大掃除と祖父の思い出
年末の大掃除が近づくと思い出す情景がある。着物を着た祖父の姿だ。祖父はきれい好きで、よく箒(ほうき)で掃き掃除をしていた。私が庭を箒で掃いていると「それでは駄目だ」といつも箒を取り上げられた。どこが駄目なのかよく分からないまま、祖父が庭を掃いている姿をじっと見ていた。
客間と呼ばれる祖父が大切にしていた部屋があった。祖父から客間を雑巾がけするように頼まれた。雑巾を絞り畳を拭いた。以前祖父に畳の目に沿って丁寧に拭くように言われたので、その通り雑巾をかけた。祖父は何も言わずにじっと見ていた。祖父の前で掃除をすることは大きな緊張を伴った。祖父から常に合格点は貰えなかった。
中学校の掃除の時間、その日は校庭の掃除当番だった。少し恐い男の先生と一緒に大
きな箒を持ち、落ち葉を掃いていた。掃除が終わる頃、先生が「箒の掃き方が上手だ
な」と声をかけてくれた。祖父の厳しい掃除の手ほどきが、私の中で実っていたんだ
と嬉しかった。