美術館とUXの関係
ウェブ版「美術手帖」編集長の橋爪です。
さて、このたび光栄なことにnoteのCXOである深津貴之さんにインタビューする機会を得まして、大変示唆に富んだお話をうかがうことができました。
このインタビューではUX(User Experience)についても触れられていますが、そこから考えたことをつらつらと書き連ねます。
ご存じの方も多いと思いますが、ウェブ開発の世界では頻繁に出てくる言葉「UX」。これはその名の通り、「ユーザーがそのサービスで得られる体験」のことを指します。
私もウェブの編集者なので、「UX」と聞くとついウェブサイトのことをイメージしてしまうのですが、じつはこれ、リアルな場においても重要なことなんですよね。
これに気づかせてくれたのも深津さんでした。彼は業務として経理や法務以外のあらゆることを「UX」に関わるものとしてとらえており(厳密にはやや異なると思いますがご容赦ください)、「UX=ウェブサイトのUX」とだけ考えていた私にとっては、目から鱗が落ちるような感覚です。
美術館の世界でUXを考えてみる
では美術館の世界でUXを考えてみましょう。ユーザーが美術館のウェブサイトへアクセスしたときをスタートに、展覧会を見終わるまでをゴールに仮定します。
まず当然大事なのは、ウェブサイトのUXですね。わかりやすい要素で言うと
・メニュー位置の場所がわかりやすいか
・「今日開館しているのかどうか」がすぐわかるか
・展覧会情報へはアクセスしやすいか
・チケット予約がすぐできるか
などでしょうか。この時点でも、多くの美術館にとっては設計のハードルが高いと思われます。
ちなみに、深津さんはインタビューで「サイト構築ではまず、マスに最適化したものをつくるべき=スケールメリットを考えるべきなのに、多くのケースではそうなっていません」と語っていますが、それは的確な指摘です。海外の巨大美術館(メトロポリタン美術館やグッゲンハイム美術館、テート、ポンピドゥー・センターなど)のサイトを見てみてください。圧倒的にユーザーファーストであることがすぐ実感できると思います。
次にリアルな場でのUXについて。これがとても大事なはずですが、じつはあまり考えられていないのではないかと思ったのです。例えば......
・チケット売場はスムーズか
・展覧会会場までの動線や展示室内での動線は快適か?
・展示を撮影してシェアできるか(SNSの欲求を満たせるか?)
こうした展覧会に関するユーザー体験は当然考えられるべきですが、加えて
・トイレが綺麗
・休憩場所が確保しやすい
・ショップやカフェが利用しやすい場所にある
などの要素もユーザー(来館者)にとっては重要で(少なくとも私は重視します)、きちんと設計思想が行き届くべきなのでしょう。
サイトからリアルな場まで(スタートからゴールまで)、一貫してUX設計されている美術館はどれくらいあるのでしょうか?
コロナ時代で多くの人数を入れられないなか、来館者(ユーザー)一人ひとりの満足度を上げていくことは至上命題です。その時に大事なのが、こうしたUX設計と、その重要性が館内で共有されること。
今後は私も美術館を訪れるたびに、リアルな場でのUXについても観察していきたいと思います。皆さんはどう思われますか?
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