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大久保寛司の「あり方塾@東京」7期#4プロローグ

今回(2024/9/19)の「あり方塾@東京」のメインゲストは、3回連続登壇となる石原ゆり奈さん…ですが、その前に、寛司さんが「伊那食品工業の訪問勉強会」についてなど、お話してくださいました。寛司さんが見出す「いい会社の本質」とは


現場社員との対話から見える「いい会社の本質」

今日は、「いい会社」の研究をしてらっしゃる大学の先生も特別にお越しということもあるので、ちょっと最初にお話ししますね。昨日・一昨日も、そして11月も2度ほど、伊那食品工業に伺うことになっていますが、伊那食品は、まさに理想の会社だなと思います。

私は、これまでに750時間くらい伊那食品の社員の方々とお話していて、現社長ともご一緒する時間が多いのですが「大久保さんの方が、会社のことを知っている」と言われるんです。確かにですね、生意気に聞こえるかもしれませんけど、伊那食品に関しては、日本で一番知っているかもしれません。

私の勉強会は、社員との対話を重視しているので、ちょっと他のとは違うんです。他の勉強会は、トップの話を聞いて、会社見学をして終わるのが一般的ですが、私は、それでは本質を掴めないと思っているんです。

編集者に信じてもらえないほどの「本当の話」ばかり

実は、これまでの山のような素晴らしい話をまとめて出版しようと思って、かつて、原稿に書き上げたんですが、全ての出版社に断られました。理由はなぜか?誰も信じないんです。信じてもらえないんですね。ある編集者にも「こんなの誰も信じない。ウソの塊だと思われちゃう。」と言われました。

確かにそうですね。伊那食品の素晴らしさは、現地に行かないとわかりません。先日研修でご一緒した役員たちも、事前に本を読んでから参加されたんですが、参加した人たちはみんな「本当ですか」と言うわけです。私は「ぜひ、社員の方に直接確認してください」とお伝えします。
今日いらっしゃる皆さんの中にも、既に伊那食品を訪ねた方が何人もいらっしゃいますけど、感覚のいい人は、現地の雰囲気で、すぐわかります。
それはもうね、社長と、2年目と、12年目の社員と並んで座っている様子と言うか、その雰囲気がめちゃくちゃフラットなんです。一切、垣根がないってのがわかるんです。これはリアルで体感しないとわからないんですよ。


人生最大の変革が起こる学び場

今回の研修でとても面白かったのは、関西のある参加者が、私の講義の冒頭で「わかんない」と言うんです。どんな話をしたかというと、よい結果と、よくない結果(期待はずれな結果)があります。ものごとの本質と言うのは、きわめてシンプルで、全てなるようにしかなってない。だから「よい過程には、よい結果、よくない過程では、よくない結果」この逆はない、と申し上げたんですね。これを「わかんない」と仰る。

ところが、3時間の講義を終えたらですね、彼が近づいてこう言うんです。「私、人の話を素直に聞かないんです。でも、人生で初めて肚落ちしました」と。さらに、そのあとが素晴らしいんです。
「妻と電話で30分、あなたから聞いたことを話しました。『人は正しいことを言っても動かない。人は理解された時に変わる、理解してくれた人の話しか聞かないんだ』と。そうしたら、妻に言われました。『あなたそんなこと、わからなかったの?』」って。

聞けば、奥さんは中学校の先生だそうです。彼女にとったら、子どもとの関係の中で、私が申し上げたことは常識だったわけですね。彼は奥さんに「セミナー出るより、私の話を聞きなさい」と言われたそうです(笑)。
その方には、帰り際に『人生最大の大変革でした』と、大変喜んでいただきました。

「正論は無力」「正しいことを言っても人は動かない」

いつもお話していますが「正論は無力」とか「正しいことを言っても人は動かない」ということを知らない人があまりに多いんです。私は色々な事例を紹介していきます。「部下が正論で素直になったことありますか?」「家族が正論で素直になってますか?」と。「『正論』と言うよくない過程が、よくない結果に繋がっているんですよ」とね。伝わるか伝わらないかは、発言する人、そのものの存在価値だということを知らない人がほとんどなんです。すると、皆さん素直ですねぇ。「部下が思うように動かなかったのは、私がいけなかったんですね」と仰います。だから、私も正直に言っちゃうんですよ。「そうですね、わかりましたか?皆さんは、今まで部下がダメになるように努力してきたんですよ」ってね。「一生懸命」って免罪符になりがちなんですけど、実は、上司が一生懸命、部下の邪魔をしていることの方が多いんです。


究極の「自主性」の会社

伊那食品は、もう50年以上、リーマンショックも、3.11も、コロナもずっと増収増益です。ここの社風とやり方が、それを可能にしています。営業部門も売り上げ目標はない。ただ、会社としての目標はないのですが、個々人は目標をもっています。社長はこう言いますよ。「多分、営業部門はひとりひとり目標を持っていると思います」「ちゃんと結果がでているからいいでしょう」と。

人間はいたってシンプルで「強制」「受け身」では、脳と心の仕組み上、能力が100%全開しないようになっている。だから「自主性の塊」ってのは、一番すごいですよね。ちなみに稟議もありません。全部、話し合いです。稟議を作っている時間が無駄という考え方で、これが究極の生産性なんです。営業会議でも数字の話は出ません。多くの会社では、営業会議のベースは「恐怖」であることが多いですよね。でも、これは、人間の本質からずれている。物事で一番大事なのは、基本のスタンスで考え方です

人は、何のために仕事をしているのか?

伊那食品の塚越最高顧問から、今から20年以上前に教えてもらったことがあります。目の前に姿を見せたら突然「いい所に来た。前に座んなさい」と言われまして「何のために仕事しているのかね?人は」と問われたんです。すぐ答えられなかったら間髪入れずに最高顧問がこう言ったんです。「それは決まっているだろう、幸せになるためだ。幸せになるために仕事をしているんじゃないか?」と。

だから、リーダー研修で申し上げたのは「人は幸せになるために仕事をしているとしたら、あなたがリーダーなら、リーダーの役割はひとつだけ。部下を幸せにすることが仕事ですよね」と。塚越顧問の受け売りですけれどね。
そうそう、顧問は、こうも仰いました。「わしは社長だから、わしの仕事はひとつ、社員が幸せになることじゃ。社員が一番不幸せなのは、会社がつぶれることじゃ。だから次に大事なのは、会社を永続させること。もちろん社員だけじゃない。家族、ビジネスパートナー、地域に対しても喜んでもらえる存在になることは当然だ」と。つまり、マネジメントの軸は、人が幸せになるかどうかが判断基準なんです。この基準でやったらどうなりますか?「ちゃんと仕事をしろ」なんてのは、ものすごい低レベルなわけです。

フラットであること=質の高いコミュニケーションを生む

もうひとつ、伊那食品では、誰も肩書を意識していなくて、全員「先輩」と言う。「先輩がいい人なんだ」というのは、課長も部長も同じで、肩書は単なる符号で、みんな、名前で呼ぶ。コミュニケーションの質が違うんです。肩書、ランクが付いた時、コミュニケーションの質は落ちるんです。上から下に情報は流れるから、フラットが一番いいんです。

私は教科書じゃなくて、リアルな一次情報だけで学んでいるだけなので、そういう話が溜まっていくんです。ある会社の役員が伊那食品で「お宅のような職員を育てるにはどうしたらいいか?」と尋ねられました。伊那食品には、マニュアルもないし、研修も、体系化された教育もありません。敷地内のそば店が忙しくなると、工場の方が店を手伝う。しかもその対応がまた、素晴らしいんです。通販部門が忙しいと、他の部門の電話が鳴るし、社長も注文を取れるんです。みんなトレーニングしている。信じられないくらい、お互いを理解している。どれだけお互いがわかりあえるかが大事なんです。
 
伊那食品は、とにかく社員の表情がいい。表情はごまかせない。研修の参加者曰く、社員の表情と姿に感銘を受けた。僕は言いましたよ。「ならば、他の社員も連れてくるしかないよね」と。

さあ、1時間目は終わりです。ゲストに登壇してもらいましょう。

                     →石原ゆり奈さん登壇に続く


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