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【#シロクマ文芸部】こびとの忘れもの
新しい年に向けて準備したはずなのにと、こびとが肩を落とす。こびとと暮らすようになって何ヶ月か経つが共に出かけていないことに気づき散歩に誘ってみたのだ。
最初はマフラーの中でウキウキとしていたのに急に元気がなくなる。
「どうしたの?」
「あれ」
小さな指で示す方向には真っ赤な紅葉があった。
「?」
「新しい年の準備し忘れちゃった」
「落ち葉ってこびとが落としていたの?」
「うん。春のために」
仕事に行っている間、ひとり家の中でなにをしているのだろうと思っていたが、季節の管理もしていたのか。小さいのに働き者だなあと人差し指で小さな頭を優しくなでた。
「忘れたおかげで私は楽しめる」
「?」
「冬にモミジが見れるなんて得をした」
「ホント?」
「うん」
モミジの下で一回転する。きゃっきゃっとこびとも笑う。ひとしきり真っ赤な紅葉を愛た後、こびとに冬支度をお願いした。
パァァっと舞い散る真っ赤な紅葉。降り積もる紅葉をサクサク踏む。こびともピョンと飛び出し紅葉の山の上でコロコロする。
「新しい年の支度を忘れてくれたおかげで落ち葉遊びができました。ありがとう」
「へへへ。忘れるのもいいもんだね」
「全部完璧じゃないって楽しいのよ」
機嫌の治ったこびとと共に再び歩き出す。
遊んでかいた汗で少しヒヤリとする。こびとがマフラーの中でクシュっとくしゃみをした。帰ったらとっておきのカレルチャペックをこびとと楽しもう。
買い物に出かけたら真っ赤な紅葉を見つけました。初詣に行ったら黄色い銀杏の葉がまだ沢山落ちていました。
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今シーズンは落ち葉が遅かったなあと思ったら、この話が生まれました。
こびとがシロクマ文芸部に出るのは2回目です。
小牧幸助部長、今年もよろしくお願いします。