![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/68569129/rectangle_large_type_2_cd6b799312058e9b753bb7f8050c1dd5.png?width=1200)
Photo by
killerskill
冬に寄せて
冬の寒さが何かに似ているなと、小さい頃から考えていた。
考えた結果、冬の寒さは厚い瓶底に似ている、が答えだと気づいた。
冬の寒さは、巨大な瓶の端っこに身を寄せているような冷たさと、この寒さからは逃れられないという絶望感を感じる。だから大きな瓶の底みたいだなと感じた。
瓶の底に、みんながいるから、寒いのになぜか人との距離がどの季節よりも近く感じる。一人になりたくても、どこへも行けやしない。
イベントも多く、どうしても人と関わる必要が出てくる。
なんとなく冬が憂鬱な理由だ。
憂鬱だからと言って、嫌いなわけではない。
冬は美しく、停滞を許してくれる。変化をじっくりと待ってくれる忍耐強さもあり、馴れ合いを許してくれるような優しさもあるからだ。
人と距離が近くなっても、冬の寒さのせいにできる。
寒さを口実に、思いびとの手を取るのも一興だ。
蛹から蝶が羽化するのを待つように、ココアが牛乳に溶けていくのをゆっくりとかき混ぜるように、待ってくれる。冬は私を急かさない。
そんな冬が好きだ。
体が芯まで冷え切ってしまっても、その寒さはロシア文学に親しみを覚えさせてくれるスパイスだ。冷え切った体で読むロシア文学の愉悦は、冬にしか味わえない。
女の子の髪がマフラーに挟まれ、丸みを帯びたシルエットになるのも冬だけだ。
口元がマフラーで隠れている女の子はどうしようもなく、愛らしい。
寒さを和らげようと両手で温かい飲み物を持つ。
じんじんと冷たい手が、ぬくもりで緩んでいく幸せも冬限定だ。
冬は楽しい。あと2ヶ月程度だがしっかり楽しんでいきたい。
いいなと思ったら応援しよう!
![hashimoto_19452](https://d2l930y2yx77uc.cloudfront.net/assets/default/default_profile_1-9b784003abbac36db44620c7f48629787caea4d53ae4e4f1b710aed18e204e23.png?width=600&crop=1:1,smart)