臨時休校から始まったオンライン授業の時のことです。
当時、zoomは学生や教職員向けに無料アカウントの時間制限を解除していました。その際、学生や教職員としての簡易証明として、ed.jpドメインが役に立ちました。
Google管理アカウントで発行した教員用のGoogleアカウントでzoomにログインすることで、時間制限のないミーティングをスケジューリングすることができました。おかげで、休校時のオンライン授業やそれ以降の出席停止児童向けに授業の配信を行なった際も時間制限なしで接続することができたのです。
おっと、これはあくまで副産物の話であって、フォームやスプレッドシート、スライドなどのGoogleアプリの魅力にはアカウント取得以前からよ気づいていて、校内事務では多用していました。
4月から密かに、Google Workspace for Educationの上級トレーニングを積んでいるのですが、まだまだ使い勝手の良さそうな機能が盛りだくさんであることがわかってきました。
こちらも詳しくは別の機会に。
3 zoomで時間と空間を越える
そして、オンライン授業においても、会議などその他の公務においても、もっともその存在価値の大きさを見せつけられたのがオンライン会議システムzoomです。
個人的には、zoomを使ってきてはいましたが、それを全教員、全児童、全保護者が使えるようになるまでには、少々時間を要しました。
校内教員研修で初めてzoomの体験会を行ったのが、たしか2020年度が始まってすぐのころ。校内の教室に散らばってzoomにアクセスし、みんなの顔が写った時の、ちょっと照れくさそうな反応。どこを見ていいのやら?といった先生方の戸惑いの表情を覚えています。
その日の夜には、有志でオンライン飲み会なるものまでやってみました。(こっちは定着しなかったなぁ。)
そのすぐ後の5月の臨時休校期間。
なんとなく予感がしていたので、全児童のWindowsタブレット端末にzoomのアプリをインストールしておき、家庭のWi-Fi環境調査まで行ってところで、やっぱり休校に。
しばらくして、学年ごとに、zoomの接続テストをかねた「お試しzoom学活」を行い、参加してくれた児童の保護者からのフィードバックを得て、改善を重ねました。
そして、満を持して行ったのが「オンライン朝の会」でした。
初日は、「つながらない」「音が聞こえない」「話せない」などなどトラブル続出で、学校の電話が鳴り止みませんでした(^^;
それでも、一つ一つに丁寧に対応し、共通したトラブルの対処方法をメールでお知らせするなどしていくうちに、やがて、ヘルプ依頼や問い合わせはほぼなくなっていきました。
以降、いく度となく訪れた臨時休校・学級閉鎖の危機。それでも、zoomとロイロがあれば、なんとか学びを止めずに済むという小さな安心感が教職員にも保護者にもありました。
やむを得ずお休みをしている家庭からも「zoomでつなげますか?」というリクエストが当たり前になってきました。
オンラインでお家から授業に参加する子どもと、教室にいていつもの授業を受けている子どもが、一緒に学びを進められるということが、随分と日常化しました。
また、授業以外のお仕事でもこのzoomのおかげで随分と効率化されました。それは、学校外での会議・研修などでの利用です。
勤務校は、地方の学校で、管内規模の会議などがあると、車で1時間以上もかかるような場所へ出かなければならないことがあります。
半日仕事、時には1日、たまに宿泊をともなうことさえあります。
それが、zoomのおかげで、会議にかかる時間だけの拘束ですむようになりました。時間や移動のコストをかけずとも、オンラインでも十分に用はたります。むしろ、議論に集中できてより効率的であるとすら感じることの方が多いのです。
ドラえもんの秘密道具どこでもドアのごとく、zoomは時間と空間を超えるすばらしい道具となってくれました。
まとめ
GIGAスクール構想は、当初の予定では2019年度から5年間かけて準備が進められる予定でした。それをたった1年で準備し(といっても、学校では最後の方にドタバタとやってきた感じがします)、スタートしてから試行錯誤、手探り状態での実践をここまで続けてきました。
今回の記事では、2020年度のGIGAの夜明け前から、夜明けすぐの薄明に照らされ始めた約2年間のことについて、裏話も含めてくわしく書いてみました。
・これまでの授業の形を大きく変えた、最強アプリ「ロイロノート」
・まだまだ使い方が未知数、無料でここまで便利な「Googleアプリ」
・時間と空間を超えた、どこでもドアツール「zoom」
これらの3つのツールによって、勤務校での学びや仕事の仕方が大きく変わりました。
コロナは、学校現場にたくさんの傷跡を残していきました。
一方で、進化したテクノロジーが現場に一気に押し寄せたことで、これまで遅々として進まなかった学校現場の改革を一気に押し進めることができたとも見ることができます。
これまでに経験したことがないくらいの規模の変革を体験した学校現場。
この1年はご祝儀相場とも言えるくらい、いろいろな教育実践を、子ども、保護者に温かく大きな目で見守ってもらえた、受け入れてもらえたように思います。
だからこそ、ここからが真価を問われるシビアな時代に入っていくように感じています。正念場です。
了
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