苔影が濃い登山道、宮司の滝を目指して
八ヶ岳南麓の「宮司の滝」を目指す渓流の登山道。
あまり人が歩いていないマイナーな道ですが、入口ですれ違ったのは釣り人でした。魚影が濃い渓流を求めてきたのでしょう。
私はと言うと、求めているのは魚ではありません。期せずして、この渓流が苔むした岩に覆われているのを見て、気持ちの高まりを感じています。
そう。魚影ならぬ苔影の濃さを求める散歩人なのです。
苔影という言葉は、いま私が作りましたからね。検索しても出てこない令和6年の新語です。なんて読むのかな。苔影(タイエイ)でしょうね。これから流行らせましょう。「おお、苔影が濃いねえ」という風に使ってください。
大門川三滝の1つ、宮司の滝
北杜市の東側を流れる大門川。そこには有名な滝が3つあります。
千ヶ滝と大滝は、それぞれ駐車場からすぐに歩けるところにありアクセスが容易です。私も過去に行ったことがありました。
宮司の滝だけは未訪問でした。車でアクセスできるところから、20分ほど整備された道を歩いたところにあります。遊歩道のような舗装された道ではないものの、登山道ほど高低差もなく、渓流沿いの割には歩きやすくなっています。
車でのアクセスは、千ヶ滝と同じです。駐車場に車を停め、千ヶ滝と反対方向に歩いていきます。
川沿いの道を降りていくと、丸太の橋が登場。ちょっと年季を感じますが、それも風情。多少きしむけど不安にはなりません。
さて、写真を見てください。どんな言葉でこの美しさを表現しましょうか?
「おお。苔影が濃いねえ!」
ですよ。ちゃんとマスターしてくださいね。
苔単体でも美しいですが、豊かな水とのセットで苔の魅力は倍増します。
渓流に苔、鬼に金棒、弁慶に薙刀。
最高の組み合わせです。
先ほどの年季の入った丸太橋から、沢の上流側を撮った写真。
やばいですね。この入り口だけでも、来た甲斐があるというものです。
渓流に生えている苔の種類は、未熟な私にはまだまだ判別が困難です。
タニゴケ? サナダゴケ? 図鑑と見比べると似ているような気もしますが、違うような気もします。
一般的な苔の図鑑は苔を拡大した写真が中心なので、自然の風景の中でどのように見えるかという普段の見え方が分からないんですよね。
私の知る限り、こういう悩みに答えてくれる図鑑は、この2冊です。
苔をフィールドで観察する初級者や中級者に役立つということを目的に、実際に自然の中で見える苔の姿を大きな写真で紹介しています。また、近縁種との見分け方など、まさに私が知りたいことが書かれています。
私が1つだけ残念なのは、つい最近、この図鑑がリニューアルされたことです。旧版を持っている私。本屋で新版を見つけた瞬間は、買い替えをためらってしまいました。でも、いつかきっと我慢できずに買ってしまう気がします。
こちらも、本当に素晴らしいです。
それぞれの苔について、4タイプの写真が掲載されています。
・遠くから見た「群落」
・近づいて見た「個体」
・ルーペで見た「部位」
・実際の苔の大きさが分かる「スケール」
ですので、マクロ的にもミクロ的にも苔の姿を確認しやすくなっています。
まあ、この2冊を持っていても、ちゃんと使いこなせてないことも白状しておきます。ほんと、苔の判別は難しいです。
小学生でも歩きやすい道
私が苔や植物に夢中になっている横で、小学生の次男はサワガニ探しに熱中します。でも、私たちが調べた限り、ここは「蟹影」は濃くなかったですね。川底の石をひっくり返しても、出てくるのはイモムシのようなガガンボの幼虫ばかり。
結局、ここではサワガニを捕まえることができなかったので、別の場所(鳥の小池)まで行って、ようやく1匹つかまえることができました。
土を踏み固めた道が中心で、部分的にぬかるんでいる場所はあったものの快適に歩けます。ちょっと歩きにくそうな場所には、橋やハシゴも設置されていますしね。
この橋を渡りながら左手を見ると、ウワバミソウの群落がありました。
ミズとかミズナとも呼ばれる、有名な山菜ですね。渓流沿いなどの水の豊かなところに生える植物です。
ちなみに、橋がかかっているほどなので、歩いて行くには危険な場所に生えています。写真ではわかりにくいですが、急斜面ですしね。だから、取らないでくださいね。まあ、他の場所にもウワバミソウはいっぱい生えてますけど。
5月末に青森の奥入瀬渓谷を散策したときも、ウワバミソウが多くの場所に茂っていました。道の駅でも安価に売っていたので買って料理しましたが、薄皮を向くのが意外に難しかったです。
階段と鎖場を超えれば、滝に到着
階段が見えてくれば、もうゴール目前ですね。
ずっと平坦な道が続いていましたが、滝の手前だけ登山コースぽくなります。まずは、渓流から少し離れる形で階段を登ります。
階段を登り切った後は、岩場を下ります。
ごく短い距離ですが、ここに唯一の鎖場があります。
鎖場と聞くと、ちょっと躊躇してしまいますよね。私も事前に調べた時に鎖場があることは知っていたので、小学生の息子を連れて行けるかどうか少し心配でした。でも、ネット情報だと簡単な鎖場だと書いていましたし、実際にそれほど難しい場所ではありませんでした。
念のため、大人が先に降りて、子どもが降りるのを見守りました。
滝の写真は難しい
滝はこんな感じ。
滝壺に近づくことはできないので、渓流をまたぐ橋の上から滝を遠目に眺める形になります。
うーん。自覚してます。私の写真はイマイチです。
なんか、沢へ流れ込む沢水のようにも見えますね。スケール感が伝わらない。大きな滝ではないですが、実際は間近で見るともっと迫力があります。
宮司の滝は、三段の滝になっています。
遠目に引いて撮った写真だと、構造が分かりやすいですね。
iPhoneで撮った写真とはいえ、これは機材のせいではありませんね。
画角を工夫してもっと滝に寄るとか、光と影を意識するとか、静と動を使い分けるとか、プロはいろいろな工夫をしているようです。
以下のサイトを見て、写真の奥深さを感じました。
iPhoneのLive Photosの機能を使えば、長時間露光のような雰囲気で流れる水の動きを表現できることは知っていたのですが。
今回は、滝よりもサワガニにしか興味がない次男をだましだまし歩いてきたので、美しい写真を撮る余裕がなかったのでした。
(滝滞在時間、およそ2分)
でも、目的地なんてどこでもいいのです。
滝を見たい人、魚を釣りたい人、苔を観察したい人、渓流沿いをただ歩きたい人、どんな人も大満足できる穴場の自然散策スポットです。
あ、サワガニを捕まえたい人だけは、別の場所のほうがいいかもしれません。