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「あきた芸術劇場ミルハス」の開館と芸術文化ゾーン

2022年6月5日(日)。秋田市文化創造館の隣接地に「あきた芸術劇場ミルハス」が開館しました。大・中・小ホールの利用開始やグランドオープンは9月とうたっているので、実質的にはプレオープンです。

魁新報で報道されている通り、老朽化した県民会館と市文化会館に代わる施設として県、市が共同で整備(全国的に例が少ない)、総事業費約254億円、大ホールは2007席の規模です(ちなみに文化創造館は約11億円の改修工事)。

設計は佐藤総合計画・小畑設計JV、建築工事は竹中工務店・大森建設・シブヤ建設工業・加藤建設JV。指定管理運営はあきた芸術劇場AAS共同事業体(一般財団法人秋田県総合公社、株式会社秋田魁新報社、株式会社スペースプロジェクト)です。

周辺には元から佐竹史料館、県立美術館、アトリオンなど芸術文化施設があったことから、市としては文化創造館とミルハスをつくり一帯を「芸術文化ゾーン」として進めてきた整備がひと通り完了したことになります(歩道の融雪工事、車道との段差解消など歩きやすい環境づくりなども行ってきた)。なお、今後千秋公園内の佐竹史料館の改修や外堀の遊歩道など千秋公園の再整備が進められるとのことで、周辺環境はまだ変わっていきます。

ミルハスの各ホール等は未見ですが、解放されているロビーやホワイエなどはひと通り見てきたので写真と共に雑感をメモしておきます。なお劇場施設にはそもそも詳しくないのでその点はご容赦ください。

「ミルハス」パンフレット
ニュースレター

ちなみに公式サイトのブログもニュースレターみたいな感じで、自分たちのことについて書くにも報道調に寄っているのがちょっと気になってました。共同事業体に魁さんが入っているから、各地元媒体でも結局似たような構造になるわけですが。

立地と外観

文化創造館と同じく秋田駅から徒歩10分。中心市街地循環バス(ぐるる)の停留所が増え、目の前に止まります。空港のリムジンバスも実は駅で降りずにいるとお堀を渡ったキャッスルホテルあたり(木内前)につきます。

東側(文化創造館側)のファサード
木目をつけたコンクリート

L字型のお堀の角地で、文化創造館側も広場が開けているので3方からよく見え、景観が大きく変わりました。大きな樹木もいくつか残していたり、高さもできるだけおさえていただいたのかなという印象。

お堀沿いの南側

東側のファサードはカーブしていたりと洒落ていますが、駐車場もある西側は「裏」って感じで少し残念な感じ。まぁ、まち側もそういう雰囲気ではないですが。

同じくお堀沿いの西側
千秋公園が広がる北側から

内部の印象

東側のメインエントランスから入ると、立派な総合案内があったりと普通に劇場らしくいい雰囲気。各ホールにはそのままエスカレーターで上れます。この吹き抜けまわりの照明は、いかにもLEDという感じの少し安っぽい雰囲気でおしい。。。

1Fエントランス付近
総合案内
椅子やスツールも多数

またエスカレーターを上らず直進すると、管理事務所や駐車場につながる「千秋の路」と名づけられたギャラリーロード的なスペースがあるのですがこれもちょっと惜しい感じ。特にくぼんだ展示スペースに照明が全くあたらないのは改善するか、違う使い方をした方がいいと思いました。

1F「千秋の道」
エスカレーターまわりの吹き抜け

建物からの眺め

4階の眺望ロビーをはじめ、各フロア自体の雰囲気や外の眺めはとてもいいです。中心市街地のまちなみとお堀、文化創造館および明徳図書館(谷口吉生の初期作)、千秋公園がよく見えるので、フォトスポットになりそうです。

4F眺望ロビー
4F
3F
建物からの眺め
明徳図書館と文化創造館
眺望テラス
外からも中からも入れず

「眺望テラス」もよさそうなのですが、現状では自由に立ち入りができない様子でした。今だけなのか、ホールの稼働などに合わせて開けるのかなと推察しています。

※5/15追記:建物を一周できるようになってました!諸室もある程度見える方向に。よいですね。

気になるサイン計画と管理

気になったのは、サイン計画と管理でした。グランドオープン前、かつ物見遊山の人が多く訪れる時期ということで慎重になられているのかもしれませんが、眺望テラスも含めて立ち入り禁止にしている場所が非常に多くかつ、外まわりはコーンや黄色いプラスチックチェーンなどがたくさんあって目立つ感じ。安全管理は大事なので使うべきところには使っていくのはいいと思うのですが、もう少し減らしたり、違う方法が取れるのではないかなと思いました。

カラーコーンが多数

またお手洗いの位置などの誘導や、注意喚起系のサインも目につきました。確かに既存のサインが少し目立ちずらく不足もあるのでしょうが(にしてもホールが使われていない時には流石にいらないのでは、というものも)、ラミネートでばーんと補完されてしまっており。計画時点で十分に検討が必要だなと改めて思いました。せっかくの雰囲気ある建物でふさわしい補完の仕方にアップデートされることを期待したいです。

これでもかとお手洗いサインが並んでました
エレベーター扉の「ガラス注意」

書いたこと全て、文化創造館にはね返って来るなとは思いつつ(汗。また劇場のことは知らなすぎるので、そちらの専門的知見は外した視点ということはお断りしておきます。

文化創造館はどうなるのか

市の「芸術文化ゾーン」のページにもあるように、まず政策としては位置づけが異なりつつ、やはり相乗効果が出てくると思います。

まずミルハスの方はホールだけでなく練習場などもあるわけですが、利用者さんが立ち寄る場としての文化創造館(およびカフェ・ショップ)やその庭、という関係ができます。先に書いた通り、ミルハスから特徴的なつくりをしている文化創造館がよく見えますので、そもそも知らない人が「あれ何だろう、行ってみよう」ということもあるでしょう(笑)。何せ1000人単位の人が目の前を訪れるようになります。

文化創造館がとてもよく見える設計とも言える

表現活動の担い手ベースの話で言うと、何かすでに活動をされている方、ホール設備や練習の場を求めている方はミルハス。文化創造館は「これからはじめたい」という方を応援していく場所。あるいはフレキシブルに空間の使い方を実験したい方、実施するイベントへ気軽に参加してもらいたい方などに使ってもらえるといいのだと思います。

文化創造館はどうやっても、フリースペース利用者が混じってくる場所だし、大型イベントが中心になっていくミルハスよりもますます日常に近い館になっていくのでしょうね。1周年でいい机やスツールも少し加わり、時間を過ごすのにも快適な場所になってきています。イベントが多く予定されている日もその辺りは工夫して運用していくはず。

ミルハス開館日は、ふらっと見れる/参加できる展示やビンゴゲーム。集中して取り組むピンホールカメラのワークショップ。1日店主などと話せる「カタルバー」。などフックをたくさん用意していました(以下のページ参照)。

連携協定を結ぶKIITOから来た視察チームが、キッチンスペースで実験的にパンを焼いていた様子に引き寄せられていた方がいたひと幕も。何かをつくる、はじめる、が開いた形で身近な場所としてあり続けて欲しいと思います。

文化創造館前広場から見るミルハス
1Fコミュニティスペースにはカメが登場
「200年をたがやす」から生まれたピンホールカメラのワークショップ
KIITOチームがパンを焼く実験をしていました
リニューアルされたバナーにのメッセージに注目

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