祈ること
熱を出し保育所を休んだ2歳の次男を当時家で塾をしていた夫が世話していた。お昼過ぎに夫から電話がかかってきた。「次男の便が黒いから心配だ仕事を休んで帰ってこい」と言う。私は「黒いときもあるだろ」と思いながら仕方なく上司にお願いし休暇を取り帰宅した。かかりつけの病院へ行く。持って行った便を見た医師がすぐ県立病院に紹介状を書いた。県立病院で超音波をとり腸重積が判明。腸重積とは小腸が大腸に入り込む病気で小腸が大腸に締め付けられ壊死してしまう危険な病気だ。1時間以内に小腸が抜けないと開腹手術をすると言われた。肛門から液体を入れその圧力で小腸を大腸から出そうとするがなかなか出ない。次男の恐ろしいほどの泣き声が病院の廊下に響き渡る。時計の針がいつもより早く進む気がした。50分が過ぎ医者が「あと5分して駄目なら開腹手術します」と言った。
その時生まれて初めて真剣に祈りを捧げた。
その後最後の手段として医者は次男に筋弛緩剤を打ち、力の抜けた次男の小腸は大腸から奇跡的に抜けた。
祈ったから救われたのではなく医者の判断が次男を救ってくれた。しかし今もあの病院の廊下で祈った瞬間を忘れることはできない。医者に感謝するとともに目に見えない何かに感謝している。