OW-N-01-c

※当文書は管理者権限を与えられた社員並びに認可を受けた協力業者のみに開示されています。閲覧許可を持たない者がこれを閲覧、複製した場合には社内法4条に基づき適切な処分が行われます。





〈1〉


OW-N-01-cはOW-N-01のクローン体です。アダチ・ディストリクト第██地区、旧███丁目施設の廃墟から発見されたDNAデータを基にクローニングされました。OW-N-01の情報開示については弊社役員クラスの承認が必要となります。

対象は高濃度の酸素を充填した特殊な溶液カプセル中に封じています。警戒レベル5以上の事象が発生した場合には直ちに非常釦を押してください。自動的に処分が実行されます。

対象は眠っているかのような振る舞いをしますが、こちらの会話を聴いているような脳波が検出されています。OW-N-01-cの管理区画においては一切の会話を禁止します。

対象が覚醒した時、観察するようにこちらを見ることがあります。決して目を合わせないでください。コミュニケーションを図ろうとしますが、無視してください。すぐにカプセルのスクリーンを下ろし、無言のまま退室してください。

〈2〉

添付資料
・██月██日 録音音声

 ——諸君らはこの未知のテクノロジーたるフォトンが人類に対して何もリスクを負わせずに存在していると思うか?私はそうは思わない。凝縮することによって質量を持ち、直接に動力や電力の代替となり、通信の媒介ともなるフォトン。恐らく数年以内にこのテクノロジーは容易く普及し、その危険性も充分に周知されないまま人々の生活に根付くだろう。大きなパラダイムシフトだ。しかし忘れてはならない。『大いなる力には大いなる責任が伴う』という警句は、もはや現実のものとなりつつある。この培養液の子供は、少なくとも我々と同じ人間ではない。その血肉にフォトンが流れ、やがて手足のように扱うだろう。諸君の安全を保証することはできないが、それでも我々がやらねばならないことだ。アダチがどのようにフォトンを行使し、あの惨劇をいかなる方法で引き起こしたのか……まあいい、とにかくあれを人間だと思うな。同情もするな。全ては研究、研究なのだ——


〈3〉

・█月█日 報告書 ██

 2名の作業員と共に栄養剤の投与を行った。当作業は滞りなく終了し、2名は先に退出させ、私は脳波測定のため引き続き作業を行った。途中、カプセル内を覗き込むと、"彼女"と目が合ってしまった。声は聞こえないが、何かを喋っているようだった。危険を感じたため、スクリーンを下ろそうと試みたものの機能せず、脳波計が異常な数値を示したため非常釦を押下した。酸素濃度計がゼロになるのを確認して"彼女"を見ると、うすく笑みを浮かべて動きを止めていた。恐怖からそのまま退室してしまったが、爪だけが急速に伸びていたように見えた。監視映像で確認されたし。

(映像を確認したが報告書にある脳波計の異常、肉体変化は確認できず、非常釦が押下された記録もなし。スクリーンは故障と判断。██はメディカルチェックを受け異常は見られなかったものの担当から除外。研究を続行することとする)


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