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割とわかる行政法2 〜申請に対する処分〜

 行政書士の勉強をする上で避けて通れない行政法。
イメージのしにくさから苦手意識を持っている方も多いのではないでしょうか。ですが、一度わかってしまえば得点源にしやすい分野です。
 自分の勉強がてら要点をまとめたので、行政書士の勉強中の方、さらっと行政法がどんなものか知りたい方のお役に立てるかなと思います!

 今回は、第2弾「申請に対する処分」を学んでいきます。
行政が申請に対してどのように処分していくのかを具体的に学べますので、前回の行政手続法総則より勉強しやすいですよ!なので、ここから勉強するのもいいですね。

※この記事は全て無料で読めます。(サポート機能は設けてます) 

↓前回はこちら↓





申請に対する処分とは

 行政手続法 第2章からは申請に対する処分について書かれています。
第5条〜11条までの少ない条文ですが、申請に対する処分はほぼ毎年出題されます。また、内容もそこまで難しくないので、しっかりと得点源にしたいところです。
 
 まず、申請に対する処分とはなんのことでしょうか、定義を条文で確認してみましょう。

申請  法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対しなんらかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。

行政手続法 第1章 総則 第2条3項(定義)

1行でまとめると、「行政に対して自分への利益を付与する処分を求める行為が申請」です。 よく問題で、「自己または第三者に利益を付与する行為」と書かれていたりしますが、誤りです。申請者だけですので注意してください。
 許認可等の具体例は営業の許可や免許の交付決定、手当の支給決定などです。ね、自分にとって利益のあることばかりですよね。

で、ちょっとだけ届出と似てるので注意です。
念のため、届出の条文も確認しておきましょう。

届出  行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう。

行政手続法 第1章 総則 第2条7項(定義)

申請と大きく異なるのが、行政庁が諾否の応答をする必要がないということです。行政へ一方的な働きかけで済むのが届出です。
具体例としては婚姻届の届出などが当たります。

今日はここだけ覚えて帰ってください「審査基準」「標準処理期間」

 ここからが大事なポイントです。申請に対する処分で出題されるポイントはほぼこの2点です。

 次回の講義では不利益処分について書く予定なんですけど、ここの処分基準であったり、不利益処分の標準処理期間がややこしいので、試験できちんと覚えてるか問われるわけです。 

 なのでまずは、申請に対する処分をしっかり理解することが重要です。

 とはいえ、さほど難しくはないのでクリアな頭でサクッと覚えちゃって、後の不利益処分は似たようなものなので、両方の相違点を覚えると良いです。

 まずは「審査基準」
 これは申請された事に対しての諾否を決める基準ですね。
試験で例えると「60点以上は合格」というのが審査基準で、この人は70点だから合格、こっちの人は21点だから不合格です、みたいな、これだけのことです。

 次に「標準処理期間」
こちらは申請してから諾否の結果が出るまでにかかる期間の目安のことですね。試験で言うところの合格発表日みたいなものです。


 次にそれぞれの絶対覚えてほしいポイントを書いていきますね。試験出ますよ!

審査基準の覚えるべきポイント

 審査基準は、申請にGOサインを出すか否かの基準、と言うことは覚えていますね?
 じゃあ、条文読みましょうね〜

行政庁は、審査基準を定めるものとする。

行政手続法 第2章 申請に対する処分 第5条1項(審査基準)

 申請に対する処分で、一番最初に出てくるのがこの条文です。シンプルでいいですよね。
 「定めるものとする」なので、審査基準は絶対に定めなければいけない。(=法的義務)
ここをまず押さえてください。

 続いて2項、3項とみていきましょう。

2  行政庁は、審査基準を定めるにあたっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
3  行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により審査の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない。

行政手続法 第2章 申請に対する処分 第5条2項〜3項(審査基準)

 2項では、審査基準の内容について書かれています。ここは軽く確認しておきましょう。

 できる限り具体的にせよとの事、なぜでしょうか?

理由は簡単、ここが曖昧だと行政手続法を制定した意味が薄れちゃいますからね。

行政手続法の目的、覚えていますか?

そう、公正・透明性の確保と国民の権利義務の保護、ですよね。


 次に3項です。2項は軽く覚えるだけでいいのですが、3項は結構重要です。
審査基準を定めるだけでは、ちょっとだけ不十分で、その審査基準はできるだけ公にする必要があります。

「できるだけ」というのがミソで、こういうのを努力義務と言います。

試験に例えると、受験要項に「60点以上で合格」という記載があるようなものですね。

 審査基準の公開は努力義務、これを覚えておきましょう。

 まとめです。『審査基準を定めるのは法的義務、審査基準の公開は努力義務、審査基準の内容はできるだけ具体的に!』

 
ここをまず完璧におぼえちゃいましょう。
覚えるだけですから!覚えるだけで点が取れるなんてラッキーですよね。

標準処理期間の覚えるべきポイント

 お次は「標準処理期間」です。なんか仰々しいけど、上にも書いたように申請の処理にかかる目安の期間のことを指します。そんなに難しくないですよね。
 じゃあ、お待ちかねの条文です。

行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。

行政手続法 第2章 申請に対する処分 第6条(標準処理期間)

 まずは一番大切な定義「申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間」=標準処理期間ということを理解しましょう。

 そして括弧内が長文で読みづらいので、一旦そこは飛ばして読んでみましょう。そうするとわかるのは次の2点。

⒈標準処理期間は努力義務であること

⒉定めた場合は公にしなければならない
まず、これが基本です。


 次に、読み飛ばした部分も読んでみましょう。

括弧内のケースは、申請をする機関と、処理する機関が違う場合です。

 こういった場合は申請する機関から処理する機関への到達期間の目安も定めるよう努めなければなりません。

 最後に、標準処理期間に含まれないものを見ておきましょう。

標準処理期間に含まれないもの

 標準処理期間は、行政が申請を処理するのにかかる時間の目安、ということはわかっていただけたと思います。

しかし、申請は時に不備があったり、申請の準備など、申請するにあたり時間のかかる物事があります。

それらが標準処理期間に含まれるのかについてですが、簡単です。

含まれるのは3つのうち一つだけだからです!

その一つは「情報提供の期間」です。
情報提供の時間とは、申請者からの審査の進行状況や処分の時期の見通しの問い合わせなどを指します。

それ以外の「補正を求める場合の指導期間」や「申請の事前指導の期間」は標準処理期間に含まれません。

ですので「情報提供の期間」だけ覚えておきましょう。


申請後の手続き

不備のある書類はどうするべきか

 さて、申請に対する処分もあと少しです。
ここまでで、申請を提出するところまで学びました。
今からその申請された書類の手続きを見ていきます。
と言ってもここは読めば自然と覚えられると思うので、サラっとやって行きましょう!

 まず、申請されたものの取り扱いです。

行政庁は、申請がその事務所に到達した時は遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請することができる期間内にされたものであることその他法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可を拒否しなければならない。

行政手続法 第2章 申請に対する処分 第7条(申請に対する審査、応答)

長いので、大事なところをかいつまんで説明します。
 大事なポイントは2点。

  1. 遅滞なく審査を開始しなければならない

  2. 申請の要件に不適合であれば、補正を求めるか、拒否しなければならない

これだけです。
ここだけ理解しておけば問題は解けます。特に2番。

「拒否しなければならない」とか「補正を求めなければならない」
という最もらしい問題が出てきますが、違います。拒否or補正です。

理由が必要かい?

 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他に客観的施行により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。

2  前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。

行政手続法 第2章 申請に対する処分 第8条(理由の提示)

まずは原則として、申請を拒否するには理由の提示が必要です。
しかし、定められた審査基準がありそれをみて明確に拒否の理由がわかるならば、申請者の求めがあった際に理由を示せばOKということです。

 具体例でいうと、試験の合格点が60点で、結果が20点のため補修と言われました。先生に聞いてみると、試験の合格点に達してない人は補修だからだよ、と返答されました。
こんな感じです。

公聴会なんかもやっちゃいます

 これで本当に最後です。めっちゃ頻出するわけじゃないんですが、たまに聞かれるので覚えておいて欲しい所です。 
 これは、第10条で定められており、申請者以外の利益を考慮しなければならないときに公聴会の開催などで申請者以外の意見を聞く努力をしなければいけないよ、ということです。

行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、必要に応じ、公聴会の開催その他の適当な方法により当該申請者以外の者の意見を聞く機会を設けるよう努めなければならない。

行政手続法 第2章 申請に対する処分 第10条(公聴会の開催等)




 お疲れ様でした。これで申請に対する処分、終了しました。

申請に対する処分に関しては毎回出題されるのと、条文の数も少なく試験でも素直に出題されることが多いので、変に参考書を読むより条文を読んだほうが点が取りやすいかも。

 しかし、条文をただ読んでいるだけでは、疲れる&長いので忘れる、が起きがちなので、問題を解いて必要な部分をしっかり覚える、

メリハリのある読み方を意識して復習してみてください!

 ではまた次回「不利益処分」でお会いしましょう。

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