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ファン・ウィジョという男に魅せられて。

2019.7.13 ガンバ大阪 - 清水エスパルス @パナソニックスタジアム吹田

降りしきる雨の中開催されたこの一戦は、これまで数々の試合を観戦してきた中でも自分にとって、かなり特別感のある一戦だった。

この約2年間、ガンバのエースを務めてきたファン・ウィジョがフランスのボルドーへ完全移籍することが試合開始以前に報じられ、ゲーム開催当日時点では両チームからの正式なリリースはされていなかったものの事実上、このゲームがガンバでの(ひとまずは)最後の勇姿であることはサポーター、スタジアムの大半の共通認識だった。

(結果的に、翌日に正式リリースとなった)

試合開始前から、独特な雰囲気というか、なんとか勝利で彼を送り出したい、なんとかサポーターから感謝の気持ちと、今後の活躍への応援を届けたいという空気感にスタジアムが包まれていて、とても感慨深いものがあった。

当の本人もアップの時点から、いつもの爽やかな柔らかい表情とは違い、いかにも気合満々で、今日は何が何でも決めてやるというオーラを全面に醸し出しいた。

お馴染みのチャントもこの日はいつも以上にスタジアムを響かせていた。

後にウィジョ自身がこのチャントが大好きだったと言っているのを見て、嬉しい気持ちになったな。

さて、そんな独特な雰囲気の中試合は始まり、前半はエスパルス相手になかなか攻めあぐねる展開が続いた。逆にいくつかピンチもあり、いくらウィジョやチーム、サポーターにとって特別な試合でも、そんな上手くはいかないもんだなーと前半はいかにも現実を見せられている様な気分であった。

後半に入り、雨も結構キツく降ることがあり、徐々にオープンな展開に。ウィジョ自身にも、いくつかチャンスがあったがなかなか決めきることができない。彼自身が点を取りたいという気持ちも、チームが取らせてあげたいという気持ちも伝わってくる。

前半から飛ばしに飛ばしていたウィジョにも後半半ばには疲れも見え始め、見ているこちらもキツいだろうなというのがヒシヒシ伝わってくる。

それでもこの日のウィジョは、絶対ゴールを取るという気持ちとアドレナリンで身体を突き動かしていた。何度も何度もゴールを取りに行くという牙剥き出しの姿勢は、まさに生粋のストライカー。その様に感動すら覚える。もちろんウィジョという選手は、身体も丈夫で背丈もあり、瞬発力もパワーもあるし、シュートの技術もあり、一級のストライカーであることは誰の目でもわかる。それに加えて、こういったゴールへの貪欲さや泥臭さ、前線からの献身的なプレス、そういった彼のサッカーへの姿勢がサポーターの心を魅了することは間違いない。

彼にとってのハイライトは80分のこの得意のコースからのシュート。

これは惜しくもポストに嫌われる。この瞬間の気持ちったら、もうやりどころがない・・・入っても良かったやん!!??空気読んでやって感じで(笑)


結局、この試合でのウィジョのゴールは見られなかったものの、矢島の劇的なゴールで1-0とし、なんとか門出を勝利で祝うことができた。

この日、ウィジョが翌日にリリースを控える中、先発でしかもフルで起用されたのは低迷するチーム状態にあったということを差し引いても、恒さんの粋を感じられるところでもある。もう正直見ていて、とっくにウィジョは限界が来てるのは見て取れた。


さて、この後がまたセンセーショナルな時間が待ち受けている。冒頭にも書いている様に、まだ正式には発表されていない為、この時点ではウィジョからは何とも言えない事情があった。

だけれども、実際にはここにいる皆がもうこれがJリーグでパナスタでガンバで見られる(いったん)最後の瞬間なんだということを理解していた。

故に、当初の予定どおりなのか、そのときの思いつきかは分からないが、幸いにもそのままお別れとなることなく、誰もが今日が最後だと確信をし、心を決め、彼の功労への感謝を伝え、今後の活躍を盛大に応援することをスタジアム全体で伝えることができた。

もう試合中からじーんと来てたし、この時には流石に涙腺が崩壊しかけた。


本当に感動的な瞬間に立ち会えたなと幸せな気分だったなと。

2017年のシーズン途中から加入したファン・ウィジョ選手は実際、ガンバでプレーしたのは約2年間で、そこまで長い期間滞在した訳ではない。

この短期間とも言える滞在期間で、ここまでサポーターに愛され、感謝され、チーム状態が苦しい中でもこうして満場一致で「頑張ってこい!」と背中を押し出してもらえる外国人選手はなかなかいない。

ここまで愛された一つの理由は、とりわけ昨年の18-19シーズンでの活躍が大きい。ガンバが一時期最下位に落ちるなど、正直J2落ちさえ覚悟をした最悪の状況の中で、幾度となくゴールを奪い、チームを救ってくれ、ウィジョがガンバの救世主であったことは間違いない。

ただそれだけが理由じゃないのは明らかで、繰り返すようだけども、そこには彼自身の真摯な人柄とサッカーとチームの勝利の為に全力を尽くし、泥臭く泥臭くゴールを奪う献身的な姿勢がサポーターのハートを魅了したからに違いない。

さて今週末は久々にホームのパナスタでリーグ戦が開催されるが、そこには言うまでもなく、当たり前の様に、もうウィジョの姿はない。

こうして選手とサポーターが共通の思い出を作ることができるっていうのはとても貴重な体験だなと改めて感じる。こういう体験をする為には、やっぱりサッカーは生で観戦するのが一番だなとつくづく。

DAZNにもすこぶるお世話になってるけど、やっぱり生でスタジアムで観るサッカーというのは全く別物なんですよね。サポーターの声や、選手の声・表情・仕草、ボールを蹴るインパクトの音、身体がぶつかる音、ゴールが決まった瞬間の高揚感(もしくは絶望感)、ああいう臨場感的なものはやっぱりテレビ越しでは伝わらない。それは今後技術がどう進化したって変わらぬ価値であり続けるだろうと。

ウィジョが抜けて1ヶ月も経たないうちに、宇佐美やパト、井手口らが立て続けにガンバに復帰し、またガンバは違う意味で面白いことになってきた。

最後にウィジョが感謝の言葉と残してくれた「ガンバはこの順位にいるチームじゃない」という言葉の通り、再びガンバの黄金期に入ってもらうことを切に願っております。

さぁウィジョよ、リーグ・アンで存分に暴れてくれーい!!!

本間にたくさんの感動をありがとう!
(またガンバに返ってきてくれてもいいんだからね)


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