幼い頃からサッカーの戦術を教えるべきか?

タイトルの内容は、サッカー教育に携わる人の間でよく議論になっている。

「幼いうちはとにかくサッカーを楽しんでほしい。難しいことを教えるのは中学あるいは高校からでよい」
vs
「幼い頃から戦術やポジショニングを指導しなければ、脳筋になる」

日本ではチームによって様々な印象があるが、海外では国の方針で徹底的にどちらかに偏っている印象がある。前者の例としてはスペイン、後者はデンマークが有名だろうか。
そして、結論から言えば、それらの国の間に明白な差があるわけではない。つまり、どちらが正解かは断言できないのだ。

両者のハイブリッド、すなわち、楽しく戦術やポジショニングを教えることが至高なのだろう。これさえできれば、子どもたちはサッカーの奥深さを早い段階で知ることができ、しかしサッカーを嫌いになることはない。


ここで、戦術を教えることに反対している人の理屈を紹介しよう。彼らは
「自分で考えてプレーできることに惹かれてサッカーをやらせているのだから、戦術で縛ってほしくない」 と言う。
しかし、そもそもサッカーの戦術はアメフトや野球のそれとは違い、選手の一挙手一投足を縛るものではない。あくまでも基本的な攻め方・守り方を定めているだけで、あとは選手の自由だ。戦術を無視した方がよいと判断した上で無視すれば、怒られない。

よって、戦術やポジショニングなど、感覚よりも理屈に近いことを教えること自体は、決して悪いことではないと思う。 子どもを将来プロにするつもりがなくても、サッカーの戦術やポジショニングを学ぶこと自体が知的な精神活動であるため、子どもの成長にとって有益である。
問題は、それらを面白く教えることが非常に難しく、大抵の子どもは「つまんない」「いいから試合させてよ」とダダをこねてしまうことだ。


だから僕は思う。地上波サッカー番組で、戦術をもっと解説してほしい。
例えばやべっちFCは、日本のサッカー少年なら誰もが見ている番組だ。日本一録画されているスポーツ番組だったりする。
しかし、この番組はバラエティ色が強く、あまり難しい話をしない。だからこそ子どもに人気なのかもしれないが、おそらくやべっちFCだけ見ていてもサッカーの深い部分に詳しくなることはない。

子どもに、本当にサッカーに詳しくなって欲しいと思ったら、
スーパーサッカー (データや戦術をやべっちFCよりも少し詳しく解説している)
サッカーアース (楽しさ×深さ という観点で見れば間違いなく日本一のサッカー番組)
Jリーグタイム (少し退屈だがNHKならではの正確な解説を聞ける。ただし解説者にもよる)

あたりを見せた方がいいのではないか。大半の子はマニアックなサッカー番組には飽きてしまうだろうが、この3つなら、飽きない。
これらを見て「もっと詳しくなりたい」と言い出したら、そこから専門的な番組や雑誌やサイトを見せればいいと思う。

それから、ゴールデンタイムにサッカー専門番組を放送したら面白いのでは? と考えている。あまりマニアックなものではなく、しかし軽すぎず。それこそサッカーアースのような番組を。
視聴率が5%にも届かないバラエティが氾濫している今のゴールデンタイムならば、十分勝負できるだろう。特に火曜日は穴場だ。(本当は金曜日が酷いのだが、試合から間が空きすぎる。)

この国にはサッカー日本代表しか観ない人が多いが、そもそも、サッカーに全く興味がない人は代表戦すら観ない。
つまり、国民の5割はサッカーに多少なりとも興味があると考えていいだろう。
彼らの何割かでも取り込めれば、その番組はビッグコンテンツになれる。

Jリーグと海外サッカーのハイライト、そこに戦術的な解説を組み込んだサッカー総合番組を、是非とも作ってほしい。
それをゴールデンタイムに放送すれば、軽薄な知識で日本代表やJリーグにケチをつける人が大幅に減るだろうし、Jリーグに興味を持つ人が出てくることも期待できる。
そしてこれは、地域振興の手助けにもなる。

日本のマスメディアはサッカーを過小評価し、なるべく露出させまいと努力している印象があるが、そんなことをしていたらこの国は世界から置いていかれる。そういう時代だ。サッカー不毛の地・アメリカですらサッカーが盛り上がっている時代。(なおアメリカのマスメディアもサッカーを冷遇し現地ファンから批判されている模様。どこも既得権益にしがみつくのは一緒。)

ここいらで思い切って、パラダイムシフトを計ってみてはいかがだろうか。

話がだいぶ大きくなったのでまとめる。
幼い頃から戦術を教えること自体は良いことだ。しかしそのせいでサッカーを嫌いになる子が出てくるかもしれない。それゆえ、戦術を楽しく教えることが大切だ。しかしそれは難しい。出来ないコーチも多いだろう。だからこそ、その道のプロが集まって「楽しみながらサッカーに詳しくなれる」番組を作り、子どもがリアルタイムで観られる時間帯に全国放送してほしいという主張だ。

In the education of children there is nothing like alluring the interest and affection, otherwise you only make so many asses laden with books.
(意訳) 子どもの教育においては、興味と愛着を持たせることが最も大切である。そうでなければ、本を背負っただけのロバを大量に生産することになる。
モンテーニュ (フランスの哲学者)


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