アメリカの日本人元不法滞在者が、21年ぶりにアメリカを出国したら…
私は長年アメリカで生活をしておりますが、つい最近までは不法滞在者でした。
最近、ついに永住許可が降りグリーンカードを得て、21年ぶりにアメリカ国外へ出てカナダのトロントに行って来ました。
子供がトロントへ所用があり、それに付き添うためです。トロントは、約30年前にワーキングホリデーをした際に住んでいましたので、久々に訪れたいというのもありました。
トロントでは人生4度目のナイアガラの滝観光をした後に、私にとって今回の旅のメインイベントである「カナダから歩いてアメリカに入国する」という体験をしました。本当にグリーンカードがあればアメリカへ戻れるのかという実証実験です。
前回アメリカの入国審査を通過したのは21年前です。
その後、不法滞在を約10年。
頭の中ではグリーンカードがあればアメリカに戻ることが出来ると分かっていたのですが、不法滞在中はアメリカから一度出たらもう二度と戻れないと思って何年も生活していたので、体の奥深くまでその恐怖が染み付いています。
それを払拭するための、今回の旅。
カナダとアメリカ間の国境にはレインボーブリッジという橋がかかっています。歩いて5分から10分くらいの長さの橋です。
まずは橋の入口にある建物からカナダの出国ゲートを通り抜けました。
橋の上にいる間はどちらの国にいるのか、よく分かりません。橋の上からカナダ側に戻るのも入国審査が必要なようです。
橋の中間点は、ナイアガラの滝を見る絶景ポイントなのですが、そんな景色を楽しむ余裕はありませんでした。
橋を渡りきった所に、アメリカの入国審査の建物があります。
後は野となれ山となれの精神で、意を決して建物の中へ。
内部は警察署のような無機質で殺風景な雰囲気の場所。緊張感があります。鉄格子ではありませんが、何本もの黒い鉄のパイプで仕切りが作られているという感じ。
その日は雲行きも怪しく、あまり国境の通行人がいないようで、私が行った時は職員の方同士でお話中でした。彼らのリラックスタイムに割入って手続きをしてもらう感じだったので、全然ウェルカムじゃない雰囲気が伝わってきます。
私の子どもはアメリカパスポート所有者なので、手続きは非常にスムーズでした。
そして私の番。
グリーンカードを公の場で使うのが初めて。
特に緊張しながらも審査官に悪い印象を持たれないことに徹して、言われたとおりに率先して行動しました。
審査官がなにか考えながら、じっくりパスポートとグリーンカードを確認している時間は長く感じ、最終的に備え付けのカメラで顔写真を撮られました。
21年前とは違い、パスポートにスタンプを押されることも無く、そのままアメリカへ入国。
グリーンカードを手に入れたことを、心から実感しました。
ひと月ほど前までは、アメリカを出国したら二度と戻れなかった事を思うと、不思議な感じです。その時の心から溢れ出る興奮や感動を子供に語りすぎ、子供は少し困惑気味でしたが、優しく聞き流してくれていた。
「アメリカ側に入ると空気の匂いが違う」というのが、入国管理施設のある敷地を出てすぐの感想です。カナダ側とは違い樹木が生い茂り、木の匂いがしてきます。
その後アメリカ側の付近の公園を30分くらい散歩をしながらナイアガラの滝をみて、来た道を戻りアメリカを出国。出国手続きなどは特に無く、ニューヨークの地下鉄にある刑務所みたいな回転扉を出て橋を渡りました。
カナダの入国審査ではパスポートはチラッと見ただけで、グリーンカードをよくチェックしているのが印象的でした。滞在先や目的など簡易に聞かれただけで特に問題なく、簡単に入国。
グリーンカードは本当に凄い!
その数日後にトロントからアメリカへ帰るときにもアメリカへの入国審査がありました。
もう既に入国できるという確認はしているので、気持ち的にも余裕があります。
アメリカ帰国時はカナダのトロント・ピアソン国際空港でアメリカへの入国審査。
30年ほど前にもピアソン空港からニューヨークへ行ったときと同じで、カナダ側でアメリカへの入国審査を済ませます。ナイアガラと違ったのは両手全部の指の指紋を取られるということでした。しかし空港での入国審査官は、ナイアガラの時とは違い威圧感はありませんでした
。
アメリカパスポート持ちの子供たちは、速攻入国審査完了。
グリーンカードは若干手続きに時間がかかりますが、国境を問題なく越えられる自由さに心から感謝。
たった一枚の半透明のプラスチック製カードがあるだけで、アメリカの国境を自由にに超えられることに驚き。
そして現在でもアメリカ国内にはこのプラスチックのカード一枚が無いために、私がかつて味わったような苦労を長年している人が大勢いる事を思い起こし、複雑な気分になりました。