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日本の美術館ももっとメッセージを

ここでは私の専門であるアート界に的を絞って書きます。

これまでも思ってきたことだが、日本はメッセージを出すことが上手い国ではない。それは今回の文化庁長官によるあまりに虚しいメッセージからも顕著だ。

この長官メッセージはひとまずここでは置いておいて、美術館に視点を移してみたい。

日本の美術館と海外の美術館。どちらも新型コロナウイルスで休館を余儀なくされているという状況では同じだ。ただ、その違いがあるとすれば、それは美術館からのメッセージがあるかどうかだろう。

例えば、メトロポリタン美術館は館長名義で長文のメッセージを公開している。

5000文字にもおよぶので詳細は割愛するが、その中には以下のような文言が見られる。

この偉大な機関とその素晴らしいコレクションを永続的に保護・保存し、良き市民であり、時代をリードする存在であり続けることを使命としており、不動の姿勢で臨んでる
当館のスタッフは当館の最大の財産であり、彼らの貢献に加え、多くの友人や支援者の方々の貢献に誇りと感謝を持って感謝している。

また、ニューヨーク近代美術館も休館にあたり、リリースのなかに館長のグレン・ラウリィのコメントを盛り込んだ。

MoMAにとって、地域社会の健康と安全ほど重要なものはない。私たちは、公共の利益に奉仕する市民機関としての責任を真剣に受け止めている。それを念頭に置いて、新型コロナウイルスの発生の影響を予測することがますます困難になってきているため、私たちはMoMAを一時的に閉鎖することを決定した。

さて、このような明確なメッセージを日本の美術館は出せているのだろうか? 事務的な「休館のお知らせ」を出しているところがほとんどで、下記の熊本市現代美術館のようなケースは例外だ。

かつて、この記事でも触れたが、日本の美術館は匿名性が非常に高い。館長の名前すらなかなか見つからないこともある。

こうした匿名性が高い性質は、今回のような美術館にとって「非常事態」とも言える状況においてもプラスにはならない。むしろ、明確なメッセージを出すことが、美術館とコミュニティのつながりを強くし、ファンを増やすことにもつながるのではないか。

顔が見える美術館が日本でも増えてほしいと切に願う。

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