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エッセイ

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2020年5月の記事一覧

女優・芳根京子に(間接的に)命を救われた話

昨年10月の夜7時。 うつろな目をした僕は、つり革にぶら下がるようにしてJR東海道線に揺られていた。ガタガタと響く走行音がやけに遠くに聞こえる。 この日、僕は会社でやらかした。といっても仕事でミスをしたのではない。 「はぁ〜、もうこんなのありえな〜い。」 と声に出してしまったのだ。 思い描いていたのと違う会社でのキャリア、そんな会社を選んでしまった自分、見つからない今以上の転職先… 悩む日々に心を蝕まれていた。当時SNSで悪質な嫌がらせや誹謗中傷を受けていたことも手伝って

ハーランドからの2億円

(注) 想像力を働かせてお読みください 眠い。まだ昼なのに。昨夜遅くまでドルトムントvsシャルケを観ていたせいだ。 不快感を伴う眠気だ。このまま椅子に座っていてもイライラするだけだ。そう思い、僕は散歩をすることにした。 歩いていると、いつのまにか母校の近くまで来ていた。都内の大学にしては広く、緑豊かなキャンパスだ。 ノスタルジーに浸りたくなった僕は、学生時代によく友人と昼食を取ったエリアに向かった。 古びた横長の校舎の前に、長方形の空き地がある。その空き地を囲むよう

白く小さな女の子

本日、僕は祖父母の家に行った。 もうすぐマスクが尽きるというので、うちの在庫を10枚ほど届けに。 さほど遠くないので、西日ノ直撃ニモ負ケズ、坂道ニモ負ケズに歩く。 僕がウイルスを持っていると危険なので、到着したら粛々とマスクを渡し、会話は必要最小限に留める。 「マスク持ってきたよ」「ありがとうねえ」 そして帰路に着く。 …といきたいところだが、この家にはそれを阻む女の子がいる。白猫のユキちゃん(仮名)3歳。立派な大人に相当する年齢ではあるが、活動内容は幼児そのものなので、