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拍手によって完成する怪談『東海道四谷怪談外伝「嘘」』(福山潤さん×羽佐間道夫さん)

こんばんは!アニメとドイツ語とハシビロコウが大好きなフリーライター、ハシビロコです。
この記事では私がプライベートで視聴した作品の感想をつづっていきます。
※前半は物語のネタバレなし、後半はネタバレありでお送りします!


今回取り上げるのはLAL STORYによる朗読劇『東海道四谷怪談外伝「嘘」』
私の大好きな声優さん、福山潤さん羽佐間道夫さんによる公演を観劇してきました!

『東海道四谷怪談』を大胆にアレンジ!

『東海道四谷怪談』といえば、鶴屋南北作の歌舞伎作品。イケメンだけれど性格に難ありの田宮伊右衛門と、妻のお岩の物語です。葛飾北斎が描いた「百物語」シリーズのひとつ、「お岩さん」でも有名ですね。
ちなみに私は『鬼灯の冷徹』に登場するお岩さんと伊右衛門のイメージが強いです。

そんな有名な作品の「外伝」、さらに「嘘」とはいかに。
期待に胸を膨らませ、会場である白金高輪 セレネ スタジオ SELENE b2に向かいました。

開演前から伏線だらけ

会場でチケットを引き換えると、ノベルティとしてクリアファイル、そしてをもらいました。クリアファイルはともかく、他の2つが怪談っぽさを出しています。
しかしこのアイテムの本当の意味がわかるのは終演後だったり……。

客席に足を踏み入れると、そこに広がっていたのは、会場中央につくられた特設ステージ。ステージ中央にはマイクと椅子だけが置かれていて、どのような演出になるのかまったく予想がつきませんでした。

2階には物語に合わせて生演奏をするミュージシャンの方が控えています。三味線とチェロによる音楽は、ときに荒々しく、ときに妖しく怪談の世界を奏でます。
客席後方の壁は白い幕で覆われており、異空間らしさを演出していました。

静けさと熱さが共存する空間

いよいよ公演が始まると、会場内は気温が下がったかのような静けさに包まれます。
実際には音楽やセリフなどが聞こえるのですが、雪が降り積もっていくようなしんとした空気が耳を刺激しているように感じました。

羽佐間さんが演じるのは宅悦(たくえつ)という名の老人。鶴屋南北に『東海道四谷怪談』のもととなった話を伝えた、という人物です。
喉の奥から言葉を絞り出すかのように語る羽佐間さんの声に、終始引き込まれました。目力や仕草も宅悦そのもの。老いても目の奥に残る宅悦の力強さが、表情からも伝わってきました。

福山さんが演じる若旦那は、とある理由から宅悦のもとを訪ねてきた人物。気品のあるたたずまいと凛とした声から、若旦那の自信を感じ取ることができます。羽佐間さんと1対1でかけあいをする福山さんの演技には、一歩も引かないという気迫が込められていたように思います。

羽佐間さんと福山さんは終始椅子に腰かけており、背中合わせのままかけあいをしていきます。
しかし客席全体に顔が見えるようにステージの一部が回転し、物語にアクセントを加えていました。それはまるで回転灯を見ているかのよう
回転のスピードもセリフに合わせて調整されており、飽きさせない工夫がされていました。

~ここから物語のネタバレを含みます。~

暴かれた嘘が見せる新たな景色

今作のポイントは、タイトルにも含まれている「嘘」
『東海道四谷怪談』に込められた嘘。宅悦の話に秘められた嘘。若旦那が心の底に隠した嘘。
それらが明かされたとき、物語も人物も、まったく違った表情を見せるのです。

羽佐間さんは当初、宅悦をいかにも頼りない貧乏人のように演じていました。
『東海道四谷怪談』の真実を知りたい若旦那から金を積まれたときは、いかにも金に目がくらんだいやしい人物のように見えました。
しかしこれは仮の姿。宅悦の正体が伊右衛門だと明かされた瞬間、眼光が鋭さを増し、声で若旦那の喉元にナイフを突きつけるのです。

若旦那役の福山さんも、冒頭では良家の跡取りのようにふるまっていました。
しかしその正体は『東海道四谷怪談』で伊右衛門を演じる役者。お岩さんのたたりを断ち切ろうと、宅悦から『東海道四谷怪談』の真実を聞き出そうとしたのです。
若旦那は生にしがみつく姿が印象的。何が何でも生き延びたいという執着がありながらも、終盤は恐怖に屈したように見えました。しかし去り際に、油断した宅悦に対して一矢報いていたのはちょっとした爽快感がありました。

拍手で成り立つ怪談

今作で語られている、「東海道四谷怪談はなぜ嘘だらけの話になったのか」という解釈も衝撃的でした。

『東海道四谷怪談』の作者・鶴屋南北はお客さんが面白いと思うものを追求し、その結果、物語の中でお岩にひどい仕打ちをします。
つまり間接的には、お客さんがお岩を痛めつけていたということ。
「拍手が鳴りやまない限り、お岩のたたりは消えない」という意味のセリフがあったように、たたりを成立させているのはお客さんの無邪気な拍手だったのです。

終演後、私を含め会場全体が自然と拍手を送ります。
素晴らしい演技と深みのある物語、それらを引き立てる演出の数々。感謝の気持ちも込めて送る拍手はしかし、お岩さんのたたりを継続させる原因となっているのかもしれません。

終演後も物語は続く

ここで最初にもらったノベルティを思い返してみましょう。
櫛はお岩さんの髪が抜けるときの象徴。そして塩はおそらくお清めのため。
道具に秘められた本当の意味がわかったとき、忘れかけていた寒気がよみがえってきました

終演後もなお物語の世界から私たちを離さない『東海道四谷怪談外伝「嘘」』。
2月3日まで上演していますので、ぜひ実際にあの世界を体感してみてください!前売り券は完売していますが、当日券もあるそうですよ。

観劇日
2019年1月31日 17:00~18:15

公式サイト
https://kagurazakakkd.wixsite.com/sumu00

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