中国で大人気のアイドルオーディションのブームが過ぎ去っていく?
皆さんこんにちは。エンジョイジャパンの橋本です。過去の記事で何度か中国で大人気のアイドルオーディション番組「青春有你3(Youth with You3)」についてご紹介しましたが、このオーディションは決勝戦を目前にして大事件が勃発し、中止となりました。本日は、この大事件についてと中国のアイドルオーディション事情についてご紹介したいと思います。
事件について
事件①
本来であれば5月8日が「青春有你3(Youth with You3)」の決勝戦でしたが、その1週間前に人気練習生である「余景天(ユージンテン)」に関する悪い噂がネット上で広まりました。その内容は、彼の親が以前経営した娯楽施設で違法行為(ここはご想像にお任せします)があり、かつ彼自身も二重国籍の疑いをかけられてしまいました。この噂が広まってすぐに、ネット上では「余景天退赛(オーディションをやめること)」を促す人が増え、中には「人民日報(政府メディア)」に通報する人もいました。
事件②
「余景天」の事件とほぼ同時期に、ネット上で「倒牛奶(牛乳を流し捨てる)」動画が出回りました。この牛乳というのは、正確にいうと乳製品飲料(のむヨーグルトのようなもの)で、番組のスポンサーである中国のトップ乳製品企業「蒙牛乳業」の商品です。
なぜ牛乳を流し捨てるかというと、ファンたちは好きな練習生に投票をするのに、いくつかの投票方法があり、その中の一つが牛乳のパッケージにあるQRコードを読み取って投票することでした。今までのオーディションの時はQRコードはパッケージの外側にありましたが、今回は蓋の裏側に印刷されていました。
つまり、投票をするのに、牛乳を開封しなければなりません。そして、ファンたちが購入した牛乳の数は莫大で、すべてを飲み切ることができず、かつ開封したものを他人にプレゼントすることもできなかったため、川に流し捨てる以外に選択肢がなかったようなのです。
決勝戦までわずか1週間で、この2つの事件が立て続きに起きたことで、番組は急遽中止となりました。
アイドルオーディション業界について
近年、中国の動画プラットフォームは営業損失を続けています。2019年、IQiyiの営業損失は103億元で、2020年は70億元でした。テンセントビデオも同じく2019年の営業損失は30億元で、同業他社の水準をはるかに下回っています。
現在、動画プラットフォームの市場シェアが分散しすぎて、コンテンツの交渉力が低く、各動画プラットフォームはトップバラエティ番組や映画・テレビドラマの独占放映権を奪うためにお金を燃やしてきました。その中で、アイドルオーディション業界は収益性が高いコンテンツの一つであるということに気づき、各動画プラットフォームはこぞってオーディション番組を制作していったのです。
そして、アイドルオーディションの投票制度は、非会員は1日1票、会員は1日2票となっていて、推しがいるファンは当然会員になるため、どんどんと会員数が増える仕組みとなっています。また、先程もご紹介したように、スポンサーの商品を購入すれば、投票回数をさらに増やすことができます。2018年に開催された《偶像练习生》の際に、スポンサーである中国のミネラルウォーター企業「農夫山泉(ノンフーシャンチュン)」のオンライン売上高は通常時と比較して500倍にも達しました。ファンの購買力を重視するブランドは次々とオーディション番組への出資をするため、プラットフォームとしてはかなりの額の広告費を得ることができました。
それだけではなく、動画プラットフォームはファンの心理をうまく利用し、様々なランキング制度、課金制度を設けています。例えば、テンセントビデオが制作した番組《创造营(プロデュース101)》では、《大岛日记(大島日記》という番組を制作し、ファンの投票数によってTOP11にランクインした練習生がこの番組に出演が出来るルールとなっています。投票は「电力值(ポイント)」制になっていて、10ポイントは0.08元に相当します。
そして、第1回目(これまで合計6回開催)の投票でTOP11にランクインした11名の練習生のポイントを人民元に換算すると、合計203万元(約3,440万円)でした。
アイドルオーディションは動画プラットフォームやスポンサーにとって、最も収益性が高く、練習生にとっても有名になるきっかけであるため、これまで人気が続いてきましたが、今回「青春有你(Youth with You)」の事件をきっかけに、今後はもしかしたらオーディション番組はなくなるのではと、ネット上で噂されています。
以上中国で大人気のアイドルオーディション事情についてのご紹介でした。オーディション番組には色んな問題がありますが、本気で頑張っている練習生もいますので、彼らの夢は個人的に応援したいと思います。(笑)
気になることがありましたら、ぜひ橋本までご連絡ください。
メール:hashimoto@enjoy-japan.jp
弊社のYouTubeチャンネルでもオーディション番組についてご紹介していますので、ぜひご覧ください。