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2021シーズン、J1各クラブの展望

はじめに

以下の展望はあくまでも個人の感想・意見です。全て一人で書いているので頓珍漢な箇所もあるかもしれませんが、暖かい目で見ていただければ幸いです。どうしても許容できないミスがあれば、お手柔らかにご指摘ください。

また、Jリーグの移籍ウィンドーはまだ閉じていないため、今後新たな選手が加入or退団する可能性はあります。今回は「チーム構成を根本から変えるような大型移籍はもう無いだろう」と判断し、このタイミングで公開しました。

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川崎フロンターレ

昨季は圧倒的な強さで独走。史上最速優勝を決め、天皇杯をも制し、サッカー界の枠を超えて世間に強烈なインパクトを与えた。しかし今オフはレジェンド中村憲剛が引退。難易度の高いアンカーで躍動した守田も移籍。栄光を支えた2選手抜きで、来季を戦うことになる。

それを受けて、今オフは中盤にシミッチ、小塚、塚川。前線に知念や遠野と、着実な補強を施している。特に、後方からの鋭い縦パスで違いを生み出せるシミッチは、川崎包囲網が厳重になる来季のキーマンになりそう。鬼木達が彼をどこで起用するのか、想像するだけでワクワクする。部外者の僕がそうなのだから、ファン・サポーターの皆さんはウッキウキかと思う。仮にアンカー起用が成功すれば、それだけで守田が抜けた穴は塞がるだろう。成功しなければ他選手を起用することになるだろうが、いずれにしても守田の代わりが務まるかは微妙。その場合はアンカーを廃止してダブルボランチにするなどのシステム変更を施した方が良さそう。
また、ACLで欠かせないであろうダミアンとジェジエウ、昨季ブレイクした三笘らは無事に契約更新。発表が遅かっただけに他クラブはガッカリしていることだろう。

川崎が来季もJリーグ最強クラスの戦力を有するのは間違いないが、一方で不安要素もある。まず、かねてより苦手としているACLの存在。次に、昨季から指摘されている最終ラインの手薄さ。さらに、前述した通り中盤の新戦力が守田、中村、下田の抜けた穴を埋めきれない可能性。
そして最後に、書くまでもないことだが、各クラブの守備・対策が一層激しくなること。降格が無かった昨季と降格枠4つの来季では、他クラブの選手層、対策の質、守備の強度、デュエルの粘り強さなどが1〜2段階上がると思われる。昨季は通せたパスが引っかかったり、昨季はハマった崩しのプランが完璧に封じられたり、三笘が抑え込まれたり…と言った場面も増えるだろう。
これは王者の宿命であり、昨季のマリノス同様苦しむ試合が増えるはず。それを乗り越えて複数タイトルを獲得するか、あるいは虻蜂取らずで無冠に終わるか。"戦術"のみならずターンオーバーなどの"戦略"も重要になる来季は、Jリーグ最高峰の監督・鬼木達の力量が改めて試される。

ガンバ大阪

難波のタレント軍団は、あれよあれよという間に2位に上り詰め、そのままフィニッシュ。
しかし、(これは数人のガンバサポさんとも話したことだが)来季への不安はあった。と言うのも、昨季の宮本サッカーは戦術完成度が高いとは言えず、「なんだかよくわからんけど勝った」ような試合が多かったからだ。チームというよりは個人の力でゴリゴリ押しているような印象。チームとして機能しているかと言われると…
もっとも、選手たちの良さを消さない起用法を見つけたり、層の薄いポジションに山本や福田ら若手を抜擢し戦力を底上げしたりしたのは流石だと思う。同じやり方でスールシャールがユナイテッドを首位に押し上げているように、それも一つのやり方だ。ただ、同じタイプの監督たち(例えば日本なら大岩剛)が作り上げてきたチームほどの強さは感じられなかった。
無論、まだまだ宮本スタイルは発達途上で、来季さらにパワーアップする可能性は十分にある。が、いずれにせよ選手個人の力は重要になるので、補強は必須だ。…昨年末、僕はそんなことを考えていた。

僕のような素人に言われるまでもなく、クラブ側はそのことに気づいていたのだろう。今オフ、元から豊富な選手層に、(My お気に入り選手の)一美、身長と決定力の高い元広島のレアンドロ・ペレイラ、韓国代表のチュ・セジョンが加わったのはかなりのプラス要素。
縦横無尽に位置を変えてビルドアップを支え、シュートでもパスでも脅威になれる一美は要注目。ポジション争いのライバルは強力だが、ACLもあるので出番は少なくないはず。ペレイラはとにかく決定力が高い。守備を頑張るタイプではないが、それでも出番を失わなかった点取り職人。チュ・セジョンは計算できる中盤の即戦力としてこの上ない。
ここに噂通りフルミネンセのウェリントン・シウバや元鳥栖のチアゴ・アウベスが加入すれば、攻撃陣の個人能力はJリーグ最強クラスになる。
一方で、サイドバックの補強が見られないのは懸念要素。リーグ戦だけならともかく、ACLを控えるチームとしては物足りない。これに関しては続報を待ちたい。

昨季の結果に慢心せず、(サイドバック以外は)十分すぎるほど手厚い補強を施した印象。あとは、宮本恒靖が監督として初挑戦となるACLをいかにリーグ戦と両立させるか。選手層や戦い方を見ていると大岩鹿島同様ACLで躍進するような気がするのだが、果たして。

名古屋グランパス

フィッカデンティのお家芸である堅い守備に、金崎、シャビエル、マテウス、前田、阿部らタレントたちの攻撃が噛み合い、見事3位でフィニッシュ。いやーフィッカデンティさん、開幕前に色々批判してすみませんでした。謝罪…!圧倒的謝罪…!それにしても米本と稲垣のダブルボランチは凄かった。「あのコンビ半端なくない?」そう感じた他サポは多かっただろう。

今オフも齋藤学や注目ルーキー森下に加え、柿谷、木本、長澤などのベテラン実力者を獲得。昨季、守備と比較して攻撃がどこか物足りなかったのは「フィッカデンティあるある」だが、それに関してはアタッカーの層の薄さも大きな要因だったように思える。その意味で即戦力クラスの柿谷と斎藤の加入は大きい。欲を言えばもう一人、センターフォワードを本職とする選手がいれば最高だが。
いずれにせよ、ACLとの両立に向けて手堅く補強を成功させた印象。この手堅さ、フィッカデンティの守備構築並み。清水と並び今オフの勝ち組だろう。トヨタマネーは強し。

ただ、昨季レギュラーを固定しがちだった点は気がかり。相手の対策網にハマったり主力が複数人離脱したりした場合に、手詰まりに陥る危険性がある。特にセンターフォワード(金崎)、ダブルボランチ(米本、稲垣)、センターバック(丸山、中谷)はかなり固定されていた覚えが。攻撃陣だけでなく守備陣も、来季は控え組が重要になってきそう。とはいえ先述した通り信頼できる選手が加入しているし、フィッカデンティの事だから守備の堅さは意地でも維持するだろうし、大崩れはしないと思う。
史上最も過酷であろうリーグ戦と、厄介なACLの両立。この難題をクリアできるだけの人材は揃った(たぶん)。昨季チームを(予想外の)躍進へ導いたイタリア人指揮官の下、名門復活を印象付ける成績を残せるか。

セレッソ大阪

ロティーナの安定したシステマチックサッカーを切り捨て、クルピのもとで攻撃的なサッカーを展開する模様。だが懐疑的な声は多い。

まずクルピの実力が疑問。元から若手の抜擢には定評があるが、その他の評価はあまり高くない。半信半疑。
次に、主力や準主力が複数人退団してしまった。中でもユーティリーティープレイヤーの片山が抜けたのは、過酷なシーズンを戦う上で地味に痛い。前途多難。
最後に、これは個人の意見だが、攻撃的で魅力的なサッカーをするのなら降格のなかった昨季にやるべきで、4チームが降格する来季にやるべきではないと思う。「なぜ、来季にそれをやるのか?」本末転倒。
この内部事情3つに追い討ちをかけるように、毎年参加チームが散々な目に遭うACLプレーオフ出場まで決まってしまった。内憂外患。

とはいえ、昨季韓国Kリーグで2試合に1点のペースで得点を量産したタガート、鳥栖の絶対的司令塔原川、福岡を蘇らせた東京五輪世代のボランチ松本、「なぜそこに」進藤など、選手の補強には成功している。両サイドバックの2人が残留したのも朗報of朗報。一時期は退団が噂されたヨニッチも残留が決定。…と、ここまでは1/21朝の時点での下書き。この日の夜にヨニッチの移籍が決定してしまい、内容を書き直すことになった。と言っても、「昨季ベストイレブンに選ばれてもおかしくなかった守備の要の退団は、あまりに致命的。」としか書きようがないのだが。
彼の後釜にクルピの教え子でもあるチアゴを獲得したのはせめてもの救いか。キックの質が高い大型センターバックは、ヨニッチとはタイプが異なるものの確かな実力者とされている。もっとも、J初挑戦だけに活躍できるかは未知数だが。

散々な印象がある今オフだが、それでも選手層は厚い部類に入る。ACLにプレーオフから参戦することを考えれば「十分」とまでは言えないが、仮にリーグ戦に的を絞った場合、上位を狙えるだけのメンバーが揃っていると思う。
あとは監督のクルピとセンターバックのチアゴの2人次第か。もちろん上手くいくに越したことはない。上手くいけば不安を一掃する躍進を遂げるはずだ。だがもし上手くいかなかった場合でも、即座に優秀な後釜を連れて来ることができれば大丈夫だろう。少なくとも降格することは考えにくい…と僕は考えている。無論、優秀な後釜探しも簡単ではないが。とりあえず、様子を見てみよう。

鹿島アントラーズ

大苦戦した前半戦とは打って変わって、後半戦では無双状態だった昨季のアントラーズ。欧州流を期待されたザーゴはグアルディオラのようにシステマチックな戦術を構築するのではなく、ジダンのように最低限の原則を定めた上で選手たちの良さを最大限に活かそうとしている印象を受けた。荒木や沖ら若手が伸び伸びプレーできていたのもそのお陰か。(沖は頼れるベテラン2人のサポートも大きかった)
それと、ファン・アラーノのポジショニングが地味に肝だった。戦術なのかアドリブなのかはさておき、彼の捉えにくさは鹿島の一つの武器だったと思う。

今オフは補強のスタートこそ遅かったものの、気がつけばヤバそうな選手を2人獲得した。まず、高いキック精度を誇るカイキ。爆力2トップの一列後ろに飛び道具を持つ選手が立ち、2トップが競ったこぼれ球を狙うパターンがハマれば強い。さらにさらに、ブラジルからピトゥカも加入。強豪サントスの主力として活躍していた守備的MFは、ディフェンダーとしてもプレーできるそう。監督としてはさておき選手を見る眼は確かなジーコが獲得を熱望した男。期待せざるを得ない。(ただ、コパ・リベルタドーレス決勝を戦ってからの合流になるので、コンディション面で序盤は苦労するかもしれない)
鹿島にしては珍しくACLの無い来季、これ以上新たな選手は必要ないだろう。

完璧・万全とまでは言えないが、十分な戦力だと思う。ほぼ全ポジションに実力者とギラギラした若手が揃っており、安定感がある。永木、小泉、和泉、杉岡、そしてピトゥカといったユーティリーティープレイヤーを複数人揃えているのも大きい。
また、昨季負傷からパワーアップして復活した上田と、ベストイレブンのエヴェラウドのゴリゴリツートップは必見。対策をもろともせず暴れ回り、観客が「上田ぁ!」(声:仲間由紀恵)と叫んでしまうようなスーパーゴールを何発も決めてほしいところ。(エヴェラウドもね)

谷底からスタートした昨季とは異なり、来季はチームの大部分が完成した状態からスタートする。夏に主力を引き抜かれるリスクはあるが、それを考慮してもなお有力な優勝候補だ。常勝軍団復活なるか。最低でもACL出場圏内には入りたい。

FC東京

昨季は新システムを導入したり橋本が退団したりと軽いパニック状態に陥っていたが、若手を積極的に起用しながら最終的にこの順位に落ち着いた。特に、中盤で躍動した安部、ルーキーとは思えないクオリティを見せた中村帆高、198cmの体格で鋭い反射神経を披露した波多野は、来季も欠かせない戦力になるだろう。

それ以上に注目なのは、監督の長谷川健太が昨季終盤に辿り着いた境地"アンカー森重"。これが怖いほどハマっており、昨季苦労したシステムを完成させるキーマンになりつつある。元々センターバックの水準をゆうに超える攻撃センスの持ち主だけに、中盤の底でバランスをとりながら攻守に貢献するアンカーは天職なのかもしれない。なかなか日本人には務まらない役割なので、部外者の僕も密かに注目している。

今オフ目立った補強はなく、書くこともあまりないが、それだけ安定感を感じさせるオフだったとも言える。ACLも無ければ主力の流出も無く、安定した戦いぶりを見せてくれると予想。
不安要素があるとすれば、森重をアンカーで固定する場合に渡辺の相方のセンターバックが少し頼らないことと、ディエゴ・オリヴェイラに移籍の噂が出ていることくらいか。

昨年11月、優勝可能性が消滅した直後に監督が発した「来季の優勝を目指す」との言葉には、十分な実現可能性がある。

柏レイソル

オルンガを起点にしてオルンガが決める。困ったらとにかくオルンガに放り込む。そんな"戦術オルンガ"はシンプルながら緻密に練り上げられており、J1でも脅威となった。

今オフはそのオルンガが退団し、代役候補だったジュニオール・サントスも広島へ移籍。後釜として(?)アンジェロッティというブラジル人選手を獲得した。プレー集を見る限りでは大柄で機動力のあるテクニシャンという印象。Jリーグで活躍しやすいタイプではある。ただ、さすがに昨季のオルンガのようなプレーは期待しづらい。(そもそもオルンガが残留していたとしても、守備がハードになる来季は昨季ほど活躍できなかったはず)
ゆえに来季は"脱オルンガ"の完成度が重要になる。特に、昨季あまり必要でなかった中盤からのビルドアップは、否応なしに求められるだろう。その中盤には仙台から椎橋、フルミネンセからドッジが加入した。ドッジは高いインターセプト能力と堅実なパス精度を有し、即戦力として活躍が期待される。だが、ネルシーニョのハードなサッカーへの適応含め、活躍できるかは未知数。彼の出来は結果を左右する可能性があるだけに、目を離せない。
不安定だったセンターバックには、昨季福岡で活躍した上島が加わったが、まだ物足りないような気がしないこともない。昨季は隙の多い最終ラインをカバーするべくヒシャルジソンが無理なタックルを仕掛けてイエローを貰う光景が幾度も見られた。あの光景を減らすためにも、守備陣の安定感は不可欠だ。

昨季は合理的かつパワフルなスタイルで、弱点を見事にカモフラージュしたネルシーニョ。しかしそれゆえか怪我人の多さにも悩まされた。来季は攻撃戦術の核を担った"怪人"の不在や中盤のビルドアップ能力をはじめ、不安要素も少なくない。その中で、J屈指の戦略家はどのようなチームを作り上げるか。新加入ブラジル人2名はどのようなプレーを見せるか。要注目。

サンフレッチェ広島

監督に対するファン・サポーターの評価が最も割れているのはこのチームだろう。昨季は格上のチームに勝利したり若手が輝いたりとポジティブな要素も多かったが、勝つべき試合に勝てない、時々驚くほど質の低いサッカーをしてしまうなどの弱点も顕になった。

個人的には、さほど豊かでない選手層で、グイグイ世代交代を進めつつ、あれ以上の順位を求めるのは要求過多だと思っている。同じことをできる監督が日本にどれだけいるだろうか。
一方で、「伸びしろが無い」「サッカーの完成度が高まっていない」「和式の限界」といった、長年チームを見てきた人々の監督批判にも説得力がある。どちらが正解なのだろう。
何はともあれ、例年以上に小さなつまずきが命取りになる来季に向け、監督交代というリスキーな手段を取らなかったことは正解だとは思う。少なくとも今の広島に、一か八かの賭けをする必要などない。今は城福浩に任せるのが最善だろう。

補強は例年通りの印象。怪物アタッカーを毎試合のように封じ込めた荒木を筆頭に、堅固だった最終ラインには目立った補強なし。一方、物足りなかった最前線にはジュニオール・サントスという強力なアタッカーが加わった。高さ、強さ、速さなど色々と規格外のストライカーは、起用法さえ誤らなければ確実に暴れてくれるはず。層の薄さが懸念されていたウイングバックにも東京五輪世代の長沼が加わった。ただ、松本とサロモンソンを復帰させなかった判断には疑問が残る。特にボランチは層が薄いだけに、松本は必要だったような… ここは19歳の土肥(ドヒ)の覚醒を期待したい。

新スタジアム計画の歯車も動き始めており、来季はサンフレッチェ広島にとって重要な一年になるだろう。来シーズン序盤に還暦を迎える闘将は、毎年順位が落ちている(とはいえ2位、6位、8位だが)嫌な流れから脱却できるか。コメントを見ても、来季に懸ける想いは強そうだ。

横浜F・マリノス

王者として臨んだ昨季は、各クラブに対策を敷かれたことや主力の負傷離脱もあり、かなりの苦戦を強いられた。急遽導入した流動的な3-4-2-1はインパクトが結果に結び付かなかっが、浦和戦で採用したトップ下オナイウが思いのほか強力だったのはポジティブな発見。高さのある彼の起用法が増えたことは、来季どこかで活きるかもしれない。

今オフの補強は控えめで、推進力のあるエウベルと攻守に高いセンスを有する岩田くらいか。だが昨季の補強と異なり、今季の補強は主力級だ。量より質という印象。
昨年noteでマリノスの補強の物足りなさを指摘したが、今季の補強には特に指摘する点がない(何様)…と言いたいところだが、高さと決定力を持つセンターフォワードは欲しいところ。サプライズ加入したレオ・セアラーはこの条件を満たせるだろうか。急遽ジュニオール・サントスを獲得した昨季のようにならなければ良いが…

来季はACLが無いため、負担は小さい。ただ引き続き"マリノス対策"との戦いにはなるだろう。システマチックなサッカーは驚異的な強さを生み出す一方で、論理的な分だけ対策もされやすい。降格枠4つの来季はシーズン途中から色々試す余裕は無いため、開幕前に複数のプランを練っておくことが不可欠だと思う。個人的には畠中をアンカーで起用したら面白そうだなと思っているのだが、如何だろうか。能力的には務まるはずだし、センターバックの層も厚くなったことだし、FC東京の森重のようにドンピシャでハマればチーム力の底上げに繋がるはず。(素人の意見です)
戦術的に不可欠だった朴一圭の後釜には、昨季恐るべき急成長を遂げたオビ・パウエル・オビンナを据えるだろう。スタートからジェダイ・マスターと共に戦うマリノスの捲土重来を、今から楽しみにしている。

浦和レッズ

昨季の話はさておくとして… 今オフは欧州流の優秀な監督を招聘し、改革に向けて西や金子を筆頭にサッカーIQの高い選手を補強。浦和らしくない(?)味のある補強には、早くも新監督リカルド・ロドリゲス(以下リカロド)の影響が現れているのだろうか。彼自信も、補強への満足感とスタイル構築への自信を見せている。

また、レオナルドや武田ら昨季燻った選手たちが優れた戦術のもとで本領を発揮できるかにも注目。武田は年齢といい昨季終盤の躍動ぶりといい、楽しみでしかない。
その一方で、昨季の鹿島で見られたような「監督のやり方に合わせた大幅なメンバーの入れ替え」は見られなかった。昨季何度も批判の対象になったベテランたちをはじめ、大半の選手はそのままだ。彼らが昨季までと大きく異なるリカロド流に適応できるかは一つの鍵になりそう。
また、おそらく問題ないとは思うが、リカロドがJ1未経験であることが悪い方向に働くリスク(例えば、J2で使えていた縦パスがJ1ではカットされるなど)も無視はできない。

選手たちの欧州流戦術への適応は、迅速に進めなければいけない。今でこそ順調なマリノスや鹿島も、欧州流を取り入れた当時は一時期最下位付近を彷徨った。降格枠4つの来シーズンから欧州化に着手する浦和が同じスピード感だと、本格的に残留争いに巻き込まれる恐れがある。(逆に、スムーズに浸透させられれば上位も狙えるはずだ)
リカロドがどのような戦術でJ1に殴り込みをかけるか、浦和の選手たちがどのくらい彼のやり方を習得できているか。開幕してみなければコメントしようが無いが、将来を見据える意味でも来季が勝負の年になることは間違いない。

大分トリニータ

昨季は5連敗を喫するなど、一時は片野坂マジックの終焉も感じさせられた。ところが名将はスタメンを柔軟に入れ替え、終わってみれば見事中位に。さほど豊富でない選手層をフルに活用し、しっかりとチームをまとめ上げる。さすがは名将・片野坂知宏。改めて彼の腕前に唸らされた。

しかし今オフは苦しい知らせが続いた。昨季苦しい時期に中心となってチームを引っ張った大黒柱の鈴木だけでなく、攻守に抜群のセンスを発揮した岩田や、知念、渡、ムードメーカー三平のアタッカー3人衆、バランサーとして躍動したピアニスト島川まで流出。経営面の事情もあるのだろうが、今オフ最も主力を流出させてしまったクラブだと思う。長沢、下田、坂、福森、上夷といった渋くとも堅実な補強は天晴れだが、それでも抜けた主力の穴埋めには物足りないような。昨季終了時は「攻撃陣の補強が必要」との声も聞かれたが、攻撃力はむしろ下がってしまった印象を受ける。

もっとも、このクラブには片野坂知宏がいる。2018シーズン、降格候補筆頭との前評判を覆し躍進を遂げた衝撃のサッカーは忘れられない。彼なら来季も苦境を乗り越えるだろう、そう思わせるだけの実績が、この男にはある。
もっとも、来季は全体の5分の1が降格する過酷なシーズンだ。片野坂サッカーが火を吹くのか、或いはかつてない苦戦を強いられるのか、こればかりは何とも言えない。確かなことがあるとするならば、名将の策から目が離せないということだ。

北海道コンサドーレ札幌

昨季はク・ソンユンの退団やアタッカー陣の負傷もあり、荒野ゼロトップのシステムを試したり高嶺や金子ら若手を抜擢したりと、新たなチャレンジが多い1年だった。試行錯誤を繰り返す中で、ようやく若手と新戦力がフィットして本来の形が戻り始めたと思ったらシーズン終了、そんな印象がある。だが、降格のないシーズンに試行錯誤出来たのはポジティブな要素だろう。もしも来季あのような事になっていたら、本当に危なかった。

来季に向けて、今オフは青木と柳という高いポテンシャルの持ち主2人を獲得。またモロッコリーグからガブリエルという未知の大型選手も加わった。3人全員がペトロヴィッチ流に適応できれば、攻撃の火力増加は言わずもがな、戦術の幅も大きく広がるだろう。不安定な守備陣には、昨季群馬で全試合に出場した23歳岡村を獲得。彼もまた大きなポテンシャルの持ち主だけに、ペトロヴィッチの下でチームの守備の要に成長することを期待したい。その他の補強は控えめだが、昨季から試合に出てきた若手たちの成長を加味すればこれくらいで良いのかもしれない。

大柄な選手の揃う前線をはじめ、的確な補強が見られた今オフ。全体的にバランスの良いチーム構成になっていると思う。さすがは野々村社長。
だがしかし、ゴールキーパーは心細い。実績のあるベテランと期待の若手が名を連ねてはいるものの、札幌の守備を支えてきた韓国代表GKの抜けた穴をそのままにしている印象は否めない。降格するような選手層・監督ではないが、油断できないシーズンになりそう。昨季苦しい時期をあの手この手で乗り越えた指揮官は、落とし穴の大きい来季をどのような策で戦うか。個人的には、就任1.2年目に披露した「意図的なカオス」(勝手にそう呼んでいます)を再び作り上げてJ1を席巻してくれることを期待している。

サガン鳥栖

昨季は経営難やコロナの影響もあり、一時どん底にまで落ちた。しかしそこで終わる金明輝ではなかった。大胆に若手を抜擢しながら、生まれ変わったかのような質の高いサッカーを作り上げることに成功。繊細ながら怖さを感じさせる攻撃を見せた小屋松や、最終ラインでセルヒオ・ラモスばりのダイナミックなプレーを連発したエドゥアルド、さらには期待に応えすぎなくらい応えた本田や中野ら大勢の若手たちの大半が残留。来季はさらなる飛躍が期待される。

今オフはCLでも目にするマッカビ・テルアビブの背番号10チコ・オフォエドゥや、仙頭、山下、島川らを獲得。財政に余裕がないことを考慮すれば、ベストを尽くした印象。チコ(ちゃん)はプレー集を見た限りでは期待できそうな選手だが、適応の難しいJリーグでは果たして。
また、レンゾ・ロペスとチアゴ・アウベスの穴埋めとして、パワフルなアタッカーのドゥンガを獲得するとの噂も出ている。このチームには既に林というパワフルな男がいるが、彼のライバルになるのか、それとも共演してパワフルすぎるツートップを形成するのか。実現すれば楽しみだ。

一方で、攻撃面で代えの効かない主軸だった原川、東京五輪世代のユーティリティー原、昨季J1最大級のインパクトを残した森下を引き抜かれたのは痛い。特に原川はチームの心臓とも言うべき存在だっただけに、主力2人分が抜けたのと同程度の打撃がある。

そんなわけで、総合的に見ればプラマイゼロという印象になりそうだが、忘れてはいけない。朴一圭が完全移籍加入している。鳥栖の試合を見たことがあれば一目瞭然だと思うが、彼の存在は途轍もなく大きい。この移籍劇一つでサガン鳥栖の補強は成功に大きく傾き、残留確率が20%ほど上がったと言っても過言ではない。
フロントは可能な限りでベストを尽くしたのではないだろうか。ここまで来たら、毎年のように鳥栖を救い続けている監督・金明輝と、抜群の爆発力を持つ若きチームを信じて応援するしかない。そんな気がする。

ヴィッセル神戸

昨季、三浦淳宏が監督に就任してまもなく破竹の連勝がスタート。しかし対策を講じられると呆気なく連敗がスタート。ACLでは好成績を収めたものの、内容はリーグ戦とさほど変わらず、選手交代は入国制限をめぐる菅内閣並みに後手後手。若手の抜擢を評価する声も見られたが、あの抜擢は積極的抜擢(他にも選手がいる中で敢えて若手を起用した)というより消極的抜擢(若手しかいなかった)だったように見受けられた。

にもかかわらず監督続投。加えて明らかに力不足なコーチ陣まで発表され、ファン・サポーターからは早くも「どんと(Don't) 来い、残留争い」ムードが漂い始めた。
フロントは「昨季は時間的に守備しか教えられなかったが、今季は攻撃も高めていける」的なことを自信満々に語っていたそうだが、サポーターからは懐疑的な声ばかり続出している。
(そもそも、あのコーチ陣がイニエスタやフェルマーレンに何を指導するのだろう。私の頭の中のザキヤマが「逆だろうがよー!!!」と叫んでいる…)

監督とコーチ陣があの顔ぶれでは、豪華なはずの選手層も別物のように心許なくなる。では選手補強はどうか。これまた主力や準主力が複数人退団したとは思えない内容。井上潮音は起用法次第で強力な武器になれそうだが、監督が適切に起用できるかどうか。小林友希も素質は十分だが、即戦力クラスかは微妙なところ。2人とも優れた若手選手ではあるが、退団した選手たちの穴埋めには心許ない印象。(あと右サイドバックは今のまま行くつもりなのかな…)
頼みの綱は、藁にもすがる思いで獲得したリンコン。少し前までヴィニシウス(現レアル所属)と比較され、バルサとレアルが獲得を検討していた逸材であるが、フラメンゴではトラブルから干されており、20歳にして早くも「あの人は今」状態になりつつある問題児だ。とはいえ、本来の力を余すことなく発揮できればJリーグ最高クラスの戦力になるはず。ポジションはウイングか、センターフォワードか、はたまたドウグラスの後ろでセカンドトップを務めるか… 起用法…いや、その前に、監督が彼をしっかり扱えるかに注目が集まる。
また、これは個人的な意見だが、アンカーは無理に置かなくてもいいと思う。サンペールを置くと両脇の守備が、山口を置くとビルドアップが課題になってしまう。少なくともイニエスタがいない間は、サンペールと山口のダブルボランチで良いのでは。

来季はあの豪華メンバーで残留争い…なんてこともあり得なくはない。セレッソ同様、上手くいかなかった時の迅速かつ的確な監督交代を含め、フロントが金銭的に可能な範囲でベストを尽くせるかどうかが鍵を握りそう。

横浜FC

昨季は最下位を予想する識者もいた中で、僕は「下平隆宏のチームなのだから上手くいけば上位もあり得る」と予想したが、結果はどちらでもなかった。最終ラインからパスを繋ぐシステマチックで魅力的な戦術は川崎相手にも通用したが、点を取れない、個の力で負ける、スタミナが持たないといった弱点も露わになった。
一方で、「この試合では苦しくてもパスを繋ごう」との趣旨の指示を出したりと、下平隆宏が昨季を"テストの場"と位置付けていた印象も受けた。

彼が本気で結果にこだわるであろう来季は、昨季の課題がどこまで改善されるか。そして、"下平サッカー対策"に対する"対策"が整っているか。この2点が鍵になりそう。

なお来季に向けての補強は絶妙で、課題の前線にはタイプの異なる豪華な顔ぶれが揃った。抜群のフィジカルと高さを誇る元ブラジル代表のクレーべ、出場すればしっかり点を取る渡邉、スピードと身体能力が売りのジャーメイン、万能型の伊藤翔。他にも経験豊富なボランチの高橋や、起用法次第で非常に厄介な選手となる小川も加わっている。最終ラインに即戦力クラスの補強が無いのは懸念要素だが、まあ下平隆宏なら大丈夫だろう。たぶん。
日本屈指の名将のもとで、昨季燻っていた実力者たちが本領発揮となるか。選手全員が持てる力を存分に発揮できれば、上位進出も夢ではないと思う。来季、注目のチーム。

清水エスパルス

昨季は不安定すぎる欧州化計画が案の定頓挫。平岡暫定監督の想像以上の手腕もあり終盤は持ち直したが、Googleで「清水エスパルス」と入力すると候補に「清水エスパルス 弱い」と出てくるくらいには、不甲斐ないシーズンだった。

今オフは王国静岡の名誉挽回と言わんばかりにセンセーショナルな補強を実施。一躍Jリーグ界隈の話題をさらった。
まずは監督のロティーナ。洗練され安定したハイクオリティなサッカーはセレッソフロントにこそ嫌われたが、欧州流と結果の両立を目指す清水にはこの上ないスタイルである。
選手では、日本代表GKの権田、ポルトガルで得点ランク2位に立っていたチアゴ・サンタナ(彼の入団コメントはとても素敵なので是非)、ブラジル1部で不動のレギュラーとして活躍してきたサイドバックのマテウス(zoomの勘違いで一躍話題になった人)、J2で大活躍した"レレ"ことディサロ、ロティーナの教え子でもあるミスター万能・片山、東京五輪世代のユーティリーティー原、大分の守備の要だった鈴木、高い突破力を誇る中山、J1最高峰の上背を有する指宿。これら恐るべき陣容に加え、高精度キックでアシストを量産した西澤ら主力がほぼ全員残留している。戦力的に、昨季とは別チームと考えて良さそうだ。

来季はよほどのアクシデントでも無い限り残留できるだろう。むしろこの補強から見るに、フロントの目標は上位進出だと思われる。果たしてその目標は達成されるか。来年の今頃Googleで「清水エスパルス」と入力した時、後ろにはどんな言葉が付いてくるだろうか。誰もこのチームから目を離してはならぬ。(何様)

ベガルタ仙台

クエンカを獲得して躍進が期待された昨季は、そのクエンカの長期離脱で歯車が狂ってしまった。クエンカ復帰以降は調子が上がり始めたものの時すでに遅し。ピッチ外でも幾多のトラブルに見舞われ、ファン・サポーターにとっても悪魔のようなシーズンだったと思う。降格が無かったのは不幸中の幸いだ。

今季は推進力のある選手を2人獲得した。1人はマルティノス。昨季浦和で気を吐いたドリブラーは、劣勢に陥った際の単騎特攻で切り札になれるか。もう1人は昨季長崎で輝いた若きドリブラー氣田。手倉森流を良く知る彼の存在は、チームを作る上でもかなり重要になるだろう。
他にもクエンカ、シマオ、スウォビィクらJリーグ有数の外国籍選手が残留。総合的に見れば残留争いのライバルと同等の戦力が整っている印象を受ける。

一方で、昨季の失点シーンで多く見られたゴール前での守備の緩さ(具体的にはボールホルダーへの寄せの遅さ、甘さ)を改善できるような補強をしていないのは少し気がかり。終盤ではだいぶ改善された印象を受けたし、新監督も問題点は認識しているだろうし、所詮は"気がかり"レベルであるが。
それよりも不安なのは長沢やジャーメインら一芸に秀でた選手が退団したことによる前線の駒不足、決定力不足だ。ベールに包まれたガーナ人FWオッティが当たれば良いが…   そんなこんなで結局、チーム事情はJ1で最も厳しい部類に入ってしまう。やはり金銭面に余裕が無いのだろうか…

だが、頼みの綱と言っては何だが、久方ぶりに手倉森誠が監督に復帰したのは心強い。戦術や選手の起用法には昔から賛否両論あるものの、手堅く結果を残すことにかけては信頼できる人物だ。来季は降格枠が4つあると言えど、このダジャレ好きなおじさんにはチームを残留させる手腕があるはずだ。ベガルタの経営規模からしても、これ以上ない人材だろう。彼が仙台の所属選手たちで構築できるベストな戦い方を見出し、選手1人1人が1試合1試合を粘り強く戦えば、降格を回避することは可能だと思う。

湘南ベルマーレ

昨季は大規模な補強の甲斐あって、サッカーの質が格段に高まった。特にインサイドハーフ茨田の活躍ぶりは目覚ましかった。他にも、スーパーセーブを連発した谷をはじめ畑や田中ら若手を積極起用したことを考慮すれば、最下位ではあったもののそこまでネガティブな印象はない。

だが今オフは主力の退団が相次いだ。東京五輪世代の鈴木と齊藤は海外挑戦なので致し方ないが、替えの効かない主軸だった坂と金子を同カテゴリーのクラブに放出したのは痛恨。彼らの代役を獲得していないことから「来季は4バックにするのでは」との見方もあるが、曹貴裁時代から続く3バックをこのタイミングでやめるだろうか…?やめるとすれば、開幕までにどこまで練度を上げられるかが非常に重要になる。

一方、山本や名古、町野、ウェリントン、ウェリントン(2人目)といった実力者を獲得したのも事実。特に山本は攻守に大きく貢献できる知的な選手で、即戦力として申し分ない。テクニシャン名古とJ2で躍動した町野は攻撃にアクセントを加えそう。ウェリントンは困ったときの空中戦要員としても期待できる。ウェリントン(2人目)はよくわからないが優良外国人との噂。

来季は厳しい戦いになるだろうが、浮嶋敏のことだから複数のプランを練っているはず。どれか一つでもハマれば残留はグッと近づくだろう。仮にどれもハマらなければ、その時は走り勝つサッカーで目の前の1試合1試合を粘り強く戦い、ライバルを1ポイントでも上回ることに専念するだろう。「湘南のDNA」が試される1年になりそうだ。

徳島ヴォルティス

昨季はリカルド・ロドリゲスの下で培ってきた欧州流サッカーでようやくJ1昇格を決めた。正直、もっと早く昇格してほしかった。このタイミングでリカロド退任は厳しすぎる。

リカロド流を継承するべく、レアル下部組織やパナシナイコスで監督を務めたポジャートスを後任監督に招聘したが、手腕は未知数。不安は残る。

だがネガティブなニュースばかりではない。昨季J2得点ランク3位につけた大柄アタッカー垣田をはじめ、徳島を昇格に導いた岩尾ら主力はほぼ残留。
スタートダッシュに失敗した補強でも、川崎で才能の片鱗を見せた宮代や、昨季ヴェルディで印象的なプレーを何度も見せた藤田ら若手を獲得した。他クラブと比較すると心細い印象は受けるが、J1で何か起こしてくれそうな選手たちが大勢揃っている。

要するに、補強の質は高いが、抜けた戦力(というより監督)も大きい。その点で大分と似た印象を受ける。来季の徳島が昨季の清水のように新監督の下で苦しむか、あるいは2018年の大分のように想定外の躍進を見せるか。こればかりはチョコレート箱のようなもので、蓋を開けてみなければコメントしようがない。とりあえず、開幕戦まで待ってみよう。

アビスパ福岡

名将長谷部茂利の下、鮮烈な急加速を見せて一気にJ1昇格。さすがとしか言いようがない。徳島と比較されて戦術に難癖をつけられる光景も目にしたが、サッカーに絶対的な正解はない。堅守速攻を掲げ、効率的に、とにかく結果にこだわる。そういうチームがあってもいいじゃないか(声:松重豊)。
個人的にも福岡の試合はいくつか見たが、批判されるようなサッカーではなかったと思う。とても合理的だが脳筋フットボールでもない、現代のサッカーという印象を受けた。

今オフはサロモンソンをキープしたり、奈良、ブルーノ・メンデス、渡、杉本、宮、志知といったJ1経験のある実力者たちを獲得したりと的確な強化を図っている。特に奈良の加入は大きい。J1経験豊富な実力者が名将の下でポテンシャルを存分に発揮すれば、間違いなく強力な戦力になるだろう。それと、ベルギー人のクルークスはどんな選手なのだろう。期待に胸が膨らむ。

ところが、来季こそはJ1に残留できそうと思わせておいて、遠野、松本、上島、セランテスらが退団。特に、レンタルだったとはいえ急浮上の原動力になったボランチ松本と、前線の選手を補強するために契約を解除されたGKセランテスの退団が痛い。後釜に誰を据えるにせよ、他クラブと比較してボランチとGKがワンランク弱い印象は否めない。昨季のサッカーを継続するならば、いっそう看過できない弱点になりそう。

特にGKに関しては、最後にJ1を戦ったシーズンにも泣かされた記憶がある。最後の砦は一人で失点を増減させてしまう重要なポジションだ。名将に何かしらのプランがあることを期待したい。

おわりに 来季のJ1について

昨季は降格がなく、昇格はあった。ゆえにチーム数が増え、来季はそれを調整するべく4チームが自動降格する。

例年ならば18チーム中2チーム(下位11%)が自動降格していたところを、来季は20チーム中4チーム(下位20%)が自動降格する。降格リスクは単純計算で約2倍。
降格のなかった昨季はルーキーの積極起用や全体的な守備の雑さが目立ったが、来季は無難なスタメンと最後までしぶとく粘る整理された守備がベースになりそう。

J1は毎年のように僅差での争いが繰り広げられるが、このようなわけで来季はとりわけ過酷なシーズンになるだろう。例年ならば影響しないような僅かな差が天国と地獄を分けかねない。
だからこそ監督には、普段の倍"落とし穴"が大きいことを念頭におきつつも冷静に戦略・戦術を練り、選手たちが過敏にならないようサポートするマネジメントスキルが求められるだろうし、
選手には、勝敗は無論のことデュエルやキック精度やコンディショニングに例年以上にこだわる姿勢と、一戦一戦を全力で戦い抜くメンタリティが必要になるだろうし、
ファン・サポーターには、コロナ禍に過酷なシーズンを迎える選手たちへ、現地でも現地以外でも熱い応援(ルールに則ったもの)を送ることが求められるだろう。

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映画「フォレスト・ガンプ」に、こんな名ゼリフがある。

"人生はチョコレート箱のようなもの。開けてみるまでわからない"

Jリーグも同じだと思う。展望を長々と書いておいてアレだが、ぶっちゃけた話、開幕するまではどうなるかイマイチわからない。そもそも、シーズン終盤になっても今後の展開がわからなかったりするのがJリーグ。「世界一何が起きるかわからないリーグ」と言っても過言ではない。
なので、開幕前から絶望的な気持ちになったり、意見の合わない人と喧嘩したりするのは不毛だと思う。できれば、明るい気持ちで開幕を待ちたいところ。


小売業最大手ウォルマートの創業者サム・ウォルトンは、こんな言葉を残している。

"Celebrate your success and find humor in your failures. Don't take yourself so seriously. Loosen up and everyone around you will loosen up. Have fun and always show enthusiasm. When all else fails, put on a costume and sing a silly song."
(成功を喜び、失敗の中にユーモアを見出しなさい。あまり真剣に考えすぎてはいけない。リラックスしなさい。そうすれば、周りの人も皆リラックスするだろう。楽しみ、いつも熱意を示しなさい。上手くいかないときには、衣装を着てバカげた歌を歌いなさい。)

コロナ禍で皆、思っている以上に心が擦り減っていると思う。加えて、史上最も過酷になるであろう来季は、贔屓チームがよほど順調でない限り例年以上のストレスが溜まるだろう。
もしストレス過多でファン・サポーターの心が折れてしまい、Jリーグを観ることすら出来なくなれば、自身にとっても周りの人々にとっても、クラブにとってもリーグにとっても損失になる。誰も得をしない。
だからこそ、熱くなりつつも無理をしすぎず、悩みすぎず落ち込みすぎず、前を向いて適度にリラックスすることが大切だと思う。

お金に余裕のある方はもし良かったら。本の購入に充てます。