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投票にいった日のこと

7月9日土曜日。息子の月は朝寝を楽しみ7時半に目覚める。おとさんはまだ寝ている。私はなんだか仕事の疲れと昨日の奈良での事件の衝撃とをひきずって動く気がしない。月をなでまわして迷惑がられていたらおとさんが起きてきた。

ゆっくりと朝食の支度をし、洗濯機のスイッチをいれる。3人で黙々とご飯を食べる。うん、なんてことのないいつもの1日の始まり。

月は家ではYou Tubeをみるのがのんびりリラックス。解説してくれたり、ツッコミをいれたりにぎやかだとエネルギーチャージされたなのバロメータになる。うん、いい調子。

おとさんは電子音が苦手。月が元気になる横でどんどんおとさんのエネルギーが落ちていくのが目に見える。こりゃ早めに2人を離さねば。期日前投票へ行こうと思いながら、お皿を洗い終え、洗濯物を干そうと思ったら、ザーと雨の音。

ありゃあ。昨日からテレビはもちろんスマホのニュースも見てなくて天気予報のチェックをしていなかった。雨がこんなにふるとは。

「これだ」とおとさん。「今日の不調はこの気圧の変化だ」そうおとさんは気圧の変化に弱いのだ。どんよりだるくて偏頭痛がひどいらしい。今日は特にひどいから迷いに迷って珍しく欠勤。

午後の月の整体を済ませたら実家へ行くのを楽しみにしていた月はがっかり。私の父と月は祖父と孫というより親友なのだ。月とおとさんが一緒にいたら、2人して元気がなくなるのが目に見える。そして私も2人の間で元気がすいとられる。それではと、父に頼んで月だけ実家へ置いていくことにする。これで月もおとさんも安心。私も安心。

お昼をすませ、整体へ。1時間かけて車を走らせる。先日怒りに動揺し、後ろをぶつけた我が愛車は入院中。代車で行かねばならない。カーナビに目的地登録。ちょっぴり緊張していざ出発。

「ほな案内はじめまっせー」とゆるい声のおっちゃんが案内してくれて、一気に脱力してもうた。っていうんでなんだかゆるやか関西モードで1時間。ついたら、「途中4回くらいもうあかんかと思ったわー」とカーナビのおっちゃんに言われた。すんません。大きなお世話や。

月の体を整えながら選挙トーク。

「明日は投票ですね」「投票行ってます?ぼくなんか10年1度も行ってません」

どうリアクションしていいものかわからず、ハハハと空笑い。「投票はいってますね」とだけ答える。

「僕は1度だけ投票に行って誰に入れたか覚えてます」

このトークはまだ続くんだねと思いながら、ゆるゆると相槌を打つ。

「アントニオ猪木って書いたんです。当選しました!僕の1票が役に立った!」

うん、よかった。元気があればなんでもできるもん。うん、元気出す。

このトークはさっぱりわからなかった。月も困ったようで、話題を変えてくれた。学校の成績の話。ありがとう月。でも、その話題も返事に困るぞ母は。

ま、いろいろ整体を教わって、わりといい調子に進んでいるのに安心して実家へ向かう。雨はやんできた。

月はいそいそと親友のもとへ。母さんには見向きもしない。愛する母さんにつれないぞ。でも母さんは眠くてたまらん。おとさんのもとに帰る。

おとさんはわりと元気。外から

「こちらは感染症です」と聞こえる。さわやかな女性の感染症。感染症予防の話かと思ったら、「こちらは参政党です」と言っていた。聞こえたんだもの。本当に。

そんなアホ話をしたら期日前投票に行こうってなりまして、おとさんに運転してもらって投票に行く。着いたら、雨がざんざかざん。なーにもこんな日に来なくてもいいじゃんねと2人でぼやきながら会場へ。

けっこう人が来ていて並んでいた。一人一人に丁寧に迅速に説明をして投票用紙と入場券を渡してくれる担当者さんは、入場券を指しながら、こちらに記入したら、投票箱に入れて、比例区でこちらを渡してくださいと投票券を指した。1日何度この説明を繰り返したのだろう。ばぐっちゃいましたね。大丈夫です。言いたいことはわかります。お互いに中途半端な笑いを交わし、投票用紙を手にして、さ~て誰の名前を書こうか再度悩む。

もう一度候補者の名前を眺めて記入して投票箱へ。なんとなく緊張する。

次は比例区。見たことのない政党がいくつかあってびっくりして、しばらく見入ってしまった。悩んで記入して振り返ったら待ってる人がいた。ごめんなさい。投票箱へ入れてドキドキしながら投票済み証明書をもらって帰る。中学生が描いた絵がさわやかだ。外はザンザンザカザカこれでもかと雨が降っている。雷もゴロゴロ。

おとさんと簡単な夕飯をすませる。月は実家に泊まらせてもらうことになった。うれしそうな姿がうかぶ。おとさんは静かだねえって言いながらのんびり。私もそうだねって言いながら、ちょっと寂しい。もう月は中学生だというのに。

月が成人式を迎える頃に今回の選挙の結果が意味することがみんなの目に見えることになるだろう。

どんな世の中になっているだろう。多様性が認められている?経済格差は?福祉や教育は?エネルギー問題は?外交は?国内産業は?環境問題は?それからそれから。

なによりみんなみんな笑って暮らせているだろうか。顔で笑って心で泣いてるんじゃなくて、ほほえみ交わし合って、声高らかにアッハッハと笑って暮らせているだろうか。

不信や不満や不安に包まれて恨んだり憎んだり攻撃し合ったりしていませんように。

すべての命に敬意を。尊厳のある死と豊かなる生を。

今日のような他愛もないささやかなあたりまえの日常がつながってみんな幸せな瞬間を味わえますように。信頼に包まれて安心して暮らせますように。


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