ChatGPTを用いた英文エッセイの自動添削
最近のAIのひとつ、ChatGPTを用いると、英文エッセイを自動で添削できることが知られています。TOEFLなど英語の資格試験で出題されるライティングの設問演習を、どうやって授業で取り入れたらよいか考えてみました。
※この記事を書いている時点ではChatGPTは無料の研究用の試用期間中です。今後有料となる可能性があります。使用者数に制限があります。教育用途として開放されていないため、あくまで試行として考えるとよいでしょう。APIはまだ公開されていません(2023/1/20)。またここでは結果として出力された英文が自然な英文であると仮定します。
ChatGPT以外にも様々な言語モデル系のAIシステムがありますし、これから登場するところですが、原稿執筆時時点ではChatGPTが特に有力な言語関連AIとみなされています。
本記事は、こちらの記事を参考にしています。
https://note.com/sangmin/n/n67ed2214b741
ChatGPT研究所さんの記事にも詳しい解説が日本語で載っていました。
https://chatgpt-lab.com/n/nf09d9988f9a7
TOEFLのライティング問題(日常生活に関する一般的なお題に対し300ワードほどで書くもの)の解答を自動添削するとします。
1.添削したい英文を用意し、
2.ChatGPT(https://chat.openai.com/chat)に入り(初回はアカウントの登録が必要)、以下のフォーマットで自動添削を行います。
日本人が書いた英語のエッセイです。このエッセイをみて、直すべき点を修正してください。直した点を表にし、なぜそのように直したか説明してください。エッセイ全体をCEFRで評価してください。エッセイ全体を10点満点で評価するとしたら何点ですか。
エッセイ:
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3.ChatGPTの自動採点の結果を確認します。
授業でアクティビティに取り入れる場合、注意点は二つです。
A.学習にならないタスクは避ける(頭を使わせる)
B.動機づけを維持する
A.学習にならないタスクとは、学生が何の学習にもかかわらず結果のエッセイのみ提出することを指します。例えば、学生が日本語で文章を書き、自動翻訳して、ChatGPTを通して出来の良い英文に仕上げるとか、ChatGPTに英文自体を書いてもらうとか、修正の理由を読まず修正された英文のみを提出するといったことです。
学生が、自らエッセイの作成と校正作業に関与すれば、タスクとして成立します。例えばペアワークをして、互いに相手のエッセイの修正点を指摘しあうなどが考えられます。
B.動機づけを維持するためには、外的要因、内的要因などを満たすとよいでしょう。例えば、評価に含めたり、観衆を設定しプレゼンテーションをするなどすることが考えられます。あるいは、評価をTOEFL等の資格試験の評価に合わせるなどしてもよいでしょう。
以上を踏まえて、1-3に続けて、例えば次のようなタスクを考えます。
4. ペアを組み、ピアティーチングの時間を設ける。二人ないし三人でエッセイの自動採点の結果を共有し、ChatGPTの指摘を参考に、他者のエッセイの間違っている点、良い点などを言い合い、まとめる。
5.クラス全体でプレゼンテーションを行う。書いたエッセイ、修正箇所、評点、友達の指摘をすべて合わせて発表する。
あるいは、オンライン上のタスクの場合、次のようにもできるかもしれません。
4. 掲示板上で、クラスごとに、自分が書いたエッセイとChatGPTの指摘・評価を投稿する。
5.次の週の授業で、他人の投稿(エッセイ、自動採点の結果・評価)を見て、さらにコメントを加えて投稿する。
いずれにしても、自動採点の後のアクティビティが、学習の機会として重要になると思われます。ChatGPTの自動採点がどこまで信頼できるものか、毎回結果が変わる点をどうとらえるかなど課題はありますが、教師の手を介した指導が重要になりそうです。
自分で資格試験の勉強のためなど、自主的に学習を行う場合、A.B.を考える必要はありません。
設問に対する英文を作成し、自動採点を行ったうえで、以下の点をみてみましょう。
1.どんな修正が指摘されたか(文法上の問題、表現上の問題、自然でない表現、複雑すぎる表現など)
2.指摘されていない点で問題はないか(一貫性、全体の文章構成(はじめに、本文、適切な例、適切な理由や論証、結論)、語彙の難易度、文章の長さ・複雑さ、明晰さなど)
3.C1、C2レベルのエッセイにChatGPTに自動修正させ(「エッセイをCEFRレベルC1で書き直してください。」)、語句や表現の違いを確認する。
なお、比較として、DeepL Writeを使った自動添削を載せておきます。
DeepL Writeの場合、三単現のsや冠詞といった細かな修正点が分かります。自然な英文の選択肢も出ますので、自主学習として個人で英作文の学習をする場合にはこちらの方が便利でしょう。ただし、ChatGPTと同じく、文章の構成や一貫性、他人へのわかりやすさといった観点は、自主学習では難しいところです。