もう1人の兄貴
誰しもあの時に戻りたいとか、何歳に戻りたい。とか。そんなことを考えたりした事ってあるのかな。
でも考えてみたんだけどもしも、タイムマシンがあったとしても僕には意味ないのかもね。僕が学習能力がないだけかもしれないけれど。毎回後悔する選択ってするじゃない?てことは、過去に戻れたとしても後悔する選択をしちゃうんじゃないのかと思うんだよね。
前置きが長くなっちゃったけど今日はこんな話をひとつしようと思う。
僕がフリー雀荘に行き始めたのは20歳過ぎた頃だったかな。地元の最寄り駅近くの店でさ。天狗道場ってお店。最初の頃はたまに行く程度だったんだけど、夜の仕事するようになってから通うようになっていったんだよね。
まぁいっぱい負けたよね。当時はまだ麻雀が大好きってだけで、所謂下手な横好き。麻雀の勉強とかもしたことなかったからね。
それからちょっとして仲良くなったのがそのお店のオーナーさんでさ。当時僕が22歳とかで、オーナーは30歳くらいだったかな。麻雀も僕より上手かったね。仲良くなってからは色んなお店に飲みに行ったり僕の働いてたお店(飲食店)に遊びにきてくれたり。僕が全日に入るずっと前にテスト受けて麻雀プロになりたいって言ったら、
イサムがなるなら俺もプロテスト受けてプロになるか!
って笑ってた。
イサムは俺の弟みたいなもんだからな
って言ってくれた時は本当に嬉しかった。もう1人兄貴が出来たみたいでさ。
そんなオーナーがある日病に倒れたんだよね。病名は胃癌。もう末期で手のつけられない状態だったらしい。手術もできないと言われたらしい。そして入院。
僕は東京で対局があるときに浅草寺に行って御守りを買ったんだよね。そしてそれを雀荘のメンバーに託したんだわ。
それから2.3ヶ月後くらいかな。頼み込んで有明の有名な病院で胃の全摘出を受けられたとオーナーは元気な姿を見せてくれた。
御守りが効果あったんだと笑ってくれた。また麻雀やろうなと言ってくれてたんだけど、今度は僕が事情によりなかなか麻雀を打ちに行けなかった。その頃僕は仕事を変えていたからとかもあるんだけど。
たまに連絡を貰ったりしながら数年たったある日の事、一本の着信が入る。相手はオーナー関係の人。
後にその着信がオーナーの訃報だったとわかるんだけど、その日忙しかった僕は掛け直せなかった。それと同時に嫌な予感がするので掛け直すのが怖かったのかもしれない。そのまま葬式等にも行けず今に至る。(葬式に行けなかったのは別の理由があるけど割愛)墓参りも行けていない。
「お前だけ葬式に来てねーじゃねえか。馬鹿野郎」
オーナーの、いや兄貴のそんな声が聞こえるよね。俺だって行きたかったさ。最期の別れも言いたかったさ。すぐに行かなかった自分を後悔してるよ。
兄貴の命日は10月28日。偶然かもだけどその日に開催されていた橋本杯を見届けたかのように兄貴は旅立った。
今年こそは墓参りに行こうと思っている。
兄貴の好きだったこの曲を聴きながら。