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その交際費、経費にできないかも!?経営者なら知るべき「損金不算入制度」
突然ですが、原則として交際費は経費にできないことをご存じでしょうか。
「え、毎年の確定申告で経費にしてるんだけど」
「さすがにそれは言いすぎだろう」
と感じる方がほとんどだと思います。
もちろん、全ての交際費を経費にできない訳ではありません。しかしこれは特例措置によって認められているもので、国が特例を止めたら一部認められていた交際費の経費計上もできなくなるかもしれません。
だからこそ、これから紹介する「損金不算入制度」をしっかり理解しておくことは大切です。決して難しい制度ではありません。分かりやすく解説するので、ぜひ経営者の方は知っておいてください。
損金不算入制度とは
損金不算入制度とは、接待交際で使われた飲食費は原則として損金(経費)に算入できないことを定めた制度です。一方で、全てが損金不算入なのではなく、特例で一部認められている部分もあります(特例については後ほど詳しく説明します)。
企業は、決算報告書を作る際に用いる「企業会計」と、納税額を計算するために用いる「税務会計」を使い分けています。企業会計で損金(経費)にできる交際費でも、税務会計では一部損金にできないことが定められているのです。イメージは下図の通りです。
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二種類の会計が存在する理由
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少し脱線しますが、なぜ企業会計と税務会計という二種類の会計手法が存在しているのでしょうか。それは目的の違いから来ています。
企業会計は、財政状態や経営成績を外部に適切に開示することを目的にしています。会社ごとに収益の計算方法がバラバラだったら、株主や投資家などのステークホルダーの正確な判断を妨げる恐れがあります。
税務会計は、課税の公平性を目的としています。同じ経営成績なのに課税額がに差があったら、不平不満が大きくなり、国の納税制度に対する信用を毀損させることになりかねません。
交際費は1回あたりで使われる金額も大きく、過度な節税対策に使われやすい支出です。「真面目な会社は経費にしていないのに、不真面目な会社は関係ない飲食代をガンガン経費にしている」なんてことになると、正直者が馬鹿を見ることになりかねません。こうしたなかで、課税の公平性を担保するために損金不算入制度が設けられたのです。
交際費を経費にできる特例措置
特例措置が認められている理由
実際のところ多くの企業は取引先との関係構築のために接待交際費を使っています。これらは事業活動に必要不可欠な経費と言えるでしょう。これらすべてを一律に「経費として認めない」と言ってしまうと、大きな反動・反発が出るでしょう。
例えば単価の高い飲食店などは、企業の接待交際費をアテにしている部分が大きいです。そういった業界は大きなダメージを負うかもしれません。また中小企業育成の面からも、顧客と関係強化する企業活動に制限をかけ過ぎるべきではありません。
そういったバランスを取って、一定条件の経費は経費にできる(損金に算入できる)特例措置が行われているのです。
企業規模や法人格による違い
損金不算入制度では、会社規模や法人格によって経費にできる交際費に上限などを設けています。下の表をご覧ください。見て頂いたら分かると思いますが、規模が小さな事業者ほど優遇されています。
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支出金額や科目
交際費といっても、飲食費だけでなく、ゴルフ代やお土産代など様々です。損金不算入制度の対象になるのは接待等の飲食に関わる費用です。飲食費については交際費不算入制度による制限がかかりますが、それ以外の交際費については企業会計と同じ扱いができる、と捉えることもできます。
金額についても決まりがあります。1人あたり1万円以上の接待交際のための飲食代は交際費扱いになりますが、1万円未満の場合は会議費等になります。ちなみに令和6年の法改正で、これまで「5,000円以上」だった交際費の基準が「1万円以上」に引き上げられました。
会議費は全額損金も算入できますが、会議目的に沿った内容の支出かどうかなどは国税庁にチェックされることもありますので、一定のルールに従いましょう。詳しくは別記事で交際費と会議費の違いを説明しているので、気になる方は読んでみてください。
まとめると…
色々と説明をしましたが、要するに言いたいことは「いまは交際費を経費にできるけれど、制限もあるし、本来は経費にできないものなので、交際費による利益圧縮に頼るのはアブナイ」ということです。
損金不算入制度は令和6年に改正されましたが、今後も社会の流れに合わせて改正を繰り返すでしょう。「いつのまにか制度が変わっていた」とならないように、ぜひ税理士に情報収集は任せて、本業に集中できる環境を作っていただきたいです。
橋本美菜税理士事務所は、
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