父とキュウリの酢の物
私の実家には広くはないが家族が食べる野菜くらいは収穫できる畑がある。子どもの頃は四季折々の様々な野菜を毎日毎日たくさん食べていた。当時はその贅沢な食生活に感謝することもなく野菜料理を食べていた。
夏になるとキュウリが毎日毎日たくさん収穫できる。キュウリは浅漬けにしたり、生でマヨネーズをつけて食べるのも美味しいが、一番好きなキュウリ料理は酢の物だ。キュウリを薄い輪切りにし軽く塩もみし水分を切る。スダチの酢と砂糖と少しの醤油をキュウリに和える。キュウリの酢の物の出来上がりだ。
母が作るキュウリの酢の物を父はこよなく愛している。美味しい美味しいと食べた後、残った甘酢を白いご飯にかけて口に流し込む。父はいつも「これほど美味い食べ物はない」と断言する。母は少し嬉しそうに微笑み、私達子どもは呆れ顔になる。
今私も時々キュウリの酢の物を作る。ご飯にかけて食べはしないが、いつも父の満足そうな顔と母の笑顔を思い出し幸せな気持ちになる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?