学校前のそろばん塾とお好み焼き
私が通っていた小学校の前にそろばん塾があった。村にある唯一の塾だった。私以外のクラス全員がそろばん塾に通っていた。独りぼっちで帰るのが嫌でそろばん塾に通いたかったが親が許してくれなかった。兄や姉がそろばん塾に通って得た成果が視力低下だという理由だった。皆が放課後楽しそうにそろばん塾に通っているのを羨まし見送った。
学校前のそろばん塾はお好み焼き屋も営業していた。時々兄や姉とお好み焼きを食べに行った。家で作るお好み焼きと違ってすごく美味しかった。食べ終わるのが悲しくなるほど美味しかった。鉄板の火をつけたまま底を残しつつ食べると最後に丸いおせんべいができる。まん丸のカリカリのおせんべいを作って兄や姉と夜道を帰りながらかじるのが最高に幸せだった。
20年近く前に休校になった小学校の前にある皆が学校前と呼んでいた店の前を通る度あの美味しかったおせんべいを思いだし食べたくなる。
大人になって一度おせんべいを作ってみたがあの時の美味しさも幸せも味わうことは出来なかった。