500円と750円のほうじ茶のちがい

「まさに神コンテンツ」と信じられる、しかし多くの人々にとって毒薬のような対談取材を終え、五反田でもうひとつ和やかな対談取材をこなし、打ち合わせのために神楽坂へ。

すこし早く着いたので坂をぶらぶらする。なんとなくコンビニで缶のハイボールを買って飲む。「なんとなく」で酒なんか飲むものではないんだけど、ぼくは結構好きなのだ。「なんとなく」って、内なる自分の甘えとか直感とか、ラブや嫌悪まで含めたこころの動きだから、尊重してあげたほうがいいのかなとおもう。

ぶらぶらしていると、お茶を煎る香り。お茶屋さんの店頭で、ほうじ茶をまさにつくっているところだった。透明な大袋に詰められていて、張りのある焦げ茶色はまぶしく見える。

数日前から安田弘之さんのマンガ『ちひろさん』にハマっているのもあって、街中の出会いみたいなものを大切にしたい気持ちがわいてきた。話しかけてみる。

「この、500円と750円のほうじ茶はどんな違いがあるんですか?」

「茶葉のちがいなんです。値段が高いほうが香りが豊かですね。でも、ほら、500円のは色づきが濃いでしょう。焙煎時間を長めにしているので、味わいや苦味はこちらのほうが濃く出ますし、ふだん飲むものならおすすめですよ」

このお茶屋さん、いい説明をしてくれる。うっとりしながら500円のほうじ茶を手にして店内へ。さまざまな産地のお茶に、たくさんの茶器や茶筒。香りもよくて、いるだけで気持ちがいい。

せっかくなので、ほうじ茶を収めるために店名の「楽山」が書かれた缶を買うことに。すると、おまけでスプーンを付けてくれて、これはありがたい。ほうじ茶は熱湯で淹れるのがいいそうで、ふつうなら茶葉はスプーン2杯分。700mlのフィルターボトルで水出しするなら4杯分で、と教わった。メモしておく。

街中にはたくさんの店があり、それぞれに専門家がいる。ネットで調べるより聞いちゃったほうが早いこともあるし、出会いもある。店の数だけ何かしらのストーリーが生まれるのだから、どんな街でも探検したら楽しめるはず。

それも『ちひろさん』にあったエピソードだけれど、やってみると、体感としてしっくりくるものだった。

打ち合わせが済んだら、神楽坂にある銭湯「熱海湯」へ行った。お湯がとびきり熱くて、つい笑ってしまった。風呂椅子に座って体を冷ましていたら、番台のおばあちゃんが寄ってきて「お酒飲んでるでしょう?無理して入っちゃだめよ」とご心配をいただく。

#日記 #エッセイ #コラム

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