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広告収入に頼りすぎた微博の現状。そこから見える未来とは?

皆さんこんにちは。エンジョイジャパンの橋本です。最近、中国のミュージシャンたちがSNSプラットフォームの「微博(weibo)」に対して苦情をぶつけたことがネット上で話題になりました。本日は、この事件、並びに微博の現状と、そこから見える未来についてお話したいと思います。

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(1)ミュージシャン事件

11月20日、中国でミュージシャン活動をしている「老狼(ラォーラン)」が、微博に「微博で出演告知をしたところ、トラフィック制限=見られる数が極端に少なくなる)されました。そして、お金を払って、头条(トップニュース)枠を買わないと書籍のリリース告知も制限されます。微博はどんだけお金を取るんだよ!」という投稿がネット上で話題になりました。

彼が参加する予定の「新书发布会(書籍のリリース告知会)」について投稿したところ、記事がトラフィック制限されました。老狼が添付したトラフィック制限された記事のスクリーンショットには、転送、コメント、イイネのボタンが灰色になっていて、クリックが出来ないようになっていました。

彼がこの件について、自身の微博で苦情をこぼしたところ、多くのミュージシャンたちからコメントが寄せられ、これまた多くのミュージシャンたちも同じような状況に遭遇したことがあると判明しました。

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そして、11月22日、微博側は、投稿記事に外部リンク、ショッピングを誘導するコンテンツが含まれる場合、微博は規制措置を講じていたこと、多くの出演告知ポスターには外部リンクやショッピング誘導のQRコードが含まれているため、一部の投稿記事がシステムによって、広告宣伝コンテンツとして判断されていたことなどを明かしました。この騒動を踏まえ、微博の副社長兼編集長である「曹增辉(ツォー・ジェンホイー)」は、「今後このような事がないように、社内システムを調整をした」と回答しました。

この件はここで解決しましたが、これを機に微博が抱える問題も浮上しました。

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(2)微博の現状と未来

2017年から2019年までの3年間で、微博の全体収益の大半は広告収益からのものであり、その広告収益は全体売上のそれぞれ86.67%、87.24%、86.6%を占めました。そして、2020年になった今も変わらずに、第1四半期と第2四半期の広告収益は全体の85%を超えていました。収入の大半を広告に頼ってしまっているため、売上を伸ばす手段が広告しかない、という状況になっているのです。

ここで、微博の3つの広告収入源を簡単にご紹介します。

①微任务
微任务(ウェーレンウー)というのは、微博のコンテンツ取引プラットフォームのことです。企業はこのプラットフォームを通じて、KOLを選定したり、仕事を依頼したりすることが可能です。(他のプラットフォームもこのような機能を活用しているところが多いですね。)
外部リンクやショッピングサイトへの誘導のQRコードが含まれている記事や写真はシステムによって広告宣伝コンテンツとして判断される場合がありますが、微任务を通していれば、その問題は解決します。その代わり、微博に手数料として金額の30%を支払わなければなりません。
②粉条・热门
「粉条(フェンティオー)・热门(レァーモン)」は簡単に言うと、トラフィックをお金で買うことです。購入後24時間以内に、投稿した記事は、トップページに表示されるコンテンツとして、すべてのフォロワーに表示されます。金額はフォロワー数によりますが、フォロワー数が多ければ多いほど、金額も高くなります。例えば、フォロワー数が1,487万人の大人気KOL「薇娅(ウェイヤ―)」がトラフィックを買うとすると、85,171元(約130万円)を微博に支払わなければなりません。
③フィード広告
フィード広告は記事と記事の間に出てくる広告のことです。微博でユーザーの投稿記事を見ていると、このような広告は数多く出てきます。「広告をオフにしても、また同じような広告が出てきて、全く消えず、しばらくするとまたプッシュされます。」と、フィード広告に対して、ネガティブなコメントが多数寄せられています。

収益の大半を広告が占めていますが、その広告収入自体が徐々に減少してきています。微博の2020年第2四半期の全体収益は26.5億元(約422億円)で、前年比で10%減少しました。その中で、広告収益は23.3億元(約371億円)で、前年比8%減でした。

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微博が広告収益に頼りすぎたことで、ユーザーは徐々に離れていっています。2020年3月から6月まで、微博の利用率は42.5%から40.4%に低下し、減少の一途を辿っています。中国版Yahoo!知恵袋と呼ばれている「知乎(zhihu)」には、「你为什么要卸载微博(なぜ微博をアンインストールしたのか?」という質問が投稿され、その投稿の閲覧数が2,162万PV、コメント数が1万件を超えました。みんなが微博をアンインストールした理由は、「芸能人に関するホットニュースが多すぎる」、「強制的に広告アカウントをフォローさせられる」、「広告が多すぎて、記事の質が落ちた」などです。

これまで、微博には、長い間競争相手がいませんでしたが、近年ではショートムービーアプリの「抖音(TikTok)」「快手(クアイショウ)」などに、その地位を奪われつつあります。また、しばらくの間運営会社の「新浪(シンラン)」は、「微博」以上のサービスを新たに生み出すことが出来ていなかったため、会社としても窮地に立たされています。今後新浪がどのような展開になっていくのか、しばらく注目しておきましょう。

以上、微博の現状と未来についてのご紹介でした。気になることがありましたら、ぜひ橋本までご連絡ください。

メール:hashimoto@enjoy-japan.jp

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