![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50201018/rectangle_large_type_2_a6b33b5287b179cec6b9e936a9132b39.jpeg?width=1200)
辰巳リカvs伊藤麻希について個人的に思うことなど
明日というかもう今日であるが、東京女子プロレスの後楽園ホール大会が開催される。後楽園は年3回ペースだったのに今年は上半期で早くも3回目。それだけ団体に勢いがあるということだろう。
この4.17後楽園、目玉は辰巳リカvs伊藤麻希のプリンセス・オブ・プリンセス王座戦だ。AEW参戦を経ていよいよ伊藤ちゃんがベルトを巻くかどうかというところ。機運としてはかなり高まっていると言っていいんじゃないか。
アイドルがプロレスデビューして、グループを「クビ」になってクビドルを名乗り、しかし今や完全なトップ選手だ。いつベルトを獲ってもおかしくないというか、東京女子プロレスのファンなら誰も彼女の実力を疑わない。いや本当によくここまできた。
もしかしたら6月のさいたまスーパーアリーナ大会で防衛戦をやるかもしれないのだ。アメリカ進出もそうだが、LinQ時代には考えられなかった。というかLinQの出世頭なのか伊藤ちゃん。
まあしかし、それを言うならリカだってDPGから、ケンドー・リリコからよくここまできた。やっとのことで掴んだベルトをここで手離すわけにはいかない。今では当然に思えるけど、ケガで長期欠場した時によくやめなかったと思う。なんというか東京女子プロレスの選手は、こっちが思ってる以上に腹括ってプロレスやってるんだろう。
伊藤麻希プリプリ王座戴冠へ、機は熟したように見える。しかしそこで「まだ早い」となるとして、それを言うのは辰巳リカがふさわしいという感じもある。
思い出すのは2017年7月、赤坂サカスのイベント「デリシャカス」で行なわれた東京女子プロレスの試合だ。リカと伊藤の初対決。個人的に団体ベストバウトの一つだと思っている。
伊藤は前年12月にデビューして、まだ初勝利をあげていない時だった(初勝利は8月)。体も技術もまだまだ。とにかくテンションでなんとかするしかなかった。そのテンションが凄まじくて、マイクアピールも含め観客には大変なインパクトを残していたんだけれども。
誰から見ても「なんだコイツは」という面白さが伊藤麻希にはあった。対戦相手にとっても「なんだコイツは」だ。しかしそんな伊藤に、リカはテンションで対抗したのだった。「技術が違う」みたいな上から目線は性に合わないんだろう。
赤坂サカスの屋外リング、メチャクチャな奇声を発して伊藤がボディスラムを連発する。投げられたリカも雄叫びをあげ、マットをバンバン叩いて気合いを入れて立ち上がる。叫ぶリカを叫びながら投げる伊藤。投げられてまた叫ぶリカ。やってることはボディスラムの連打で、基本中の基本みたいな攻防。なのに異常なテンション、とてつもない気合い、他のどこにもないグルーヴ感。上手いとか下手とかじゃない、これが東京女子プロレスなんだと、リングサイドで写真撮りながら思った。
敗れた伊藤はTBS社屋に向かって『水曜日のダウンタウン』に出たいとアピール。その気持ちを即興の歌にしたのだった。初期の伊藤は「試合には勝てないけど無茶なマイクアピールをするアイドル」でもあった。
リカはそんな伊藤に共鳴する部分があったのか。伊藤のテンションにテンションで対抗していったのだからタダモノじゃないと思った。黒音まほとのタッグでも試合後のコメントで急に叫び出したりして、取材しながらしばしば「この人はこの人で相当アレだな、いい意味で」と思わされた。ナチュラルに突発的に爆発できる人。それは彼女をオーディションから見ている劔樹人さんも言っていたことだ。
だから辰巳リカvs伊藤麻希のタイトルマッチとなると、これは他の組み合わせとはまったく違うタイプの試合になる気がする。もちろん2人とももう“若手”ではない。作戦、技術、試合運びといった要素は赤坂サカスでの試合とは比べものにならないだろう。でもギリギリの攻防の中で出る地金みたいな部分もやはり気になる。それはやっぱり、東京女子プロレスでしか見られないものになると思うのだ。
伊藤麻希がプリンセス・オブ・プリンセスのベルトを巻く時は、本人にとってだけでなく団体にとっても一つの節目になる。ずっとそう考えてきた。伊藤は東京女子プロレスがなかったらデビューしていなかったであろう選手で、東京女子プロレスでなければありえなかったようなキャリアを積んできたからだ。そういう選手がトップに立ったら、これはもう感動とかなんとかのレベルじゃなくて“歴史が変わる時”だろうと。
いよいよその瞬間が来るのか。しかしそういうシチュエーションで、テンションで伊藤を上回る辰巳リカというのも充分にあり得る話だ。「うわー辰巳リカもの凄え!」と、赤坂サカスをはじめ何度も思わされてきて、今回もそうなるような気もする。どちらが勝っても、そこで行なわれる闘いが東京女子プロレスだ。2021年4月17日に関しては、山下実優でも坂崎ユカでも中島翔子でもなく、この2人が誰よりも東京女子プロレス。本当によくここまできた。
※そういえば4月17日ってLinQお披露目から10周年の記念日なんですね。