2020年放送大学卒業研究メモ
放送大学心理と教育コースに3年次編入をして4年が経ちました。放送大学は卒論(卒業研究)を書かなくても卒業できますが、せっかく大学と名のつくところに入ったのだから教授から指導を受けながら論文を書くというのに憧れていました。ゼミってやつですね。(あと5単位ほど残っているので卒業はまだ先です)
しかし時は2020年。対面のゼミは消失しすべてオンライン開催、論文提出後の口頭諮問もオンラインとなりました。
その中でどうやって色々進めていったのか、研究テーマの決め方や利用したツールなど、なんだかんだで色々あったけど最終的にはマルをもらえて単位修得できたよ、という備忘録として書いておきます。
卒業研究は1年前から準備が必要
まず、放送大学の卒業研究の大きな特徴として、放送大学の卒業研究は1年前から始まります。入学即卒業研究はできず、入学した年は最速でも申請(研究計画書提出)のみとなり始まるのは翌年4月から。また、1年次に入学した場合は申請時に2年以上在籍&62単位以上修得が要件となります。3年次入学はすでに62単位が既修得単位で認められていればその年に申請をすることが可能だそうです。(正確な申請可否は学習センターへお問い合わせください)
5月~6月頃にガイダンスが行われ、「卒業研究履修の手引き」の配布が始まります(学習センターで冊子配布orWAKABAでPDF)。これには申請書類をはじめ、指導教官一覧や過去の研究テーマなど盛りだくさんな内容です。この手引きは卒業研究を申請してから単位修得までは都度見返すことになるので大事にとっておきます。
そして、卒業研究は4月~翌年3月、1年を通して行われます。放送大学は基本、前期と後期に分かれて履修を行いますがその例外が卒業研究です。前期の科目登録で一緒に登録を行い、後期の成績発表のタイミングで一緒に成績が発表されます。
5~6月 ガイダンス、「卒業研究履修の手引き」配布開始
8月 に卒業研究申請(研究計画書提出)締め切り
11月 履修可否連絡くる
この後に研究テーマの修正があったりなかったりして
翌年2月 履修登録申請(申請が通ってもここで履修登録しないと卒業研究を受けられない)
4月 卒業研究指導開始
10月末~11月初旬 卒業研究提出締め切り
11月末~12月初旬 口頭試問会(履修コースによってバラつきがあり)
2月 履修成績発表・単位修得
研究計画書作成&申請、指導教官を誰にするか?
夏に研究計画書を作り提出&申請、審査?選抜?のうえ履修可否が決まります。実は最初の年の申請では履修否で、受けたい指導教官を指名しその指導教官の専門分野で研究テーマを選んで申請しましたがあっさり「準備不足」で撃沈しました。翌年は研究テーマを先に作ったらドンピシャな専門分野の教官がおらず結局「教官指名なし」として申請しましたが履修可となりました。原則所属コースの教官から指導を受けます。
学部レベルなので「基本的に論文とはこういうもの」というのを指導される感じなので、分野が多少違っても研究テーマがしっかりしていれば指導に問題なしということでOKをいただけたのだと想像します。しかし、ここは指導教官によって大きく異なるように思えます。指導教官の専門領域を研究テーマにすればおのずとどんどんツッコミが入るだろうし、学生側も卒業研究○回目なんて猛者がザラにいるので、学部レベルに収まらないこともあるのかなという気もしています。人気の指導教官から教えを請いたい場合は入念に研究計画を練らないとだめで、数年前から準備している方もいるそうです。
ちなみに卒業研究は一年度でどのくらいの方が履修されているのでしょうか?学内イントラWAKABAの資料室に過去の卒業研究のテーマ一覧や一部の論文を見ることができます。それを見ると年間200人?前後くらいなのかなと予想します。
研究テーマをどう決めるか
リサーチクエスチョン、問いを立てること、これが最初にして最大の難関です。これは指導教官にもつながってくるので各学習センターで面談をしながら決めている方もいらっしゃるそうです。地方で距離的な問題がある方は他大学の先生から指導を受けることもあるそうなので、申請前に学習センターで相談してみてください。(申請書の書き方も指導してくれるとかしてくれないとか)私は誰に相談して良いかわからなったので1人で考えて、研究計画書の書き方からリサーチクエスチョンの立て方までひたすら検索しまくって作りました。(すごいね、なんでも出てくるね)
今回の研究テーマは女性の労働に関するものを設定しました。(卒業研究開始後にコロナ禍となり調査の難易度が高くなってしまったため、研究テーマを少し変更しました)研究計画書は1200字程度で現段階でどのように進めていくかを書いていきます。
私が書いたのはこんな感じでした。
・研究の目的
・研究の背景
・研究(調査)の方法
・予想される結果と研究の特徴
・執筆スケジュール
受けたい指導教官がいる人は、その教官の面接授業を事前に申し込んで行って色々質問して顔を覚えてもらう……とかあるようですが、研究計画書の書き方をググり、1人で考えて締め切り3日前一気に書いて出しても通るときは通るので、やりたいことをやればよろし!と思います。
ちなみに、研究計画書について検索してみると、学部の卒業研究(卒論)ではあまり書かないようです。多くは修士の入試に提出する研究計画書の書き方が出てきますが、私はそれを参考にしながら書きました。
先行研究は抜け漏れがあると探し直しで時間をロスする
履修許可の連絡をもらった後は、4月までは一応先行研究を行う期間です。一応というのは、履修許可の連絡~2月に履修登録しても4月まで指導は始まらないので、「4月に入ったらすぐ話ができるように資料は集めておけ」と捉えているといった感じです。
資料は集めておけ。なんて書きましたが、実のところこの時期はコロナだなんだと仕事が忙しかったのもありあまりやっていません。4月でいいかと余裕をかましていたというのもあります。書籍は読めば巻末に参考文献があるので新たな別の文献を探しやすいのですが、国が出している統計資料は先立って探しておいた方がよかったかなと思いました。毎年出るものは執筆しているうちに最新データがアップデートされるし、5年に1回とかたまにしか出ないものがあるので、いつが最新のデータかをきちんと押さえておく必要があります。また、今回の先行研究で利用したデータに関しても複数の調査で行っているものもあり、どの調査の結果を使うかというのも迷ってしまいました。今回は夏を過ぎたころに「あ!文脈的にこっちの調査データ使った方がよかった!」みたいなものも出てきて探しまくって時間をロス。集められる調査資料は先に目星をつけておくことをおすすめします。研究テーマに関連する白書があったら読んでおくと、どんな調査資料を集めたらよいかの参考になります。(いろんな調査の結果が集められているので)
先行研究資料収集はコロナ禍のため紙からwebへ
大学の図書館で借りたりしていたのですが、3~4月はもうのんびり図書館へ行ってなんてこともできず、ひたすら手元で探せる資料を探しまくりました。もともと書籍よりwebの方が探しやすいテーマでもあったので、統計資料や論文を中心に検索しました。
Google Scholar
CiNii
J-Stage
e-Stat 政府統計の総合窓口
厚生労働省
内閣府男女共同参画局(男女共同参画白書)
独立行政法人労働政策研究・研修機構
人材系(求人・紹介)の業界団体など
先行研究資料はGoogleドライブとGitHubのIssueで管理
研究者だとPaperpileやMendeleyあたりが出てくるので自分でも使ってみたのですが、さすがに学部ではそこまで……って感じです。結局、論文系はログインするとブックマークできるのでそれを利用、念のためいつでも読めるようにダウンロードしてGoogleドライブへ保存。ファイル名はナンバリング(IssueのNO)を付加してGitHubのIssueと組み合わせる。集めたもののリスト管理やメモはGitHubを使いました。文献1件ごとにIssueを立てて、Googleドライブのリンクと概要を記載、思いついたらコメントに順次メモを残していく。で、先行研究をまとめたものはcodeでページを作ってテキスト入力。何が良いって、メモを書いて「これはあの資料から引用」みたいなときにIssueへのリンクが追加できること。「この意見は誰が言っていたか」を意見の横にIssueを積み上げておくと、執筆の時にすぐ引き出せるのでとても楽でした。テキストエディタはVSCodeを使い、書いてはGit連携して更新、バージョン管理もできる。これも最高でした。(本当は論文作成もGitベースにしたかったけど断念)
ゼミはzoomで、対面で会うことは叶わず
指導教官が決まり4月になるとゼミが始まります。私が所属するゼミは学生2名。しかし、もう1名の方はご事情等あり結局先生と1on1で進めることとなりました。そのため、月1や定期的にゼミを進めるということはなくなり、適宜メールで進捗報告するくらいの感じです。
ゼミの開催規模は頻度は教官によって異なるようで、月1で必ず開催しているところや、教官が指導する修士課程のゼミと同時開催で10人ほどが集まることもあるようです。本当にゼミによって異なるようです。
やはり放送大学は「みなさんご家庭やお仕事があるから」というのが枕詞として入るのが特徴で「無理しないこと」というのが前提としてあります。3年次にゼミに所属して4年次に卒論を書かないと卒業できない大学生と比較すると放送大学は確かにユルいなと思いますが、やるのも自由やらないのも自由というのはこういった通信制では当たり前ではあるものの、自由だからこその厳しさというものもあります。社会人になる前に大学へ行ってゼミに所属しているような場合だと、先生や先輩、同級生がケツを叩いてくれるわけです。しかし、放送大学は一切ありません。(他のゼミならあるのかな?)ただその救済措置がないわけではなく、卒業研究は翌年に再履修の制度があり、通常の授業の単位認定試験は翌学期まで持ち越せるという制度がありますので、もし「無理!」となったらまずは相談してみてください。
論文の体裁ってどうするの?
これがまたフリーダムな感じで「卒業研究の手引き」には1ページの文字数と最終的に目次を作って印刷製本して大学本部へ送ってくださいと記載されているのですが、引用文献の書き方や章立てや句読点のお作法などは提示がないため、完全に手探りでした。ましてや学内イントラで公開されていてる過去論文を見ても、規定以外の章立てのナンバリングや文字のフォントもバラバラだったのでそこまで神経質になる必要はないと思いますが、これも指導教官次第かと。
といっても書き方は統一しておかないといけないので、所属するコースが心理と教育コースというのもあり、日本心理学会の論文投稿のお作法を見本として作成しました。先生に「先生が書いている論文の体裁教えてください」と直接聞いてしまうというのも手です。
アンケート調査が必要だ、どうする?
今回の卒業研究ではアンケート調査を行うことになりました。サンプル数は最低50、目標100。これは調査内容によって変動があると思います。私が行った研究はそもそも50も集まるんだろうか?というレベルだったので、リファラル以外にもツテを探さなくてはなりません。なので、よくあるのが放送大学の学生が集うSNSへの投稿。しかしながら、これは1つの手段であって、他にも手段は用意しておかないといけません。と言いつつ、私は業界の関係者に依頼すると母数に偏りが出そうというのもあって、リファラルとTwitterにいる調査対象者に向けて依頼するという形をとりました。放送大学系のSNSは調査対象者が100人に1人いるかいないか、その1人がこの投稿を見る確度も低そうだったので投稿はしませんでした。
・調査対象者は誰か?
・調査対象者はどこにいるか?
・負担にならないアンケートか(質問数や回答方法)
・集計はどのようにするか(検定までするかクロス集計くらいにしておくか)
余談。
以前、公園で子供と遊んでいると、ビジネス系の大学院生が調査研究のためにアンケートに回答をお願いしたいときました。お題目は保育の質について。内容は保育というより早期教育のような内容ばかりで「あれ?この院生のみなさんは幼稚園と保育園の違いを分かっていてこの質問をしているのだろうか?」という疑問が起こったりしました。
幼稚園は文部科学省管轄、保育園は厚生労働省管轄なので目的が違う。保育園でも教育をさせたいという気持ちはわからないでもないが、それは文科省への横やりとも取れる行為だし、厚労省の管轄から逸脱した行為になってしまう可能性がある。院生たちが考えているようなことは子供を預けている身からすると保育園で行うには現時点では実現可能性は低いと考えます。アンケートには「保育についてはまだまだ課題が山積みで、YOUたちが考えるようなことが実現するためには、今の保育の課題を全部解決しないと難しいっす。その前に保育士の賃金を上げる方法を考えて!(意訳)」と回答しました。
なので、調査票は作ったら一度誰かに見てもらってツッコミ入れてもらった方が更によくなります。
私が調査票を作った時は指導教官以外にも2名の方に見ていただきました。ひとりはマーケティングリサーチをしている友人でアンケートの冗長なところを指摘してくれました。もう一人は研究テーマに関連する士業の友人、見聞きしている実態と差異がないかを指摘してくれました。
結果として調査はリファラルで数十名、Twitter経由で200名近くの回答を得ることができました(回答していただいた方をはじめ、リツイートしていただいた方々にも大変感謝です。ありがとうございます。)
アンケート調査のツールはSurveyMonkey
これ、迷いますね。定番はGoogleフォームでしょうか。お手軽に使えてよいと思います。他に卒業研究をされていた方でouj.ac.jpのドメインの調査票を使われる方も見受けられたのですが、これは何だったんだろう。私は何も言われなかったのでこのドメインの調査票を使える人と使えない人がいるのかもしれない。
ということで、調査内容をふまえるとGoogleフォームではちょっとやりにくいと感じて、SurveyMonkeyを個人で数ヶ月課金して利用しました。同じフォームだけど別々のURLリンクを作成して誘導ができるので、どの経由での回答だったのか一発でわかるのが便利でした。(上限撤廃含め機能が段違いなので課金したほうが圧倒的に使いやすいです)
執筆はGoogleドキュメント、グラフ作成もGoogleスプレッドシート
アンケート結果はGoogleスプレッドシートに展開して表やグラフを作成しました。これは、論文執筆をGoogleドキュメントで行ったため相性の良さから選びました。Wordで書けばExcelにしていたところです。
本当は論文執筆もGitでやりたいところだったんですが、最終的に章立てにしてナンバリングをする必要性があり、そこがうまいことできなかったのであきらめました。書ききってからまとめてナンバリングできるならGit管理でいけそうですが。
ではなぜWordではなくGoogleドキュメントにしたか?これはよくある論文消失事件に備えての防御策として選びました。オンラインでの使い勝手はMicrosoftよりGoogleの方が個人的に好きってのもあり、たまにスマホでちょっと一文付け足しておきたいなんて時はGoogleドキュメントの方がやりやすかったです。また、StackEditというブラウザで使えるMarkdownエディタがあり、GoogleドライブやGitHubとアカウント連携することができます。Googleドキュメントで書いてGoogleドライブに保存しつつ、適宜バックアップとしてGitHubにも送っておく、なんてことができます。あと、Googleドキュメントの良いところ、放送大学で配布されるアカウントはouj.ac.jpドメインの中身はGSuiteです。なので途中まで執筆して見てもらう時は先生のアカウントを共有すれば見てもらうことが可能になりますし、Googleドライブのフォルダを共有しておけば、先行研究の資料もそこからピックアップしてもらうことが可能になります。(先生によってやり方のお作法があると思うので、お作法があるときはそれに従ってください)でも、日本語で論文を書くならやはりWordなんですよね。Googleドキュメントは図表番号や引用文献まわりが苦手なので、これらが多いときはWordの方が良いかもしれません。(今回はGoogleドキュメントでやり切った)
グラフは色と体裁と整える
調査を行うと必ずと言ってよいほどグラフが出てきます。本文を書くだけで息絶えそうになるのですが、パワポ職人としてはグラフにもこだわりたい。グラフを作ってから体裁を直すと全部のグラフを直さないといけないので、最初に型を作っておくことをおすすめします。
参考にしたのはこの辺り。
『カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット ガイドブック』第2版
発行年:2018年
発行者:カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット制作委員会
https://jfly.uni-koeln.de/colorset/
やっぱり魔物はいた、印刷時のプリンタインク切れ
最後は息も絶え絶えに、締め切り前日に先生と最終ゼミで内容確認。OKをもらって2部印刷して大学本部へ送付します。
最後に必要なこれらは最終OKをもらう前に準備しておきます。買いに行く時間もないし、買いに行って売り切れていたら涙も出ない。
・コピー用紙数百枚→ヨドバシで束で買っておけ
・穴あけ式ファイル2部→ヨドバシで(略
・プリンタインク→ヨドバ(略
・穴あけパンチ→100均のでも何とかなる
・赤いレターパック→赤の方です!!!(ローソンで売ってる)
何はともあれ一番大事なのはプリンタのインク。やっぱり途中でなくなりました。ありがとうドンキ。まさかBrotherが売っているとは思わなかった。もし、Kinko'sみたいなところへ出せるならそうしたほうが確実な気もしますが、それはそれで持って行ったUSBメモリが壊れたとか、また何かのアクシデントが発生するのが卒業研究。
みなさまよき放送大学ライフをお過ごしください。
(過去の文章をUPし直しました)
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