100年前から拡大し続けるシュタイナー教育がAI時代に最適なワケ 2
前回、シュタイナー教育はAIのちょうど相反する位置にあると書きました。
表裏一体というように、テクノロジーの進化発展に比例して、環境問題からも自然回帰への動きも強まっていることは多くの方が感じているのではないかと思います。
イメージ感覚で言うとテクノロジーはひんやりと冷たくテキパキとしていて、自然と結びついた暮らしや感覚を育む環境は温かく包まれてホッとする感じがしませんか。
AI時代には、もっともっと優しくて、ゆったりとリラックスした時間や、ほとばしる情熱を持って活き活きと創造的で在ることのバランス感覚を育てることが何より大切なことのように思えるのです。
わが家はシュタイナーに出会う前の2009年からテレビなし生活で、少し前まではテレビがないと言うととても驚かれました。
インターネットの普及にコロナ期間が王手といった感じで、一気に生き方のシンプル化が進んだ今は『好んで選択した情報のみを入れる』ノイズを減らした暮らしが好まれる方向に進みました。
シンプルな暮らしによる恩恵は、人間らしい時間を1日の中にどれだけ持てるのかということにもなる。
AIとは違う、人間だけが持つ力を発揮できる範囲を守ること。
つまり、ゆっくりと感情を味わうこと。しあわせはカタチではなく感じるものですよね。
原始的な豊かさを守ることこそが、人がホッとして幸せを感じられる瞬間なのだと思うのです。
シュタイナー教育では、幼児から大人まで、ぼーーーーーっとする時間を積極的に持てるようにしてくださいね、という、この生き急いだ時代に「え?いいの?」と反応してしまいそうなことを保護者に伝えてくれます。
ぼーっとする。
お昼寝をする。
どんな年齢でも、1日のリズムの中で盛り上がったエネルギーを落ち着かせる時間は健全な心身のために優先する。
早く寝て、早起きして、活動して、お昼寝、また活動、という呼吸をするような、または広がってはしぼんで、という流れるような自然界のリズム。
季節の移ろいのように、1日1日を、人生そのものを味わいながら送ることは、時間をかけてひとりの人間の体と感情と思考力を熟成させていく。
そんなバイオリズムに基づいた指針があるのがシュタイナー教育なのです。
テクノロジー
効率
生産性
とても大切なことですが、生きるということは、一見ムダそうに見えることも大切なんだとwholeな視点に立ち帰らせてもらえる場。
そして、常に与えられた答えではなく、自分だけの答えを自ら導き出す力を育てる、誰よりも自分がそう在れるように意図し、努力し、リラックスも忘れない大人が、自分なりの世界を創っていこうとする常に現在進行形な場がシュタイナー教育では感じられるのです。
一方向だけに進むと、人はどこかでパンクします。
しなやかな心の強さを育むことは、激動の時代にひとり一個持っておきたい宝物ではないでしょうか。
柳に雪折れなし。
テクノロジーと共存したとき、その勢いに押し潰されない、しなやかな人間性を育むヒントが、100年前に体系化され、教育現場で実践され、実績を積んできたシュタイナー教育にたくさん学ぶことができると思うのです。
2020年7月15日
はしのちか