003|ファンから教わった、底力の正体
10/26(火)時点で、4勝4敗。
これからの数週間が、序盤の勝負どころになるのは間違いありません。
足の状態もずいぶん良くなりました。少しずつ出場できる時間も増えてきています。
ここが踏ん張りどころだと思った時、一番の力になるのはファンの存在です。実際、
「最高の自分に手が届くのは、誰かのために覚悟を決めた時だ」
ということを、あるファンの方々から教わりました。
今回はその当時のことを振り返ったエピソード。
ファンは、ぼくらスポーツ選手だけではなく、どんな人にもいてくれている大切な存在。
ご家族やご友人のことを思い出しながら読んでもらえると嬉しいです。
話の始まりは
「尚明さんのプレーを見ていると、自然とこっちも元気になります」
と言ってくださっていたご夫婦から。
明るくて、何気ない挨拶や、手紙の一言一言、笑顔に、どれだけ力をもらっていたか。
福島ファイヤーボンズへ移籍した今でも仲良くさせてもらっています。
だから数年前、奥様が逆境とたたかっているとお聞きした時は、応援したい気持ちが爆発しましたね。
しかも、そんな中でも試合を観戦しに来てくださると聞き、さらに驚いたというか、感謝させていただいたというか、もうちょっと言葉にならなかったです。
「この試合だけは、負けちゃいけない・・・!」
プレッシャーは格別でした。
運命の相手は日本代表選手を何人も擁する、超強豪チーム。当時、歯が立たず、負けが込んでしまっていた相手です。
同じ人間だと思えないようなスピード、パワー。基本的なプレーも連携も完璧にやってくる。隙がなかったんです。
そんな彼らとの試合! その日も開始から押され、点差が開いていきました・・・!
前半終了時点で、十数点差。ひっくり返すのが、困難な点差です。
でも、流れは来ていたと思っていました。勘違いかもしれません。けれど、なぜか負ける気はしなかった。ぼく以外の仲間たちもそうでした。
「ディフェンスのギアを一段、上げてやる・・・!」
そう思うものの、スタミナは限界に近づいていました。
試合終了までマンツーマンのディフェンスをするのがぼくのプレースタイル。
滝のように流れる汗。戻らない呼吸。
・・・ただ、体力がどうとか言ってられない。
「・・・気持ち入ったプレーを見せんと!」
3クオーター目の出だし、集中力はピークへ。自分でも不思議なくらいに体が動きます。
気づけば、連続の9得点・・・!
筋繊維がちぎれ、骨が軋む音がした気がしました。
それでもギアは上がっていきます。奪われ、奪い返す、シーソーゲーム。誰もが、その行方を予想できない試合展開。
「一瞬でも気ィ抜いたら、持っていかれる!」
その後、勢いを取り戻し、終了間際、点差はとうとうゼロへ。試合終了のブザーが鳴り響きます。
「クッソ・・・同点で終わってしまう・・・!」
誰もが一瞬、引き分けを受けとめようとした刹那、ボールは美しい弧を描き、宙を舞いました。
ゴールネットを突き抜けたんです!!!!!
「ドワァアアアアア・・!!!!」
聞いたことのない歓声が体育館を揺らしました。人生初のブザービーターゲーム。仲間がやってくれました!
大きくこぶしを握りしめ、屋根を突き上げるほど叫びました。嬉しいとか、良かったとか、そんなモンじゃなかったと思います。
最高の感情の時って、言葉にならない。
自然と足はご夫婦のもとへ。疲れているはずなのに、ゴールへ向かう時のように早く、早く。大きく手を振っているあの場所へ。
「ありがとう!」「ありがとう!」
全身に浴びせるように掛け合った、あたたかい言葉。
あの時のご夫婦の笑顔は、一生の宝物です。バスケしてて本当に良かったって思いました。何度も二人と抱き合いました。
こういう選手とファンの物理的な距離がものすごく近いのが、Bリーグのいいところ。大好きなんです!
今はコロナの影響もあって気をつける必要がありますが、ぜひ、皆さんも試合を見にきてください! すごいですから、この距離感は!!
こうした経験を経て、ぼくがご夫婦から教わったのは底力の正体です。
自分の奥底に眠る力って、自分にストイックになるだけじゃ引き出せない。
大切な誰かのためを想って、腹の奥底から湧いてくる覚悟。
その強い動機を自分のモノにできた時、信じられない力が発揮されるんじゃないかと思ったんです。
だから、この頃からファンの見え方が変わりました。
ファンの皆さんは、ぼくらスポーツ選手が、がんばりたくなる理由を提供してくださっている。
その期待に応えるための、プロとしてのプライドや責任感は持っていなきゃいけない。
そう思ったら、ますます負けられなくなりました。
素晴らしいきっかけを与えてくれた、ご夫婦への感謝は尽きません。
これからもぜひ、ぼくのプレーを見ててください。まだまだ楽しませます。こんなモンじゃないです!
【PROFILE】
橋本尚明(はしもとなおあき)
ツイッター/https://twitter.com/hashimotonaoaki
インスタグラム/https://www.instagram.com/aaa16ccc/?hl=ja
1992年、愛媛県松山市生まれ。大学在籍時は新人戦にて最優秀選手賞とアシスト王を獲得。その他、西日本選手権、関西学生選手権で優勝を経験し、関西学生選手権と関西学生リーグ戦では優秀選手賞を受賞するなど実績を積む。
その後、2015年に大阪エヴェッサと契約。主力選手として活躍。プレーオフにも出場。2017年、富山グラウジーズへ移籍。主にシックスマンとして、チームのB1残留に貢献した。
2018年には横浜ビー・コルセアーズへの移籍。アメリカの伝統的スポーツ用品メーカー・スポルディングと、ブランドアドバイザー契約を締結。
2021年、島根スサノオマジックへ移籍するもシーズン中盤に故障により離脱。現在は福島ファイヤーボンズと契約。
福島ファイヤーボンズの詳しい情報はこちらから!
公式HP/https://firebonds.jp/
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