強烈で優しい。
思い切りの良さと、洋服への絶妙な落とし所。冬のカシミアを筆頭にHERILLの魅力のひとつはそこにあると感じていて、スプラッシュペイントも正にその代表格と言える。デニムやダックというワークモデルに、同じくペンキ飛ばしという本来は偶発的に生まれるワークデザインを重ねていながらも、不思議とユニセックスで着る人を問わないファッションアイテムとして完成されている。
そして、同様に今季も然り。最高の2本が届いた。
アメリカを代表する某ワークブランドが製作していたダブルニー仕様のペインターパンツをモデルに、ブリーチ加工を施した15ozに相当するコットン100%のデニム生地と、洗いを施したダック生地で製作。
そして国内の職人が手作業で吹きかけるスプラッシュペイントにより、フロント、サイド、バックと全てが1点1点異なっており、独特なリアリティーある抜群の雰囲気はHERILLのこの1本でしか体感出来ないと言える程、本当に凄まじい。
また、自身のケアで洗いを繰り返す事でペイントは更に馴染み、ダックに関しては穿き込んでいく事で徐々に硬さが軽減し、少しずつ柔らかく変化していく経過が味わえる点も醍醐味のひとつ。
ディティールの中でも特に目を惹く膝穴は、貫通させずに裏地を配した仕様。そうする事で所謂グランジ的な印象ではなく、より汎用性を求めたリアルクロージング的1本としている事も大きな魅力だ。デニムに関しては敢えて濃淡の違いを出すことで、不思議とパッチワークにも見えるいい違和感があり、そこには手の痕跡を感じるような愛着が既に存在している。
生地のベースカラーや、ペイントのくすんだトーンにより意外にも合わせ知らずで、スタイルとしてはクタクタのリネンシャツや素朴な風合いが漂うサマーニットと馴染ませるように穿いても良いし、色鮮やかなドレスシャツやジャケットを崩すように合わせても良い。
また、パッと見の印象は古着、いや古着以上の凄まじさがあるが、腰回りのパターンや股上の設計は現代的なフィッティングで窮屈さが無いというのも嬉しい魅力。
そして今作は過去のシリーズよりもレングスの長さが設けられており、裾まで与えられた魅力的なダメージを考えると、より活かした穿き方を推奨するべくnariwaiでは2サイズの展開としている。
穿く人の日常という痕跡も重ねていく事で、HERILLのスプラッシュペインターは本当の意味でリアリティーある雰囲気へと育っていく。
ただ、それは鑑賞するようなアートピース的な立ち位置ではなく、あくまでも他の洋服と変わらない普遍的な立ち位置のまま楽しめるリアリティーとしてだ。
この2本には、強烈な印象の中にそんな優しさとも言える確かな懐の深さが窺える。
4.27(土)
18:00 - Store release
筆者
nariwai store manager
橋場 祐人
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