通ってこなかった名作を、これから通る
今更ながら、名作と呼ばれるものに手を出し始めた。
映画、小説、漫画など時代を超えて今でも多くの人に愛されている作品。
タイトルだけは聞いたことがあったり、その作品の重要なシーンの描写だけ見聞きしたことがあったりと、自らの意思でちゃんと最初から最後まで観たことのある作品が圧倒的に少ない。
名作と呼ばれるもののイメージとして、古臭く、特に映像作品なんかだと画そのものを受け付けない、といった印象から、わざわざ手を伸ばそうとは思えなかった。
エンタメは基本的に元ネタというものがある。
いままで観たことが無かった「不思議の海のナディア」を見始めたとき、オープニングのクレジットに「原案 海底二万里」という記述があることに気付き、そちらの方が気になるようになった。
海底二万里。
タイトルは知っている。海洋冒険物ということも、うっすらと知っている。
そういえば、小学校学年の頃に確か子供向け番組でアニメ化されたものを観た記憶があるけれど、でもあれは確か海底二万マイルというタイトルだったような?
そのときの内容については殆ど記憶にないけれど、ただ、なんだかとても面白かったという印象だけが強く残っていた。
せっかくなので、「海底二万里」を読んでみることにした。
図書館に行って探してみると、各出版社から色々な翻訳が出ている。そのから上下巻に分かれていた文庫本を借りた。
1870年にフランスで発表されたというこの作品。
19世紀ヨーロッパの社会情勢の記述と、当時の本に収録されていたという挿絵の雰囲気が相まって、読み進めていくうちにタイムスリップしたような感覚になる。
読み終えた感想としては、想像していたよりもずっと面白いと感じた。
とにかく、これをきかっけに今まで通ってこなかった所謂名作に手を出す日々が始まった。
映像や書籍など合わせると膨大にありすぎるので、基本的に書籍を中心に漁ってみることにした。
それでもたまに気になる作品については原作の書籍を読んだ後、映像化されたものを観たり、逆に映像作品から入って原作を辿るパターンもある。
また、作品の中では別の作品の話題が出てきたりして、そこから更に開拓先が派生する。
そんなわけで、基本的にネタに困る事はない。
むしろ、気になるどんどん作品が増えていってしまうため、優先順位を決めることの方が悩ましい。
そんななか、世界名作劇場と再び出会う。
自分が子供の頃に毎週観ていたテレビ番組で、まさに世界の名作をテーマに制作されたアニメシリーズ。
これを機に、記憶がうろ覚えのものや、タイトルだけ知っているもの、物語の重要なシーンのみ知っているものを、40代半ばに差し掛かった今の視点で観るとどう感じるのか興味が湧いた。
特に、物語の重要シーンのみを知っている作品の、その前後の文脈について知る事は、この機会を逃したら一生知らないまま過ごす事にもなりかねない。
たとえば、懐かしのアニメ特番などで毎回と言っていいほど取り上げられる作品「フランダースの犬」。
最後、ネロとパトラッシュが死んでしまうことは知っているけど、そこに至るまでの経緯をはっきりとは知らない。
プライムビデオで見放題になっていたため、毎日一話ずつ見てみることにした。
そして、何度も観てきたはずの問題のラストシーン。
全話見てきた今回は、当たり前ではあるけれど、いままでとは全く異なる感情で対面した。
見終えたあとのなんとも言えない余韻と折り合いをつけるため、更に原作の書籍を探して読むことになる。
そんな感じのことをここ一年間ぐらい繰り返している。
基本的に名作は入手し易いため、非常に経済的でもある。
書籍は大抵図書館に揃っているし、映像作品は配信サービスで見放題になっていることが多く、そのあたりのハードルが低いところが非常にありがたい。
当初はナディアを観るつもりだったのに、海底二万里をきっかけにそこから派生した名作書籍を数十作読むことになった。
ちなみに、ナディアは最初の数話以降、いまだ続きを観れていない。