作詞の方法論-お題から歌詞を作ろう-
こんばんは。
今回は有志で行っている勉強会の要望の一つとして
というお声が多かったので歌詞のプレゼン回を行いました。
ちなみに歌詞の回については以前もこちらでお伝えしております。
前回は歌詞の書き方をタイプ別にわけたお話。
このタイプ別での書き方の違いをお伝えしました。
書き方による違いによってストーリーがどう紡がれるかということに焦点が当たっていました。
今回は作詞、歌詞の言葉選びという所に焦点を当てて、お話します。
プレゼンではこの5つにまとめておりますが
お話として詳細にご説明する章もありますため、下記のように細分化します。
1-1.【前回の復習】 視点別作詞の違い_作詞の概要
作詞とは物語の脚本です。
情景・心情の変化・登場人物・時間軸全てを総合した物語の核となります。
脚本とは何ぞ?という方に少し説明をすると物語の説明書みたいなもの
だと思っています。
基本となるのは以下の4つ。
情景は風景と置き換えて解釈いただいてもこの場合は問題無いと思います。
楽曲は平均3分〜5分程度ですのでその中で物語を作らなければいけません。
あくまで軸となる4大要素ではありますが、必ず盛り込まなければいけないということはありません。
だからこそ、どこに重きを置くかで書き方が変わり、物語も変わる。
歌詞は音楽の情景に彩りを添えるものです。
とはいえ、楽曲の時間はおおよそ決まっていることから
説明的なのはどこか向かない。
ということが大事になってきます。
1-2.【前回の復習】 視点別作詞の違い_まとめ
作詞は説明文ではないので余白を残すこと+ストーリー説明のバランスが重要になってきます。
その時にいかに短い単語で意味に幅を持たせるかというのは
テクニックの一つになります。
2.今回のお題について
今回は擬似的に楽曲の発注書のようなものを勉強会のために作成しました。
なお、作詞の勉強のため、「こういう歌詞を書いてください」的な指示書です。
※勉強会の中では画像もありましたが、肖像権に配慮し、イメージとして伏せております。
このような形でコンペディションのような状態を作るために準備。
1.想定しているアーティストの選定(AKB48)
→コンペディションの対象になりやすい且つ、作品幅の広いアイドルを選択
※あくまで学習の一環のため狭めてはならないため。
2.テーマ設定のお願い(自由指定/こちらで指定)
→テーマ設定においては作詞に慣れていなかった方もいたため、
自由に書けるパターンとお題を用意。
3.禁止ワードの指定
→また、あくまでお題から作ることも趣旨の一つとしてあるので
制約を決めました。
4.楽曲の準備
今回はこちらの曲を用意。今回のために軽く制作いたしました。
※歌詞に使う譜面はこちらよりダウンロードして、ぜひ挑戦してみてください。
3-1.課題提出例
開催した日がクリスマスが近かったということもあって
クリスマスをテーマに制作して下さったようです。
3-2.課題提出例に対してのフィードバック
模擬コンペディションという形で進ませていただき、
せっかく課題を提出いただいたので僭越ながらフィードバックをさせて頂きました。
お返ししたフィードバックをお返ししたものがこちらです。
基本的に全体のフィードバックと、下記4点をポイントにまとめさせていただきました。
※黒枠はお名前のため伏せております。
1.良かった点
・倒置法や比喩が使えている
・「残業で疲れた」→一目でわかる主人公のやるせなさ
2.もっとよくなる点
・直接的な言葉の多用で表現を狭めている
・説明的な部分がある
3.総評
・比喩がとてもいい。
・テクニックは自然と使えているものの、説明的で、勿体無いです。
4.歌詞の参考曲
クリスマスソング - back number
TBS系2020年10月-12月期火曜ドラマ「この恋あたためますか」の主題歌ですね。
このドラマ好きで唯一、欠かさず見てました。
愛しさにリボンをかけて- Little Glee Monster
4-1.私の作詞例
課題を出しておいて私はしないというわけにはいかないので
私なりの歌詞をご提示して解説をさせて頂きたいと思います。
【テーマ】長い髪のマドンナに話しかけられない
半ば諦め?強がりの男の子の気持ち
※数字は小節数
4-2.私の作詞例の解説(Aメロ〜Bメロ)
赤枠の部分からまずは解説していきます。
まずはAメロ。
色ごとに分けさせて頂きましたが、ポイントはこちら。
基本的にはAメロとなる部分は歌詞の始まりとなる部分ですので
リスナーに想像させること、どんな物語かということをイメージしてもらう必要があります。
なのでまずは曲の世界を知ってもらうために情景を描く事も多いです。
また音数が少ないので情景に広がりを持たせる場合には
単語をどのように並べるかが重要になります。
Aメロの一行目であれば、本来、
もしくは
二行目はその主人公のみてる景色に時間の流れをつけてあげる必要があります。
一行目が状況説明であったからこそ、その対比として比喩表現となる
「神様のいたずら」を入れてリスナーの気を歌詞に持っていきます。
その後には少しその比喩表現に対して説明を入れなくてはなりません。
ここを説明しているのが
元々の意味の言葉や文章はこのようになります。
そこからどの言葉や接続詞を残し、どの言葉や接続詞を捨てるのかといった取捨選択が大事になってきます。
となります。
またここで「長い髪/甘い香り」の単語から大体の人は主人公がみている君が女性であるというイメージがわくと思います。
最後には春が来るという単語で恋心の訪れを想起させ、
最後に主人公の気持ちを入れる事でBメロへ繋ぎます。
お次はBメロ。ポイントはこちら。
無理をするつもりなんて見てられない(Ah)
→ため息/頬杖に絡ませて心配する主人公の動きをここで入れます。
だけど 僕の声さえ届かないまま
→対象(女の子)と主人公の距離感を提示
心情に反してうまくいかないことがキーワードになってきます。
4-3.私の作詞例の解説(サビ)
お次はこちらの部分の解説を進めていきます。
Aメロの情景とBメロの心情それぞれを踏まえた上でサビでは言葉を紡いでいきます。まずは前半から。
ここで大事になってくるポイントはこちら。
まず、印象に残りそうな単語で言えば
ということになりますが、サビの頭に持ってくることで
対角線の恋ってなに?という疑問を持たせられます。
疑問を持たせた後はその説明が必要になるのでその説明になりそうな言葉を加えます。その言葉が端と端。
ここで主人公と女の子の位置関係が確定します。
※青い丸は主人公の位置、オレンジは女の子の位置関係です。
ちなみにここでは物足りないままと言っています。
そのため、物足りないから起こしてしまっている行動と後ろ向きな心情を描きます。
サビの継続感を残すというポイントですが
この言葉がそれに当たります。
叶わないふりってなに?諦めてしまっている?
少し後ろ向きな言葉を使い、もやもやを残してサビのふた回し目にいきます。
サビ後半の歌詞はこちらです。ここでのポイントは下記。
この言葉で主人公が後ろ向きになっていた理由が明確になります。
ここも、短い歌詞であるが故に、理由はシンプルである方が語気も強くなりますし、伝わりやすくなります。
リスナーからすると歌詞と楽曲を聞いているのでその時点で情報量が多いです。歌詞を大事にするという意味でいうといかに伝わらなければ意味がないと私は思っています。だからこそ、ここは比喩表現ではなく、ストレートに言葉を選ぶということがあってもいいのではと思います。
この単語により情景と主人公、周囲の登場人物が確定します。
→学生であることと場所が学校であることがわかる。
最後に主人公の状態を比喩した単語(弱虫のI Love You)を一つ入れ、
タイトルにも使用。全体としてパッケージ化します。
4-4 私の作詞例の解説-お題と関連して-
ボーカル指定がAKB48に対しての解説。
実は可愛く振りを入れられそうな箇所を歌詞の中に残しています。
また楽曲ストーリーを学生とすることで可愛い振りがつけやすくなります。それに加えて掛け合いをする箇所も作っています。
Bメロは歌詞が少ないので緩急をつける為、特に指定はしていません。
5.まとめ
以前もお話しましたが作詞というものには正解はありません。
作詞に挑戦された方を始め、学びとなるものがあれば嬉しいです。
前回の4つのポイントである
情景・心情・登場人物・時間ということだけではなく、
コンペディションという形を取った場合の
という部分まで掘り下げてお伝えしました。
小説を読む方は理解がしやすいかなと思いますが物語はどの視点から見るかが大切です。
「一元視点」「多元視点」で調べてみてください。
楽曲に置ける音楽が物語のサントラである場合は、ボーカルはストーリーテラーになります。
指定されたアーティストにどんな楽曲を歌って欲しいかと考えることで
作詞家目線になり、言葉の選び方も変わります。
今回もあくまで一例ですので参考としていただければ嬉しいです。