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この「にほんの棒」に、人生を賭ける価値はあるのか?

こんにちは。熊本県南関町で60年以上「竹の、箸だけ」を作り続ける株式会社ヤマチクの3代目、山﨑彰悟です。

私は10年前、24歳の頃に家業であるヤマチクに入社しました。
取材の時などに「家業に戻ってきた理由は?」とよく聞かれます。
その際、「家業を継ぐのが当たり前と思っていたから」という答えを返していました。たまたま家業が「竹のお箸を作る会社」だっただけ。もし他の事業でも、全力で取り組んでいたと思います。言い換えれば、戻った当初は「お箸」に対して特別な感情は持っていなかったというのが正直なところです。

しかしこの10年間、「お箸」というものに真剣に向き合う中で、その文化的価値、社会的意義そして、世界的市場性がとんでもなく高いことに気づきました。
今ではこの「にほんの棒」に、人生を捧げる価値があると心底感じています。

文化的価値 ~日本のお箸のルーツを守る~

「箸」という漢字の部首は竹冠。
日本のお箸の歴史は、7世紀頃、遣隋使の時代に竹からはじまりました。
日本では食事の時に「いただきます」と手を合わせます。
あらゆる命に感謝を示し、残さず綺麗に食べる。

だからこそ、米粒もつまめる。魚も綺麗に食べられる。
そんな軽くて箸先が繊細な竹のお箸が生まれました。
箸食文化は世界人口の30%以上。しかしここまで箸の機能にこだわり抜くのは日本独自の文化です。

しかしそんな日本の箸文化も変わってしまいました。
安価な輸入木材やプラスチック製のお箸が市場の90%以上。
日本の竹のお箸は、食卓から姿を消しつつあります。

ヤマチクは日本の竹のお箸の最後の砦。
日本のお箸のルーツ、そして「いただきます」に込められた日本人の「いのち」への向き合い方を未来につなぐことが、ヤマチクのミッション。
1000年以上続く文化を担う大事業です。

社会的意義 ~竹と人の営みのはしわたし~

古来から日本人の営みを支えてきました。
春は筍としてお腹を満たし、竹になればモノづくりの資材になる。
竹は生長が早く、筍からたった3ヶ月で20mほどの竹になります。
今世界が注目する、サスティナブルな資源です。
しかし日本では今、「竹害」が社会課題になっています。

輸入品やプラスチック製品の台頭により、竹製品の需要が激減。
それに伴い竹を切る「切り子」という職人がいなくなってしまいました。

いくら資源がサスティナブルでも、それに携わる人たちの営みが続かなければ、その資源は活かせません。
竹のお箸をもう一度普及させ、切り子さんをはじめ竹に携わる人たちの営みを豊かにする。そのためにヤマチクは自社ブランドを作りました。

ヤマチクのお箸づくりは、竹と人との営みをもういちど繋ぎなおす「はしわたし」でもあります。

世界的市場性 ~ヤマチクからYAMACHIKUへ~

前述の通り、箸食文化はアジアを中心に世界人口の30%以上。
つまり24億人以上の市場があります。
それに加えて、SUSHIなどの日本食や、ラーメンなどの麺料理の広がりによって、世界中の人にとってお箸は身近になっています。

現在、ヤマチクは韓国、アメリカ、フランス、イタリア、スイスなど、17ヶ国にお箸を輸出しています。特に韓国には毎月1万膳近くのお箸を輸出しています。
韓国といえば「ステンレス製のお箸」が主流。でも、食べ物が扱いやすく、デザインも可愛いヤマチクの竹のお箸がじわじわと受け入れられています。

さらに9月13日〜14日にオランダで行われた「MONO JAPAN Fes」では、3日間で4896.50ユーロ (日本円で76万円)という売上を記録しました。

海外でのPOP-UPは初めてだったので、オランダのお客様に
"Do you usually use Chopsticks?"
"What do you eat with chopsticks?"
と中学生英語を連呼していました。
そしたら喜んで現地のお箸事情を教えてくれました。

「家でお寿司や麺を食べる時につかう!」
「お料理にもよくお箸を使うよ!」
「今度日本に旅行行くから、家で練習する!」
「和食レストランでお箸が綺麗に使えないと恥ずかしい・・。」
「子どももSUSHIが好きだから、お箸を練習させているよ。」
「こんな綺麗なお箸、食洗機なんか入れないよ!」

正直、菜箸や子ども用のお箸まで需要があるとは想像していませんでした。
「食洗機入れられないとだめかな」と思っていたんですが、漆塗りのお箸が飛ぶように売れ、「手洗いでも使いたい」というお客様が多かったです。
やっぱり現地で直接お客様に合わないとわからないものです。

ヨーロッパでは使い心地とデザインを両立したお箸は手に入らないようで、ヤマチクの機能性が高く、シンプルなデザインのお箸はとても歓迎されました。
加えて「竹-Bamboo-」への関心も高く、ヤマチクのめざす持続可能なお箸作りにも共感してくれました。

ヤマチクのお箸は、世界でちゃんと通用する。
日本のお箸文化、そしてそのマナーに表れる精神文化を、正しく世界に届ける。
お箸が"Chopsticks"ではなく"YAMACHIKU"と呼ばれる世界は、決して夢物語ではありません。


たかがお箸、されどお箸。

10年前、まさか「竹の、箸だけ」でここまで多くのことが語れるとは思っていませんでした。今では心底ヤマチクに携われていることに誇りを感じています。
バリューに据えた「自信を持って愛される」という言葉にある通り、ヤマチクで働く社員さん達にも、「自分たちはすごい仕事をしている!」という誇りを持って欲しいと心底感じます。

たかがお箸。でも、されどお箸です。
わたしはこの「にほんの棒」に人生を捧げる価値があると信じています。
なぜならヤマチクが作り届けるのは、ただの「2本の棒」ではなく、「日本の心」なのだから。

そしてもしこの記事を読んで、「この文化を世界に、そして未来に届けたい!」という人がいつでも山﨑彰悟にご連絡ください。




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